シーン15ライラとメギノス
ロイズの言葉でメギノス博士の過去に起こった悲劇を聞かされた私達。
そして写真に写った博士の孫娘はなんと私にそっくりだと皆が叫ぶ。
「僕は博士にずっと憧れを持って生きてきたんだ……世の中は突然の悲劇から落ちていった博士に批難の声も上がるようになっていったんだ…そして博士には誰も見向きもしなくなったんだ……時は無常にも過ぎ去り……僕は成人し、科学者として第一歩を踏み出した…そんなある時……僕は偶然博士ととある酒場で出会う事になった…僕はそんな博士に弟子入りして…そしてここまで知識を得てきたって訳さ。」
「なるほど……」
「でも……こんなにも博士が嬉しそうにしているなんて僕も驚いてるよ……確かに僕は弟子入りしたと思っているけれど…博士は僕と一緒に暮らす事は拒み……情報だけを僕に渡して終わりだしね……それを考えたらラブラに対する何かが博士にはあるのかもしれないね。」
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その時……研究所内の個室では……『メギノス』博士が写真を眺めていた。
「ふぅ………………『ライラ』………おじいちゃんはお前の笑顔が何よりも大切だった……あのラブラという勇者は……お前の生まれ変わりなのかい?……おじいちゃんはどこかそう感じてしまうよ……。」
そういった博士の目には涙が溢れてくる。
「ワシはお前達をあの時……失う事になったのは……やはり自分のせいだと思っておる…ワシは気づかないうちに自分の名声を追う事に夢中になりすぎたのだろうな…だがそのおかげで人に恨まれ…そしてお前達を失う事になったのだろう……ワシは自分を失いかけていた…もうあれ以来全てがどうでも良くなっていたのじゃ…………そこへ現れたあの勇者ラブラ……『ライラ』に重ねてしまう……そしてこの荒れ果てた世界にワシは勇者という彼女に『希望』を感じている……こんなに自分が奮い立つのはあれ以来はじめての事なのじゃ。」
その時。
博士の耳に何かの声が聞こえた気がした。
『おじいちゃん……』
『ライラ!?』
『『ライラ』はずっと…おじいちゃんが大好き……だから……ずっと応援して見ているよ。』
博士の目からとめどない涙が溢れる。
『ライラ………………………。』
なんの気まぐれなのだろう……。
この世に霊体……魂というものがあるのならばそれに似た奇跡。
博士はこの時……その奇跡を感じたのかもしれない。
◇
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次の日。
私は夜明けと共に博士に起こされる。
「おはようラブラ!!朝はもう開けたぞ?」
「ええっ!?博士…ちょっと早すぎない!?」
「ええい!!お前は世界にたった一人の勇者なのだぞ!?ワシは絶対お前が死なないように鍛えてやるぞ!!」
ニコッと満面の笑みを浮かべそう言い放つ博士。
これまでにない博士の笑顔に…私達は少しだけど博士をしれた気がしたんだ。
◇
そして僕は博士の修行を受け数週間が過ぎた頃だった。
突然……博士の元へ訪問者が現れたんだ。
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◇
◇
家の外に止められた豪華そうな馬車。
馬車には数名の庸人も護衛の為に雇われているのだろう…総勢十名ほどでここまで来たようだ。
私達は小屋の中から外の様子を見ていた。
するとより大きな馬車からするすると赤く美しい絨毯が兵士たちにより広げられる。
すると街の誰かの声が聞こえる。
「あれは……まさか……このアメリスアードの大富豪の一人………『ザイアック』様か!!???」
「「おおおっ!?目にするのは初めてだ!」」
気がつくと街中の人々が立ち止まりその姿に視線を送り声をあげていた。
そう……後で知ったのだが…今では世界にも名が通る大富豪……そして魔道具を創り人々の平和に貢献していると名声もある男だったんだ。
だけど……………。
そう、私の記憶にもこびりついたその名前は……博士の家族を奪い去り……その地位を築いた……悪人である『ザイアック』だったんだ。
裕福に成長したのだろう……巨漢の男は従者に手を引かれゆっくりと馬車から降りてくる。
辺りからはその彼への賞賛の声が上がる。
そしてレッドカーペットを歩いてくると私達の家の前で立ち止まる。
『おい………『メギノス』よ!!まーだ生きているようだなあ………ワシがわざわざここまで来てやったのだ……出てくるがいい。』
突然博士の名を呼び挑発に近い声を上げる『ザイアック』。
私達がその言葉に震えていると……博士は奥の部屋から出てきたんだ。
「博士……………………………」
「ロイズ……大丈夫じゃ………………。」
すると扉の向こうから…さらに叫ぶ『ザイアック』
『なんだ!?この地位をワシに奪われ…余程悔しかったのか?そうだろうなあ…貴様はワシに勝てぬと思いあれから腑抜けてしまったのだからなあ……。』
私は博士を見ていた。
すると……ニコッと微笑み……外へと踏み出していったんだ。
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