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第三十三話 ガチバトル!!

ボスの部屋には引窓はない。

だが座敷の欄間から吹き込む風が戦場の合図のように俺を揺さぶる。

彼岸桜の花びらが舞い散り、サッと吹き込む風に目を覚ました瞬間、月の光が水瓶の影を斜めに落とす。

「……時は来た」

戸棚の中からことことと音が響く。小皿を踏み荒らす敵の気配。

俺は穴の横に身をすくめ、息を殺す。

だが奴らは姿を見せない。

皿の音が止むと、今度はどんぶりを揺らす重い響き。

鼻先三寸の距離に敵がいるのに、顔を出さぬとは……!

「舞踏会でも開いているつもりか……小癪な!」

かまどの影で何かがコトリと鳴る。

敵はこの方面にも来たか。

忍び足で近寄ると、尻尾がちらりと見えたが、すぐに流しの下へ消える。

さらに風呂場でタライの音が響く。

振り向いた瞬間、15センチ近い大物が縁の下へ走り込む!

「逃がすかッ!必殺・影追い跳躍ッ!」

飛び下りたが、影も形もない……。

敵は三方面から同時に騒ぎ立てる。戸棚、流し、風呂場。

俺は十五、六回も奔走したが、一度も成功しない。

「卑怯者め……だが俺の敵じゃねえ!」

勇気も、敵愾心も、悲壮なる美感もあった。

だがやがて面倒になり、アホらしくなり、眠気と疲労が押し寄せる。

俺は台所の真ん中に座り込み、ステルスモードで全方位ガン飛ばし。

「……俺が動かずとも、この眼光がある限り、奴らを近づけん!」

だが敵が思ったよりケチな野郎だと分かると、戦いの名誉は消え、ただ憎しみだけが残る。

その憎しみもやがて薄れ、気合いは抜け、ボーっとする。

「勝手にしろ……どうせ大したことはできん……」

眠気が襲う。戦場の只中であっても、休養は必要だ。

「次の決戦に備えて……俺は眠る!」

――月光が差す台所に、猫の戦士は静かに瞼を閉じた。

□~*

花吹雪が引窓から乱れ込む──

「来たかッ!」

その瞬間、俺の耳に弾丸のような影が噛みつく!

続けざまに黒い影が尻尾へぶら下がる!

「二連撃だと……!? 舐めるなァッ!」

俺は全身の力を毛穴に込め、跳躍!

「必殺・毛穴震動波ッ!」

耳に食らいついた奴は力を失い、だらりと垂れ下がる。

尻尾の柔らかい先が口に入った瞬間──

「牙閃・尾喰い斬りィィッ!」

尾だけが前歯に残り、胴体は壁に叩きつけられる!

だが敵は起き上がり、棚の上へ跳び乗る。

「見下ろすんじゃねえ!……俺はまだ終わっちゃいねえ!」

前足を棚にかけ、後足は宙をもがく。

尻尾にはなお黒い影が食らいついている。

「重撃・尻尾地獄車ッ!」

体がぎりぎり回転する。

その時──棚の上の怪物が飛び下りる!

「必殺・額直撃砲ォォ!」

三つの塊が一つとなり、月光を切り裂いて落下!

摺鉢、小桶が、ジャムの空缶を巻き込み、轟音を立てて散乱する!

「泥棒!」

ボスがランプとステッキを構えて飛び出してきた!

俺は、かまどの傍で静かに構え、 敵は戸棚へと姿を消す。

月光は細くなり、戦場は静寂に包まれる──。

「次こそ……決着をつけてやる!」

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