7.会いたい
「春のチャレンジ2025」のテーマは「学校」の
参加作品です。第7話です。友だちになったら、会いたいですよね…。
ブーイングしながらも、そうか。とはるみは思った。
気安く話してはいるけれど、ルルーはそしてルルーの住む世界は遠いのだと。
物事の成り立ちから全て違う。ルルーたちは思念が動力の基本。
不格好な機械化文明とはわけが違う。
けれど、だからこそ、目を輝かせて聞いてくれるなら
自分の住んでいるこの世界をアピールしようとはるみは決めた。
差し当たってはスマホだ。出来ることを並べ立てていく。
通話は勿論、文字を送れることも、写真が撮れることも
音楽を留めておけることも、お金として使えることも。
道案内だってしてくれる。何なら、知らないことを教えてくれたりもする。
必要以上に便利さを強調して伝える。
「便利だな!誰もが等しく使えるなんて。適性やら能力やらも関係ないの?
魔力の量如何にも?」
はるみはうんうんと肯く。
「素晴らしいな。はるみの世界は。」
「私には、杖を振って何でも出来るルルーの世界が羨ましいけどね。」
お互い無い物ねだりなのは分かっていた。隣の芝生は青く見えると言うことも承知している。
でも、と思う。貶め合うよりずっとずっといい。
「あ〜あ、ルルーと繋がれるスマホがあればいいのにな。
そしたら、ビデオ通話するのに。夕暮れの窓ガラスに映ったルルーはさ
美人なのは分かるんだけど、セピア色なんだよね。すごく残念。
こっちの面白いものとかもさ、写メで送れればいいのにな。
私にはテレパシーで伝えることは出来ないから。惜しいっ。」
焦れったさをごまかすようにわざと茶化した口調で言うはるみに
「それは、かなり難しそうだね。残念だけど。」
ルルーが生真面目な返事をした。
ルルーと繋がるスマホがあればいい。そう言ったのは勿論本音だった。
けれど、本当はもっとと思っている。
会えたらいいのにと、せめて、もっと長い時間お喋りが出来たらいいのにと。
ルルーの世界のことはよく知らないけれど、一緒にケーキでも食べたら?
ハンバーガーぱくつきながら、一つのポテトつつき合ったら?
魔法を使うところも見てみたいし。なんだったらパジャマパーティーしてみたい。
出会ってから時間はそんなに経っていない。けど、心引かれずにいられない。
ルルーははるみとルルーが似ているところがあると言っていた。
こんなにぎゅっと好きになったのはそのせいなのか?
それとも、ルルーの魔法に掛かっているとか?
「会ってみたいな。」
ルルーの口からこぼれた言葉にはるみがビックリする。
絶妙すぎて自分が言ったのかと錯覚するようなタイミングだったから。
「こちらの世界を案内してみたいね。はるみはどんな顔するんだろう?」
どんな想像したのか、ルルーがクスクス笑った。
「あ、なんか私が無様なことしてるとこ想像したでしょ!
ひどいんだから、ルルーはっ。」
いたずらっぽい目でバタバタ手を振って否定しながら
ルルーは口元はニヤニヤしていて説得力がない。
「そばにいたらぶってやるのにっ。」
そう言いながらはるみも笑った。