シーン17刺客オリバー。
「なん………じゃと。」
顔面蒼白の『メギノス』博士と私達を残し…そういい立ち去っていく大富豪『ザイアック』。
そしてそれは博士に絶望を思い出させるものだったんだ。
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「黒……だな………ヤツめ……博士の家族を消したのは……アイツだな。」
「まあ……十中八九……そうだろうな…だが当時はその証拠すら残さなかったのだろう?」
ロイズの言葉にそう返すドワフロス。
『ザイアック』が去った今……私達は建物内で先程の会話をしていた所だった。
そんな中……博士は一人沈黙していたんだ。
『博士…………いや……………師匠。』
私はかける言葉も失っていた。
すると博士は静かに口を開く。
『わしは……かつて魔導具の研究に明け暮れていた……この世界に魔王なる者が現れ魔族は暴走を始めた………我々ヒューマン族…そして精霊族は魔族からの迫害……そして過酷な支配下の中……手を取りあった……そして魔導具から勇者を召喚する術を必死に追い求めたワシは夢に一歩近づいた気がした……そんな中……家族……そして中でも目に入れても痛くない愛する孫娘まで……。』
そういった博士は私をみつめていた。
「ラブラ……お前がワシの元へ現れてからもう……数ヶ月になるか…ワシはお前に孫娘『ライラ』の影を見ていたのかも知れぬ……だがライラは確かにあの時……焼かれて灰になったのだ……ワシは……ワシは二度と。」
博士は立ち上がる。
「博士!?」
「どうしたんですか!?」
「ヤツはここを何らかの力で襲ってくるとワシは予想する……仮にもこの世界の素晴らしい魔導士と謳ってる手前自身が動く事はなかろう……代わりに何かしらの力でここを襲撃してくるであろうな……。」
博士の言葉に私達は顔を見合わせる。
するとロイズが口を開く。
「博士の推測通り………アイツはここを襲って来るでしょうね……ならば迎え撃ちましょうか?」
「ああ……だがあの男の事じゃ……ここに勇者とその仲間がいると分かっている以上……タダならぬ何かを用意してくるに違いない……ワシはそれが気がかりなのだ。」
博士の視線はいつしか私に向けられていた。
「ラブラよ………お前はここへ来て様々な知識と経験も僅かながらだが積んだと思うとる……ここからは自分の足で成長していくのだ。」
「えっ!?博士…………何を!?」
『奴は国王までをも巻き込みこのワシを追い込もうとしておる……何かの際はここから三人と逃げるのだ。』
「博士??」
するとロイズか口を開く。
「博士………ですがそれでは博士が全てを背負うことになり兼ねない…僕は魔導博士としての貴方に憧れてここまで成長してきたんだ……貴方は必ず守る。」
『ロイズ………………………』
するとエルフィーナが続ける。
「そうよ?もう博士にもまだまだこれからの勇者様の成長を見守る義務があります…そう簡単には諦めさせないわ…。」
「そうだな……エルフィーナの言う通りだ……このドワーフ王であるこの俺も博士を必ず守る…………。」
『お前達………………………。』
博士の目には涙が溢れていたんだ。
そして僕は。
『博士……私はここへ来て博士の本当の孫になったようなものだよ?博士と過ごしている時間って、こんなに楽しい時間なんだもん!私は………おじいちゃんが大好きさ。』
私の言葉におじいちゃんは涙が溢れていた。
私達のこの時間は……とても温かかったんだ。
その時。
突然外が赤い光に照らされる。
次の瞬間。
ごーーーーーーーーーーーーっと建物の壁が燃え上がったんだ。
『きたか!?くそっ!?これでは!!!』
博士が叫ぶ。
すると外から異様な邪気を感じる。
「簡単にそんな事させないわ。」
静かに呟くエルフィーナ。
その身体から青白い煌めく魔力が溢れる。
『天の精霊よ来たれ……発する雨をここに示せ……………『スコール』!!!』
突然の豪雨が空から降り注ぐ。
外から、しゅーーーーーーーーーーーっと炎が消える音が聞こえてくる。
「今よ!???」
エルフィーナの声に私達は暗い外へと飛び出していく。
そして振り返ると………そこにいたのは何と……黒い煙のような何か纏った何者か。
「お前は誰だ!?」
そう叫んだのは銃を構えたロイズだった。
するとその者は不敵に笑い始める。
『クックックッ……どんな奴らを消す依頼かと思っていればじじいに男二人と女二人か……こんなのがこの僕への依頼だったとはな………………。』
声は男の声………怪しさを匂わせるその男は被っていた法衣を脱ぎ捨てていく。
そして口を開く。
『ふぅ………………俺の名は『オリバー』……『ザイアック』様の要人であり配下の一人だ………今回の依頼内容は……。』
ジャラリと武器を取り出し構え……ダンっと地を蹴りこちらに向かい襲いかかってくる『オリバー』
。
『お前達全員……皆殺しだ!!!!!
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