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おれたちはサクラ色の青春  作者: 藤香いつき
ハロー・マイ・クラスメイツ
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01_Track12

 爆食を諦めて部屋に帰った。

 

《——おかえり、ヒナ》

 

 カミヤハヤトは危ないやつ。琉夏への文句とセットで、新情報をチェリーに吹き込んでいた。数学の予習をしながら。桜統に宿題というものはない。

 

「カミヤハヤトの話って、校内で喧嘩(けんか)があったってことだよな? 警察は?」

《暴力があったことを証明しようにも、証拠がなかったんだろうね。保護者が望まなかったなら、診断書も被害届も出されていない。警察は知るよしもない》

「それでもさ……教師は? 何人も被害者がいて、『殴られてない』なんて普通は信じないだろ。面倒を避けたとしか思えない。……桜統の信用、急激になくなってきたんだけど」

《ヒナは、どこまで信じているのかな?》

「……え?」

《ヒナにカミヤハヤトのことを話した先輩は、その場に居合わせたわけじゃない。伝聞だと思われるその情報の信憑性(しんぴょうせい)は?》

「…………嘘じゃないと思うけど」

《2Bは、問題が多い?》

「……それは、サクラ先生も言ってたし」

《担任の先生は、本当にそう言った?》

「言ったよ。最初の相談のとき、」

 

——困ったことに、現2Bは問題が多いと言われていてね。

 

「……いや、ちょっと違うかも。周りから言われてる、って言い方だった……かも」

《ヒナから見て、2Bのクラスメイトは問題ばかりかな?》

「………………」

《距離を置くべき?》

「……いや、そんなことない。琉夏……くんは、うざったいし、カミヤハヤトも知らないけど。少なくとも壱正は間違いなくいいやつだし、麦くんも大人しいだけで問題なんてない。ルイくんも。……あとの二人は……まだ分かんない」


 小柄なピンクヘアの子と、ルイに付き従っているみたいなひとつ結びの子は交流がない。どちらも距離を置くほど問題があるかは判断できない。

 

《——真実というものは、自分自身の目で見なければ分からないものだね?》

 

 今日のチェリーは、人間みがある。

 優しく紡がれる言葉は、ヒナの心に()みた。

 

「チェリー、おれ……」

《——ヒナ、洗濯の時間だよ》

「っああ、だからそれだって! そういうとこがダメなんだよ! ちゃんとフィードバックして。気持ち冷める!」

《ヒナが設定したアラームが優先されるよ?》

「そこをうまいことするのが人間だろっ?」

《ボクはAIだよ》

「諦めるな! AIだって人間目指してんだろっ?」

 

 チェリーと話しながらも、洗面所のタオルを取って洗濯カゴに入れ、他に洗濯物がないか確認する。

 部屋を出てから、このままカフェテリアへ行こうと決めた。空腹も限界を迎えている。

 

 寝落ちの失態から学び、早めに洗濯をしてしまおうというアイディア。空き状況の確認を(おこた)ったが、洗濯機は空いていた。

 

(それも、そうか。このフロア、おれとカミヤハヤトしかいないんだから……)

 

——2階は2Bの二人しかいないし。

 

 新情報に含まれる事実に、洗濯機へタオルを放り込む手が止まった。

 

(おれと、カミヤハヤトしかいない?)


 ランドリールームは、各階にある。洗濯機はフロアで共有。自分の階が混雑していたとして、たまに他の階のを使うにしても、

 

——行っちゃだめだからな? 現2Bは元から問題が多いから、距離を置いたほうがいいよ。

 

 おそらく、他の生徒がこのフロアに来ることはない。

 しかし、それならば——走り書きの『ありがとう』をくれた子は、誰だ?

 

(……そんなの、ひとりしか……)

 

 くすんだ金髪が思い浮かぶ。

 顔の印象はあまりない。がっしりした肩と、目つきが悪いことくらいしか。声も記憶にない。

 

——去年クラスメイトを何人も殴って殺しかけたヤツ。


 重なるのは、名も知らない先輩の声と、

 

——真実というものは、自分自身の目で見なければ分からないものだね?

 

 ぐるぐると、頭が混乱の渦に巻き込まれていく。

 カフェテリアで美味しいものを食べても、部屋でベッドに転がっても、どれだけ考えても答えは見つけられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

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