冒険者ギルドに貼ってある依頼は単独パーティーでしか受けれないの?
冒険者ギルドでのワンシーン。
「今日はワイルドボア討伐に決めたぜ!」
と言って俺は掲示板から依頼票を剥がし、仲間達が待つテーブルへと戻った。
「ワイルドボアか。農家さんの天敵だもんね」
「皮も肉も脂も牙も使えるからコスパ最強だな。
まぁ、個体差があるからあまり大物だと困るんだけどな」
「子供の頃は可愛いのにね」
パーティーメンバーの三人も、この依頼に反対はなかった。受付嬢に依頼票を渡して処理をしてもらい、俺たちは武器を手にワイルドボアが目撃された現場へと足を運んだ。
片道1時間を掛けて到着した山中で、樹皮が剥がされた大木を目にした。
「これ、鹿のツノで付いた傷じゃないな」
「ああ、ボアの毛が付着してる。かなりの大物だろう」
「これ、やばくないか?」
ワイルドボアが付けた筈のその傷は、俺の首の辺りの高さにあった……そこから想定される体躯に、俺たちは恐怖を覚えた。
「……戻るか?」
と、仲間たちに一応聞いてみる。
「それ、失敗扱いになるでしょ」
「ペナルティ取られるよね」
「報酬ゼロどころか、持ち出しになると生活出来ないし……」
そうだ、もし俺達がここで逃げ帰れば依頼は失敗となり、ペナルティが課せられる。それは避けたい。
だから、
「やるしかない」
「……そうだな。」
この後、このパーティーはワイルドボアに蹂躙されてめでたしめでたし……。
◇
はい、ここでよく考えたら、この冒険者ギルドのシステムっておかしいと思いますよね? まぁ、上記のはわざと極端な例にしていますけど。
猪はともかく、熊なら猟友会から何人か出て駆除します。決して無理はしませんよ。命大事に、ですからね。
冒険者だって、無理して1つのパーティーで挑む必要はないのです。
一番大事なのは、対象を確実に仕留めることですから、無理して少ない戦力で戦うのでなく、最初から勝てる戦力を揃えてぶつかるべきだと思います。しかし、そうならない理由が幾つか透けて見えます。
一つ目の理由は、いわずもがな報酬の分配です。
人数が増えれば増えるだけ一人あたりの分け前が減るのだから、自然と少ない人数での対応が余儀なくされる訳です。
二つ目の理由は、失敗した場合の責任の押し付けあいが考えられます。
複数のパーティーによる混成チームで依頼に失敗した時、「あっちのミスだ」「いやこっちのせいじゃない」と揉めるのは目に見えています。
ギルド側もそんなパーティー間の揉め事になるのを避けたいでしょう。だから、1案件1パーティーを原則にしておけば、責任の所在はハッキリしますからかも知れませんね。
仮に混成チームで行動させるなら、ギルドから一人職員を派遣して管理する必要がありそうです。
三つ目の理由として、実績の査定が難しくなることが考えられます。
大人数で一頭倒したとして、誰が、どのパーティーがどれだけ貢献したのか、判定するのは骨が折れそうです。
◇
それにしても、そもそもこの例では依頼票の情報がまったくなっていませんね。
「ワイルドボア一頭」としか書いてなくて、現場で「首の高さに牙がある」なんて絶望的な事実に気づいても、依頼票をペリッと剥がした後ではもう遅い。
撤退は「失敗」で「ペナルティ」。だったら「やるしかない」という思考停止に追い込まれる仕組みなんです。(実際には期限内であれば再アタックも可能でしょう)
加えて、ギルドは軍隊じゃないのも痛い。
所詮は個人事業主の集まりです。現場で急に組まされても「誰が指揮を執るか」「誰がトドメ(手柄)を刺すか」で揉めそうです。
それなら最初から気心の知れた身内で完結させる方が、ギルドとしても話が早いでしょう。
被害が出ているので「今すぐ誰か行け」と急かされ、複数パーティーの調整なんてしている間にも畑荒らされます。
結局、兵は神速を尊ぶの精神で、少人数で早い者勝ち、自己責任。
理屈は分かりますが、それで依頼が達成されたくて困るのは依頼人です。
そして冒険者が減って困るのは、依頼を出す市民と冒険者ギルドのはずです。
もし途中で危険度判定が上昇した時点で報酬を上げる、調査報告としての撤退を認める、下見だけの依頼を挟むとか、そのくらいの柔軟性が必要です。
確実に討伐できる体制を整えてチームを送り出すのが、本来の冒険者ギルドの仕事だと思うわけです。
まあ、それをやらないのはギルドの予算不足か人材不足か、単に面倒なのか。
あるいは、死線を潜り抜けて生き残った奴だけが、上のランクに行ける」という、たちの悪い選別思想があるのかも知れません。
どのみち、現場で危機を自覚しながらも「やるしかない」と呟く冒険者が出るようなギルドのシステムだから、パーティー追放からのざまぁ系が成立するのです。
さて、皆さんはどう思われますか?
お目汚し失礼しました。ぺこりん。




