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第三十七話 蛙の眼球の電動作用に対する紫外線の影響について

そこへ寒月君が登場。

真夏だってのに冬帽をかぶり、両足は埃まみれ。

まるで“季節感ゼロのファッションインフルエンサー”みたいな出で立ちだ。

ボスが「博士論文はもう書き終わったのか」と尋ね、金縁メガネは「金田令嬢がお待ちかねだから早々に提出したまえ」と学士様を茶化すが、当の寒月君は「なるべく早く安心させたいのですが、問題が問題で労力が要るのです」とニタリと薄気味悪い笑みを浮かべる。

……納期に追われるサラリーマンの言い訳かよ。

金縁も「そうさ問題が問題だから、鼻の言う通りにはならないね。もっともあの鼻なら鼻息をうかがう価値はあるがね」と寒月流のご挨拶。

割とマジなのはボスだ。

「君の論文の問題は何だったっけ」

「蛙の眼球の電動作用に対する紫外線の影響です」とニタニタ顔。

「そんなに骨の折れる研究かね」

「複雑なんです。蛙の眼球のレンズは単純じゃない。まずガラスの球を作って実験しようと思ってます」

「ガラス屋に行けば訳ないじゃないか」

「理想的な円や直線は現実にはないんです」と幾何学講釈。

金縁は「ないなら止めちまったらいいじゃないか」とツッコミ注入。

寒月は「実験に差し支えない球を作ろうと磨いているんですが、これが難しい。片側を削ると反対側が狂う。いびつを直すと直径が狂う。林檎ほどの大きさが苺になり、大豆になっても完全な円はできない。正月から六個磨り潰しました」と熱心に語り始めた。

ボスは「どこでそんなに磨いてるんだい」と首をひねると寒月は「学校の実験室です。朝から晩まで珠ばかり磨いてます」と涼しい顔。

……ブラック企業の研修生かよ。

「日曜まで学校へ行くのはその珠のためか」

「ええ、目下は珠作り一筋です」

「いつ頃出来上るんだ」

「十年くらいかかりそうです。いや二十年かも」

……ホントにやる気あるのか?それ。

「それじゃ博士になれないじゃないか」と焦るボス。

寒月は涼し気な顔で「一日も早く安心させたいんですが、珠を磨り上げないと実験ができませんから」と繰り返すばかり。

寒月は「金田も僕が珠ばかり磨いてることは承知してます。二、三日前にも事情を話してきました」と、したり顔だ。

だが奥さんが「でも金田さん一家は先月から大磯に行ってますよ」と突っ込むと、寒月は「そりゃ妙ですな」とスットボケ。

……在庫切れの商品を“あります”と宣伝する通販業者かよ。

話がつまらなくなってきたので、ちょいと庭のカマキリ相手に運動してくるか。

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