「異能犯罪対策特異警察課」の始まり
カーテンから差し込む陽光が眩しくて、目が覚めてしまった。時計は6時を指している。少し早く起き過ぎてしまったからか、外からする雀の鳴き声が少々不快だ。五月蝿いし、どうせ無駄だが追っ払ってしまおうか。そんなことを考えずつマットレスから起き上がる。あぁ不快な朝だ、夢見が悪いのだろう。だがいつものことなのでこれにも慣れた。そういつもの日課だ。そのあとは、朝の支度をして、珈琲を淹れて飲みながら、テレビを点ける。これも日課だ。朝に珈琲を飲むのは格別だと思う。まぁ、ブラックは無理だが。
テレビを点けると、何やら記者会見の説明をしている。なんでも、総理がわざわざ会見を開いたそうだ。だが、何を話すのか全く明かされていないらしい。うまく事の状況が把握できていないのだが、リポーターが説明してくれている。
「こちら、リポーターの石田です。今日の午前4時ごろ総理がとつぜん今日の6時半ごろに緊急記者会見を開くと明言しました。ですが、何について語るのか全く明かされておりません。しかも、記者からの質問は受け付けないとのことです。これは緊急記者会見の意味があるのでしょうか。………待ってください!ここで、総理が語る内容の情報が流れてきました。ここ1年間に起きた『田村一家殺人事件』、『渋谷スクランブル交差点十字架事件』などの未解決事件や、都市伝説とされている『鮫島事件』について何か語る模様です。」
待て、『田村一家殺人事件』に『渋谷スクランブル交差点十字架事件』、ましてや『鮫島事件』だと!それ全て、俺が解決した事件じゃないか。あまりに荒唐無稽すぎて未解決事件や、都市伝説として処理されているのに、まさか公表するのか。公表すれば日本が大混乱に陥りかねないんだぞ!まだリポーターの報告は続く、
「……未解決事件ならまだしも、都市伝説に緊急記者会見をするほどの何かがあるのでしょうか。『渋谷スクランブル交差点十字架事件』は有名ですが、何か進展があったのでしょうか。少し気になってきました。」
まさかだ、まさか本当に公表する訳ないよな。流石に『異能』のことを公表できる訳が無い。しかし、それ以外に語ることなんてあるのか。いや、あるんだろう。多分、犯人が捕まった事を報告するだけだ。それしかない。頼む、そうであってくれ。ここで、記者会見場が少々ざわつく。
「あっ!今総理が出てきました。これから会見が始まりそうです。」
総理が重い顔で話し始める。
「え〜、記者の皆さん、朝早くからありがとうございます。今日、重大な発表をするためにお集まりいただきました。まず、『田村一家殺人事件』と『渋谷スクランブル交差点十字架事件』ですが、すでに犯人確保か被疑者死亡という事で解決しております。そして、『鮫島事件』は存在し、こちらも犯人は確保済みです。」また会場がざわつく。一部の記者が質問を投げかけているが答えない。
「そして、最近ネットで特殊能力を持つ人がいると騒がれていますが、この3つの事件の犯人は全員、特殊能力を持っていました。我々政府はこの特殊能力の存在を隠してきましたが、」やめろ、言うな。言ったらだめだ。
「今回、『異能』と呼ばれる、特殊能力を公表いたします。そして、『異能』を持つ者を『異能者』と呼ぶ事に致します。そして、ここ最近になって異能による犯罪が増えてきています。」会見上のざわめきがピークになる。言いやがった。本当に言いやがった。日本が荒れてしまいかねないのに、なぜ公表したんだ。
「ご安心ください。この異能による犯罪に対抗するため、我々は捜査一課の中に『異能犯罪対策特異警察課』と言う異能犯罪に特化した部署を設立いたしました。この中には、異能を持ち、先ほどの事件を解決した者もおります。どうかご心配なされぬようにお願いいたします。そして、異能者に置きましては、異能を持つことを登録されていなかった場合、拘束対象になります。お気をつけください。」ハハっ!そうくるか。こりゃ俺は忙しくなるな。面白そうになって良かったよ。少し覚めて珈琲を飲んで、パーカーを着て外に出る。俺の相棒もさっきのを見て驚いているのかな。
「さて行きますか異能研究所、はもう変わったのか、じゃぁ行くか、『異能犯罪対策特異警察課』とやらに!」
主人公の名前:能田 識羅
異能:「???」