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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第九十八話 私の運命の相手ではないのに好きな人

 私と政虎は運命の相手と言うわけではない。私は政虎の事が好きで好きで仕方ないのだけれど、政虎にとって私は仲の良い女友達でしかない。どちらかと言うと、私よりも愛華ちゃんの方が政虎にとって運命の相手と呼んでもいいような感じなのだ。

 でも、私はその事実を受け入れることなんて出来なかった。受け入れた先に待っているのは私だけが不幸になる未来だと思っていたからだ。


 私はありとあらゆる手を尽くして政虎の気を引こうとしたのだけれど、そのどれもが成功したとは言い切れない結果になってしまっていた。

 政虎の好きな料理を作っても私の評価なんて美味しいご飯を作る人止まりだったし、部屋の掃除や一緒に勉強をしたりしても便利な人程度にしか思われていなかったと思う。もしかしたら、政虎の中で桜さんの次くらいに私の事を思ってくれていたのかもしれないけど、私を思う気持ちと桜さんを思う気持ちを比べたら海と水たまりくらいの差があるように感じていたのだ。

 それは最初から分かっていた事なのだけど、どうしてもそれを私は受け入れることは出来なかった。愛華ちゃんや右近君はきっと政虎に好意を向けても振り向いてもらない可哀想な人って思われていたかもしれない。それでも政虎に尽くす健気な人と思われていたのかもしれない。

 でも、それは半分正解で半分間違っている。

 確かに、私は政虎のために色々と尽くしてきてはいたけれど、それは全部今回の旅行に繋げるための布石でしかないのだ。何の違和感もなく自然な流れでみんなをここに連れてくるための下準備でしかなかったんだよね。


 政虎に魔法陣を見せたのは二つの意味があった。

 一つは、魔法陣を使って政虎を呼び寄せたという事である。

 魔法陣の力で政虎に私のもう一つの部屋を見せることが出来たんだけど、その光景が政虎の心に深く刻まれるはずだ。

 もう一つは、政虎の中に私をより深く印象付けるために見せたのだ。

 魔法陣を見た政虎が私の事を良い意味で印象を持ってくれることは無いと思うのだけれど、大事なのは私の事を考える時間を作ってもらえるかという事なのだ。

 それまでは政虎の中で思い浮かべる人は桜さん一色だったと思うのだけれど、そこにほんの少しでも私の事を考える時間を作ってもらう事が重要なのだ。

 私の事を考える時間が増えることでより今回の計画が少しでも成功に近付く事に繋がるのだ。

 魔法陣だけではなく、政虎のぬいぐるみを見せるという事も印象付けるのには最適のアイテムと言えよう。政虎の髪の毛を使っているぬいぐるみはそれだけでも効果があると思うのだ。愛華ちゃんや右近君がそのぬいぐるみの事を知っていてくれるという事も私にとっては都合がいいのだ。二人の中に私がそういうことをする人だという印象を持ってもらえればそれでいい。愛華ちゃんは私の事が好きみたいだから問題は無いんだけど、一応保険として理解してもらうことにした。

 私も右近君も政虎の事を好きなのに結ばれることが無い者同士なので絆みたいなものはあるんだけど、私の方が結ばれる可能性は高いと思う。男女の違い問うのはもちろんあるんだけど、それとは別に私には頼りになる味方がいるという事なんだ。右近君もそれは薄々感づいてはいるようだけど、魔法陣とぬいぐるみを見た事で理解してくれたとは思う。右近君の事は応援したいという気持ちもあるんだけど、同じ人を好きになっている以上はどちらかが諦めないといけないんだよね。二人とも諦めるって選択肢もあるんだろうけど、私はそこまで物分かりがいい方ではないんだ。


 ちょっとした失敗もあったけど、結果的には概ね満足出来るものになったと思う。

 愛華ちゃんと桜さんが政虎に好意を抱き始めているというのは小さな問題だった。千雪ちゃんが政虎と仲良くしている姿を見せれば問題ないと思っていたんだけど、政虎が千雪ちゃんと楽しそうに過ごしている姿を見た事で私の想定と違う感情が生まれたのは誤算だった。でも、やはりそんな事はもうどうでもいいような些細な問題でしかない。

 愛華ちゃんが政虎と一緒に神社の掃除に行ったのも意外だったけど、政虎が神社に行くことが重要だったのでソレも問題にはならない。むしろ、二人一緒に行動してくれたことで政虎の警戒心が薄れていたというのは怪我の功名と言っていいものだったように思えた。


 桜さんを政虎の側から離すために私が一緒に買い物に行ったのも功を奏した。右近君と桜さんだけで行ってもらっても良かったとは思うんだけど、私が政虎と一緒に神社に行っていたら無意識のうちに警戒されて結果が変わっていたのかもしれない。

 千雪ちゃんは一生懸命に動いていた二人の様子を見る限りでは私がいても変わらないんじゃないかと言ってはくれたけど、ほんの少しでも警戒されない方が良いに決まっている。警戒している相手よりも何も警戒していない相手の方が付け入る隙があるというものだ。勉強は出来てもまだまだ子供な千雪ちゃんにはそういう細かいところに気付くことが出来ないんだろうな。でも、それは千雪ちゃんが悪いという事ではなく、単純に経験が足りていないという話なんだ。


 色々と長い時間をかけて準備はしてきたにもかかわらず、私たちの関係が大きく変わることは無いけれど、私はそれでいいと思っている。

 今のままでは私と政虎は結ばれることのない運命ではあるが、運命なんて自分の力で変えることが出来るはずなんだ。努力をすれば報われる未来だってあるはずなんだ。

 でも、どんなに努力をしても報われないことも知っている。

 そんな時は、私以外の力に頼ってもいいと思うんだよね。

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