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第二十一話 悪役令嬢

来てみると、女がひとりで大声を張り上げていた。声の感じがハナ子にそっくり。

つまりこれが、金田家の”悪役令嬢”ってやつだろう。

惜しいかな障子越しで姿は見えない。

顔の真ん中に”モビルアーマーの鼻”がそそり立っているかどうかは確認できない。

けど、鼻息の荒さからして、獅鼻キャラである可能性が高い。

女はひたすら喋っているが、相手の声は聞こえない。噂の「電話」ってやつだな。

「お前は大和かい? 明日行くんだからね、ミフウズラを取っておいてよ。分かったかい? なに、分からない? あらいやだ、ミフウズラを取るんだよ!」

……ミフウズラ? 何その謎アイテム。ゲームの隠し素材か?

「取れない? 取れないはずはない、とるんだよ! 御冗談? 何が冗談だよ! 人を茶化すんじゃないよ!」

相手は長吉とかいう男らしい。悪役令嬢は「おかみを電話口へ出せ」とカスハラする。

「私が代わりに対応いたします? お前は失礼だよ! “私を誰だと思ってるの!” 金田だよ!」

……ワールドイズマインか?

「善く存じております? ほんとに馬鹿だねこの人は! “金田”だってばさ!」

……ああ、あんただったか、赤い電動バイクで高速道をブイブイいわせてたのは…

「毎度ご贔屓にありがとうございます? 何がありがたいんだ! 御礼なんか聞きたかないわよ!」

……会話が完全にバグってる。NPCとプレイヤーの噛み合わない会話みたいだ。

完全にヒスを起こした悪役令嬢は受話器を何度も電話機に叩きつけてベルをチンチン鳴らすと、ビビった足元のチンが急にキャンキャン吠え出した。

「こりゃヤバイ!」――俺は慌てて飛び下り、縁の下へ即退避。ステルスモード発動だ。

廊下を近づく足音に続いて障子が開く音に俺はピンと耳をそばだてる。

「御嬢様、旦那様と奥様がお呼びです」――小間使いらしい声。

「知らないよ!」

悪役令嬢は秒でキレ返す 。

「ちょっと用があるから嬢を呼んで来いと……」

「うるさいわね、知らないってば!」とザクバズーカをぶっ放す。

「……水島寒月さんのことで御用があるそうです」

なんとか初弾を回避した小間使いは気を利かせて機嫌を取ろうとするが、悪役令嬢は構わず二発目を発射。

「寒月だろうが水月だろうが知らないわ! 大嫌い! ヘチマが迷子になったような顔して!」

炸裂弾が寒月君を直撃。

哀れ寒月君、留守中にもかかわらず遠距離射撃で大ダメージを受ける。

「おや、お前いつ束髪に結ったの?」と急に悪役令嬢が話題転換。

「今日でございます」

小間使いは、ほっと一息。

「生意気だねえ、小間使いの癖に!」と三発目を発射!まだ弾が残ってた!

「新しい半襟を着てるじゃないか」

「へえ、先だって御嬢様からいただきましたので……」

「いつそんなものをあげたの?」

「この正月、白木屋で求め遊ばしたウグイス茶の番附染めでございます。私には地味すぎるから、お前にあげようと……」

「あらいやだ。よく似合うのね。にくらしいわ」

「恐れ入ります」

「褒めたんじゃない。にくらしいんだよ」

「へえ」

バズーカ留めどなく連射。小間使いは防御不能。

……ガンタンクだったのか。

その時、向こうの座敷から金田君の声。

「富子や、富子や!」

悪役令嬢はやむなく「はい」と返事して電話室を出て行き、チンが顔の中心に眼と口を集めたようなツラで後を追っていった。

俺は忍び足で勝手口から外へ抜け出し、ボスの家へ無事帰還。

探検クエストは十二分の成果だ。

帰ってみると、さっきの豪華な屋敷から急に汚い我が家へ戻ったので、まるで日当たりの良い山頂から、薄暗いダンジョンへ転落したような気分になる。

探検中は夢中で部屋の装飾や襖・障子なんか気にも留めなかったが、改めて見ると我が住居のショボさが身に染みる。

ああ、あの「月並み」な西洋館が恋しいぜ。

教師よりも実業家の方が偉いんじゃないか――そんな気がして、シッポ大明神にお伺いを立てると「その通りその通り」とのお告げだった。

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