01_Track08
——と思ったのに。
どうしておれはベッドにいて、目覚ましのアラームが鳴っているんだ。
「あぁぁぁ……ばか! なんでチェリーはこんなときに限って起こしてくれないんだよっ!」
スマホは、まだ充電ステーションの上。いつベッドに入ったのか記憶にない。……いや、ほんとは覚えてる。眠気に負けてまぶたが落ちてくるものだから、(ちょっとだけ)なんて甘えた考えで寝転がった。前日の緊張で眠れなかった睡眠不足と早起きが尾を引いていて……。
言い訳を考えている場合じゃなかった、洗濯だ。ブレス端末の通知にも気づかないくらい健やかに眠っていた。
廊下を走ったヒナがランドリールームをのぞくと、そこには昨日と同じ光景が——おや?
(これ……おれのだ!)
昨日のワイシャツよりも一回り小さい。干されたヒナのシャツと、乾き終えているらしい乾燥機の中の服。それから、洗濯バサミで留められたノートの端切れ。
ヒナが書いたメッセージの下、
『わるかった。ありがとう』
走り書きの雑な字が、感謝を残していた。
(おれのも干してくれたんだ!)
ぐしゃぐしゃの半濡れな服を覚悟していただけに、胸の奥が温かくなった。
身勝手なことをしてしまったが、ありがとうの言葉に、親切のお返しまでくれた。
(こういうの、うれしいな……)
比較的裕福な子が多い桜統で、寮生活をしている子は少ない。麦から聞いたが、現在の2Bはヒナ以外の寮生がいないらしい。
少ない寮生同士、互いに支え合う、施設の仲間のような感じが、ヒナにとって懐かしく温かだった。
(……今日も一日、がんばろう)