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2.出る学校

「春のチャレンジ2025」のテーマは「学校」の

参加作品です。第2話です。”出る”? 学校の怪談?


 「ない!うそ。ないよ?どこ行った?」

無かった文字が浮き出たように見えた、そう、そう見えただけのはずの紙切れを

はるみは机の上に探した。

確か、そこに置きっぱなしにしたはずだった。

なのに見当たらない。

おかしなもので、気味が悪いと思いつつもあるはずのものが見当たらないと

どうにも気になって見つけたくなる。

かくして、朝っぱらから登校の準備そっちのけで大捜索を始めてしまった。

「おかしいな。机の上に置いたのに。机の下に落ちたとか?」

言いながら机の下を探す。可動式の引き出しもどかしたけれどもない。

「あれ?本に挟んだっけ?」

数冊積んである本を一冊ずつペラベラと確認していく。

机の上にある本を全て探したのに、紙切れは見つからない。

「何かの拍子に、ベッドの下に入っちゃったとか?」

掃除用具のワイパーをベッドの下に差し込んで探ってみる。が、手応えはない。

キャビネットの隙間、クローゼットの隙間、服の下、覗き込んだり持ち上げたりしても

どこにも見当たらない。

「ん~。」

腕組みして小首をかしげた。


 「ん!?」

ふと目をやった時計は恐ろしい時間を示していた。

紙切れ探しにかまけていた自分を呪いながら、はるみは家を飛び出した。

いつも乗るはずの電車は出発した後でやきもきしながら次の便に乗る。

気は焦るものの、車両内ではどうしようもない。

ドアが開くと共に大急ぎで改札を通り過ぎ、学校へと走る。


 「はい。遅刻。」

全力疾走で駆け込んだ教室は既にホームルームが始まっていて

ギリギリ見逃して貰えるんじゃないかと言うはるみの淡い期待を裏切り

はっきり、きっぱり遅刻を宣告された。

勝手な捜し物ごときでは弁解の余地は無く、はるみはうなだれる。

「放課後、先生の手伝いに職員室まで来るように。」

ペナルティーとして課された雑用も粛々と受け入れざるをえなかった。


 放課後、ぶつくさ言いながらも真面目に一人職員室へ向かう。

「お、ちゃんと来たな。関心関心。」

担任の原先生がのほほんと笑う。

「先生、ホームルーム中だったんだから、見逃して欲しかったですよ。

私、朝食抜いて、めっちゃ走ったのに。」

「代田は往生際悪いなぁ。1分でも1秒でも遅刻は遅刻。」

「まぁ、そうなんですけど。」

「はい、観念してさっさとやる。」

むぅっとふくれっ面をしながらも、はるみは手際よく雑用を片付けていった。


 「はい。おつかれさん。助かったわ。もう、帰っていいぞ。」

ようやく解放されて、荷物を取りに教室に戻った。

教室は黄昏色に染まりつつあり、似た光景を見たばかりのはるみは思わず息をのむ。

嫌な予感が背中を這い上ってくる。

嫌だと思いつつも、怖いと思いつつも、勝手に手が机の中をまさぐってしまう。

カサ… 手に不穏な感触。(ある。)はるみは確信した。


 机から小さな紙切れを取りだして、カサコソと小さな音と共に開く。

アルファベットですら無い文字が紙の上でするすると形を変える。

「私はルルー、あなたは?」

その問いの横に”代田はるみ”と名前を記す。

「本名?」

(本名か?え、どう言う意味?偽名かどうかってこと?)

そこまで考えて、はるみは小さく叫び声を上げた。

(訳、ちょっと違う、多分。これ、真名かどうかってことだ。

まずい。名前押さえられた…。)

 そう思い至った瞬間だった。一瞬、稲妻が走ったかのように教室がスパークした。

目が眩む。暮れかかった教室が一層暗さを増した気がした。

怖くなってあわてて教室の電気を点ける。慣れ親しんだ電気の明かりで

闇を遠ざけた気になって少しほっとした。

まだチカチカする目を慣らそうと外に目をやる。

暗くなった外、明るくなった教室。教室の窓硝子には

自分の姿が鏡のようになって映る… はずだった。が。

自身の姿を見るはずの場所にはるみの影はなく、見知らぬ人影が映っていた。

そう言えば、原先生はこの学校は出ると言っていなかったっけ?

はるみは恐怖のあまり声すら出ず、机に寄りかかって立っているのがやっとだった。


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― 新着の感想 ―
うわぁ。 名前を知られて、ガラスに写った姿は自分ではないのに、心は自分。 恐怖が伝わってきます。 このまま、怖い方向へ行くのか、次の展開が気になります。
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