シーン89ヒューマンラブラその二。
私は人間だった時の記憶を思い出していた。
そして私は友人との帰り道。
偶然見かけた川で溺れている子猫。
私は思わず飛び込みその子猫を救ったいたんだ。
そして私は突然黒い空間に閉じ込められ、気を失っていたんだ。
宙に浮く私の身体。
その時……誰かの声が聞こえてきたんだ。
◇
◇
◇
私に声をかけてきたのは男の子の声だった。
『君が…………ラブラだね?』
『えっ!!?どうしてその名前を?』
『あはは……僕は精霊って奴さ。』
『精霊!?精霊ってあのファンタジーの世界に存在するって言われているあの精霊さん!?』
『そうそう……なあんだ……君って割と話が分かる子だったみたいだね?』
そういった精霊さん。
私は精霊さんの言葉に驚きを隠せずにいたんだ。
でもこの時頭に浮かんだのは精霊さんの事だった。
普通に生きていれば会う事も有り得ないこの精霊さんという存在。
私も全く分からない訳ではない精霊さん。
しかも私は大のファンタジー好きだった。
だから精霊さんと話す事に少なからず興奮を覚えていたのかもしれない。
『ラブラ?君をこの空間に呼んだのは僕………そしてね……………。』
精霊さんはそういうと空間に手を翳す。
するとその空間は透明に広がりそこには茶色の大地が見えてくる。
『えっ!?そこは!?』
私の問いに精霊さんはこたえる。
『この世界は君のいた地球という世界とは別の世界……元々は美しい緑と透き通った水が豊富な自然豊かで平和な世界だったんだ。』
しかし私の目には茶色く荒廃した大地が永遠と続いているように見えたんだ。
『声も出ないかい?この大地は今や大魔王ゼルドリスの猛威でこんな荒廃した大地へと変えられてしまったんだ。』
『そう………なんだ。』
確かに私が見るからに荒れた大地にしか見えなかった。
『魔王は魔族の王……この世界は君の様なヒューマン族……そして魔王率いる魔族……そして僕達精霊の三種族に分かれる世界なのさ……そして平和だったハズのこの世界は魔族の中から現れた『魔王』によってこんな世界へと変えられてしまったんだ………そんな時……僕達精霊族とヒューマン族の二種族は話し合い手をとり魔族からへの対抗策として異世界からの勇者の『召喚』を行なう事にしたんだ。』
『勇者の召喚!?』
『そう、異世界召喚だよ………』
◇
魔王が猛威を奮っている中………ヒューマン族と精霊族の二種族間で協議し………この世界の時空をも変え失敗すれば全てが無になってしまう恐れのあるこの禁呪とされる異世界からの勇者召喚……世界でも簡単にはできない事になっている
それを行なう事になったのだ。
◇
『そうだったんだ……でもどうしてその勇者が私なの!?』
『ああ……それはね……君が『竜の意思』を持つ存在だからなんだ。』
『竜の意思!?』
『ああ、それはじきに分かる事になるよ……。』
『そうなんだ?でも普通にしか生きてこなかった私が魔王相手になんて戦えるわけがないかと思うんだけど?』
『それはこの僕が君の半身になるから大丈夫さ!?』
『えっ!?貴方が私の半身に?それってどういう事!?』
『この召喚にはかなりの力が必要とされる、でも君もこの世界から消える訳にもいかない……しかも君の身体だけではこっちの世界では戦う事も難しい事……それを補う為にこの精霊という僕がいるって事さ。』
『それって!?』
『君には勇者として素晴らしい力がある………その力を補いサポートするのがこの僕……僕と一緒にこの世界を救ってほしいんだ。』
いつしか涙ながらに震えてそう熱く言った精霊さん。
きっとこの精霊さんもこれまで何かあったのかもしれない。
私はその涙に何か思ってしまったんだ。
『精霊さん……………………………。』
私は精霊さんの深い悲しみを共有し、いつしか心に正義感が湧き上がってきていたんだ。
そして私の目にはいつしか世界中の人々の苦しげな表情そして涙まで映像に映り見えていた。
自分がたった一人の人間の女の子なんだ。
力がない事は分かっている。
でもそれ以上に私は皆の悲しみを止めたい。
そう思っていたんだ。
『そう……ラブラ……君のその優しさと自分自身の身を顧みないその勇気に僕はあの時君が選ばれた勇者だと実感したんだ。』
『えっ??精霊さん?』
私の目の前にはあの時私が川から拾い上げた猫がいた。
『大丈夫……ラブラ……あの猫は救われ元気に暮らしてる。』
『良かった。』
私の言葉に精霊さんは微笑む。
『精霊さん。』
『この世界で僕は必ず君を守る力になる………だから二人でこの世界を救う勇者になろうよ……きっと僕達ならこの世界を必ず救えるハズだから。』
そして私は………ゆっくりと目を開いていく。
私は…………………決して負けないんだから。
◇
◇
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