シーン10出港。
私たちは港町『ドレシーラ』へと到着した。
塔にいたドラゴンはここから海を渡った大陸に向かうと言ってた。
三人は私の力としてあのドラゴンを味方につける事が最大のパワーアップだという。
実際ドラゴンは圧倒的な強さを持っていたと思う……私の脳裏に蘇る言葉。
『勇者だと思っていたお前は……期待はずれだ……』
ドラゴンのあの言葉が私の脳裏にチラチラ連呼され時折ちくりと胸を締め付けてくる。
そんな事を考えているうちに気づくと船に乗り込み出港していたみたいだ。
陸からどんどん離れ大きな海を進む船。
すると私の何かに気づいたのかエルフィーナは声をかけてくる。
「どうしたの?そんな顔しちゃって」
「ううん………なんでもない。」
私は首を横に振りそれに返す。
「そう……君は召喚されて勇者だって言われてさ……沢山分からない事あるでしょうけど……これから私や、あの二人に聞いたり助けてもらうといいわ。」
そう…優しく言ってくれるエルフィーナ。
「うん…………分かった。」
私がそう返事を返し俯いていると。
「あっ!!ほら見てみて!?ラブラちゃん!?」
私はその声に当てられ視線を前に移す。
そこには真っ青な青空……そして広がる海がキラキラと輝いていたんだ。
「おお……これが海……綺麗…………………。」
私は初めて見た海に衝撃を受けていた。
すると声をかけてくるエルフィーナ。
「どう!?ラブラちゃん?海……大きいでしょう?」
「うん……おおおおお……………………………。」
「はっはっは!勇者様も海を見たのもそりゃあ初めてか?」
そんな大声を上げたのはドワフロス。
彼は凄く豪快な人なのだけど見かけによらず優しい人のようだ。
「うん!初めて!!こんなおっきい水溜まりがあるなんて。」
「あはは!海を水溜まりとはいい感性してるなラブラ。」
私にそう話を挟んできたのはロイズだった。
「いいか?ラブラ……海というのは………………」
長い話を思わせる話しぶりのロイズであったけれど私に声をかけてくるエルフィーナ。
「長くなりそうだからご飯でも食べいこっか?」
笑顔で私を誘うエルフィーナと笑みを浮かべるドワフロスに私はロイズを一人残し着いて行ったんだ。
『………………海には……生命が…………etc………………』
この船にはレストランと呼ばれるご飯が食べれる施設も整っていた。
甲板から船の内部に入ると目の前には椅子テーブルが並べられたレストランが用意されているみたいだ。
私を連れテーブルを見つけると椅子にかける私たち。
すると、ご飯を待つ間……エルフィーナが口を開く。
「ラブラちゃん……どう?海って大きいでしょう?」
「うん……本当に大きい……こんなの見たの初めてだからびっくりしたよ?」
「世界はこんなに大きな海もあって、しかも今向かっている大陸は海ほどではないが同じくらい大きな大陸があるんだぜ?」
「ええっ!?そんなに!?」
「ああ………世界は本当に広いんだ…いいか?……俺たちのいた場所は………ここだ。」
いつの間にか紙をテーブルに広げていたドワフロス。
私はそれに目を向けると様々な形が見え名前も書いてある紙だった。
「これは『地図』といい…この世界の大陸と海が描かれている。」
「へえええ…………」
私の相槌にとある場所に指を当てるドワフロス。
「ここが俺達がいたブラズールという国だ………そして…今この船はこうして………移動している。」
指をつつーーーーっと動かしていくドワフロス。
そしてピタリととある場所に指を止める。
目を追わせていく先には私たちが向かう大陸なのだろう国で停止する…。
「ええっ!?私たち今こんなに大きい場所に向かっているの!?」
「ああ……そうだぜ!?ここはアメリスアードという大陸さ……この世界で一番大きな大陸なんだぜ!?」
「ええーーーーーーーーーーーーっ!?すっごーーーーーーーーーーーーーーーーーい!?」
私はその大きさを目に感動に叫んでしまっていた。
するとドワフロスが口を開く。
「ああ………世界はこんなにでかいんだ……そんな中でお前が気にしてる事なんてすげえ小さな事だ……これからお前は少しずつ強くなっていけばいいんだ。」
私はその言葉に驚きを隠せなかったんだ。
「そうよ……ラブラちゃん……私たちだっているの……私たちは貴女と共に目指す先までお供する覚悟よ……だから大丈夫。」
エルフィーナの言葉に胸に温かな嬉しいという感情が生まれていた。
すると。
だだだっとここへ入ってくる足音が聞こえる。
「うわあああーーーーーーーっ!?誰もいなくなったと思ったら僕を一人にしてもう食事をしようとしてるなんて薄情な奴らだ!!」
大声を上げここまできたのは怒っているロイズだった。
すると。
エルフィーナが笑い出す。
「ぷぷっ……あははっ。」
「くくっ………………………」
つられて笑い出すドワフロス。
すると、何故か面白いという感情が湧き上がってくる私。
「あははっ……………あははっははははっ!!!」
いつしか私も笑いが込み上げ笑っていたんだ。
「おい!お前ら笑うなーーーーーーーー!!」
私たちは大声で笑いあった。
それはいつしか…私の悩みごとなんて忘れさせてくれたんだ。
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