シーン9これから。
『僕は………………か……君の力………実感したかい?』
『精霊さん…………うん……。』
『よし……分かったならいい……なら……今は君の仲間達を信じようよ……彼らもまた……君が大切なんだ。』
動けない私の目の前に立ち、そしてあんなにボロボロなのに私を守ろうとする三人。
私の頭の中ではどうしてそんなに傷ついてまで自分を守ろうとしてくれるのだろう?と考えてしまう。
三人とも私よりずっと怪我をして痛いはずなのに。
それでもどうして私を庇うのだろうか。
「どうして?」
三人は私に目を向ける。
でも不思議な事に涙は出てこない。
痛々しい三人を見てるのが私の中では嫌な気持ちが生まれている。
それが魔物に傷つけられると、どんどん私の中に激しい嫌悪感を感じていた。
すると…私の脳裏に精霊さんとは違う誰かが声をかけてきたんだ。
『おい……お前…………………………』
『えっ!?誰………………………!?』
『ククク……俺様は最上階からお前を見ているドラゴンだ?』
『ドラゴン!?………どうして私に声かけてくれたの?』
『ああんっ!?俺様に質問するんじゃねえ。』
私はこの声の主から感じる恐ろしい程の何かに声を止めてしまう。
『…………………………………………………。』
『お前このままでは、あの仲間達も死んじまうぞ!?どうするんだ?』
『…………………………………!!???』
私の視界にはエルフィーナ、ロイズ…そしてドワフロスの苦しむ姿が目に焼き付く。
『気まぐれだった…………………』
『えっ!?』
私にそう呟いた声。
『俺様はこの塔が飽き飽きしてきていたのだ……そろそろこの塔から離れる……次に俺は『アメリスアード』という大地に向かうのだ………だが俺様はこの世界に現れたお前を観察していたのだ……勇者だというお前に目を向けていると面白そうな存在だと思った……だからこの塔でお前を待つことにしたのだ………ところが、ミノタウロスと戦うお前を見て……ガッカリした所だ……そんなやつを相手に待つほど俺様は暇じゃねえ。』
『えっ!?どういう事!?』
『この地にヒューマン族としてどこぞから召喚され半身を担い……半身を精霊達の中の選ばれし精霊からつくりあげられた『勇者』という存在……それがお前だ……俺様はそんな勇者という存在に期待していた…お前がこの塔の最上階にいる俺様に会いに来て力を見せ…俺様を満足させてくれると思っていた……だが………これでは期待はずれだ…俺様はもう立つ事にする…じゃあな。』
『えっ!?』
その時。
この塔の全てに恐ろしい程の威圧感を感じる。
ゴオオオオオーーーーーーーーーーーッという轟音が響き渡る。
その力に私達の目の前にいたあのミノタウロスが慌てふためく。
その時。
「うおおおおおおおーーーーーーーーーーーっ!?隙ありーーーーーーーーーーっ!?」
ドワフロスが剣を振り上げミノタウロスに斬りかかる。
次の瞬間。
ズサーーーーーーーーーーーーーッと激しい音を立てミノタウロスの半身を斬り裂く!!
そしてダッと飛び出したロイズが銃を構えミノタウロスを狙う。
「はああああーーーーーーーーーーっ!!」
パンパンパーーーーーーーーーーーーンッとロイズの銃が火を吹きミノタウロスの身体をとらえ撃ち砕いていく。
そしてエルフィーナが魔法を唱える。
「数多の精霊よ……私の声に耳を傾け……その力をここに…………ファイアーーーウインド。」
炎を発生させると風を纏わせ放つ魔法……それはゴーーーーーーーーーーーーーーッと勢いを増しミノタウロスの巨体に絡みつくように放たれ焼いていく。
『うがっ!?んがっ!!んごおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?』
ミノタウロスの巨体が爆炎に巻かれていく。
苦しみ悶えるミノタウロス。
やがてそれはミノタウロスの動きを徐々に弱らせていったんだ。
もがき苦しみながらミノタウロスは徐々に動きを止めていく。
『さあ………ミノタウロスを封印できるけど?』
立ち尽くしていた私の脳裏に声をかけてきたのは精霊さんだった。
私は涙で動けずにいた。
『あの三人は君を助けてもくれる…これが仲間という大切な存在……これから君は沢山の人々と出会い関わっていくと思う……君は…勇者の力を確かに持っている…でもまだまだこれからだよ…強くなって……その力を大切な人達の為に…使うんだよ?』
そう言葉をくれた精霊さん。
私は何も出来なかった。
無意識に涙が零れていた。
私には力があると思っていた……私は勇者なのだから……この力で何の問題もなく戦っていけると思っていたんだ。
ミノタウロスに歯が立たなくて…皆が死にそうになって……そして聞こえてきたこの塔で私を待っていたハズの何者か…それはあのドラゴンだったのだろう……ドラゴンは私に呆れこの塔から飛び去ってしまったんだ。
でも…でも…………………………………。
私は……精霊さんがいないと…こんなにも弱かったんだ。
そして涙が溢れ止まらなかったんだ。
するとドワフロスが口を開く。
『無事で良かったな。』
『そうだな………とりあえずボロボロになってしまったけどね。』
ドワフロスに笑ってそう返すロイズ。
そして。
『ふう……ラブラちゃんも皆が無事で本当に良かったわね……で?これからどうする?…思った以上にミノタウロスは強かったわ…これ以上は。』
『あ………あの……………。』
『ん!?どうした?ラブラ?』
『私………………………………。』
三人に私に起こった事…そしてここの主が私に呆れて飛び去って行ってしまった事……全てを話したんだ。
口を開いたのはドワフロスだった。
『なら……そいつを追うとしようか。』
『『えっ!?』』
私たちはその声に疑問の声をあげる。
『ある意味……ラブラの力があればこの塔の主であるドラゴンを魔神具にして力にできれば魔王にも匹敵する力にできるかと思ったが、どうやらまだラブラには早かったのだろう…ならば奴を追いながらラブラにはこれから成長してもらえばいいんじゃないか?』
『おお………ドワフロスにしてはいい考えだね。』
笑みを浮かべるロイズ。
そして笑顔のエルフィーナ。
『いいわね……じゃあ……ラブラちゃん!これから海を渡って塔のドラゴンが飛んで行ったという……この世界の大大陸……『アメリスアード』に向かうわよ?』
私は涙を拭う………そして。
『うんっ!!!!!』
◇
こうして私達は私の修行を兼ねてドラゴンの後を追う事になったんだ。




