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設計図がなくても

 みんな大好きな錬金術。

 ゲームやコミックで大活躍する主人公は、材料さえあれば設計図がなくても何でも作れます。

 はっきり言っていい加減にしろよ!です……は言い過ぎですね。

 

 錬金術は化学であり、錬金術師は化学者です。

 炭素、水素、酸素等の元素に怪しげな薬草やら魔物素材を使って薬品や素材を作り出すのがお仕事です。実在した自称錬金術師も、そのお仕事によって有益な品物を生み出したかと思います。


 しかし、そんな人が何故か地面に手を付けると壁や建物やその他諸々が産み出されるのですよ。ファンタジー万歳! などと、手を上げて喜んでいる場合ではないのです。

 長方形のただの土壁なら図面がなくても作れるでしょう。

 それが複数のパーツを組み合わせた建物や武器、挙げ句に乗り物やゴーレムまで作ってしまう人まで出てくる始末です。

 エンタメ作品なので何でもありですけど、それにしてもやり過ぎではないでしょうか?


 鋼の第1話で、壊したラジオをアルが直すシーンがあります。あの辺りから錬金術の出来る範囲が拡張されていき、拡大解釈に繋がっていったのでしょう。

 材料に欠損が無ければ、割れた板を修復するのは分解と再構築で可能です。

 ですが、外れたネジなどが元の位置に戻っているのは何故でしょうか? 物を動かすと言うのは、明らかに錬金術の範囲を逸脱しています。念動力が働いたとしか思えません。

 でもまぁ、これはこれで楽しいのでヨシとしましょう。ラジオの部品は全て揃っているので、新しく何か作ったわけではないですから。


 錬金術師はポーションのビンやらトイレやら様々な物を作ります。

 ビンなら脳内にイメージした物を反映するのもそれほど難しくはないかも知れません。蓋との嵌め合いが結構重要で、ユルユルでもキツキツでも駄目なことを登場人物は理解していないと思いますけど、その辺りにリアリティを出されても鬱陶しいですし。


 ビンや陶器を錬金術で作るにしても、図面を書かないと全く同じ物を作ることは出来ません。

 何故ならイメージで形は何となく思い浮かべることが出来ても、寸法まで正確に指定することが出来ないからです。

 実は図面を書いて何度も試作を繰り返して頭の中に完全に図面がインプットされている、と言うのなら話は別です。

 ですが、そんなシーンは読み飛ばされるので無意味な設定になるかも知れません。


 錬金術師に限らず、クラフト系スキルの持ち主の多くは図面を書かずに物を作ります。

 作者様にもの作りの経験が無くて安易に考える、と言うのが主な原因と思います。

 犬小屋程度なら画面を書かずに作る職人さんやDIYの達人が居るかも知れませんが、家となると無理ですよね。


 リアルさは極力排除してあり得ない現象を見せるのがラノベやコミックの良さであり、そこに化学者である錬金術師の活躍の場がある訳です。多少の化学的合理性があると納得の度合いが違ってくるでしょう。そもそも納得なんて不要ですし。

 それを錬金術スキルで作るの? 作れるの? なんてことは考えずに受け入れることがラノベ読者のマナーなのかも知れません。

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