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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第九十三話 小さな変化と不思議な行動

 起きてからしばらく経っているはずなのだけれど、私は背中の痛みと体がカチカチに硬くなっている感覚がいつまでも続いてしまうように思えていた。こうして晩御飯を食べている時も背中の痛みは思い出したかのようにやってくるのだが、あいつも私みたいに体が痛かったりするのかな。ちょっと心配になっちゃうかも。

「神社の境内で二人で寝てるなんておかしいよな。神社の裏にあった祠がどれくらい荒れていたのかわからないんで何とも言えないけど、旅館に戻ってこれなくなるくらいへとへとになるまで一生懸命にやるなんて政虎っぽくないんだよな。愛華はそんな政虎に対抗心を燃やして頑張りすぎちゃったんだと思うけどさ、なんでそこまで政虎が必死になって片付けをやってたんだよ?」

「なんでって言われてもな。神社の方だけ片付けてあっちを放っておくことなんて出来ないだろ。右近と俺が逆の立場だったとしても同じことをしてたんじゃないか?」

「どうだろうな。俺はそんな事したりしないと思うよ」

 私と政虎は何とか自力で旅館まで戻っては来れたのだけれど、私達二人を励ましてくれたり支えてくれたのは嬉しかった。私と政虎がみんなに囲まれて応援されているのは、まるっで結婚式みたいだなって思ってしまった。

 いや、なんでそんな事を思ってしまうんだ。そもそも、なんで私が政虎と結婚するとか思っているんだ。頭でもおかしくなってしまったのだろうか。

「でもさ、俺もよくわからないんだよな。いくら疲れてたとはいえあそこで寝ちゃうなんてありえないよな。でも、なんで千雪ちゃんはレジャーシートなんて持ってきてたの?」

「千雪はお片付けが終わったらみんなで海に行きたいなって思ってたんだよ。海には入らなくてもお兄さんたちと一緒に海を見たいなって思ってたんだ。でも、今日はもう無理だよね?」

「そうだな、今日はいつもより疲れちゃってるみたいだし、また明日にしようか。しばらく天気も悪くならないようだし、千雪ちゃんが行きたいって言うんだったらいつでも付き合うよ」

 政虎は優しいな。以前の政虎なら、どんな時でも桜の事を優先して行動していたと思うのに今は千雪ちゃんの事を優先してあげているんだもんな。桜が政虎に対して全く興味を持っていないという事をちゃんと理解してくれるきっかけになると良いんだけどな。そうすればもっと私の事を見てくれるようになるんじゃないかって思うんだよね。

 さっきから私はいったい何を考えているんだ。そんな風に見られても気持ち悪いだけだろ。私が好きなのは唯ちゃんだけだからな。政虎に好きだと言われたとしても私は何とも思ったりなんてしないんだ。変に意識したりなんてしないんだ。絶対に意識したりするわけがないんだ。

 なんで急にそんな事を考えるようになったのかわからないが、ずっと唯ちゃんから聞かされていた政虎の良さがこの旅行で少しずつ分かってしまったという事なんだろうか。それがわかったとしても私が政虎を意識することなんてないはずなのに、気が付いた時には政虎の事を目で追っているのだ。

「ごめん、今日はちょっと疲れちゃったんで私は部屋に戻って休むことにするよ。どこかに行く予定があるんだったら私の事は気にしないで遊びに行ってくれていいからな。じゃあ、おやすみ」

 私はみんなと軽く挨拶を済ませて自分の部屋へ向かうことにした。このままずっと政虎を見ていたら本当に頭がおかしくなってしまうんじゃないかと思ってしまったのだ。みんなに挨拶をしていたはずなのに、私はみんなの事ではなく政虎の事を見ていた。それに気付いた瞬間、私は本当におかしくなってしまったと自覚してしまっていた。


 政虎は良いやつではないが悪いやつでもない。見方によっては悪いやつに思えてしまうかもしれないのだが、こうして付き合ってみると案外悪いやつではないように思えてくる。大学にいる時は何を差し置いても桜の事が最優先で行動していたのだが、ここに遊びに来ることが決まった時からは桜が最優先ではなくなっている。最優先になっているのは、おそらく同じ年頃の子たちとは圧倒的に青春を送っていないと思われる千雪を最優先するようになっている。それ自体は悪いことでもないし喜ばしい事なのかもしれない。だが、私は千雪が相手だとしても政虎とべったり親密に行動をして欲しいとは思っていない。

 さっきから本当に頭がおかしくなっているという事は自覚しているのだけれど、それを自覚していたとしてもなぜか政虎の事を考えてしまっているのだ。

「もう寝ちゃってる?」

 なるべく物音を立てないようにゆっくりと桜が部屋に戻ってきたのだが、私は軽く返事をすると恐る恐るといった感じで私の事をゆっくりとした動きで覗き込んできた。

「あんまりご飯食べてないみたいだったから心配してたんだけど、よかったら夜食のおにぎりをいくつかもらってこようか?」

 私はそのおにぎりという言葉を聞いて口の中いっぱいに涎が溜まっているのを感じていたのだが、こればっかりは自分の意思で止めることは出来ない。

「大丈夫だよ。気遣いありがとね。桜が食べたいだけだったとしたら、私の分も一緒に確保して後で食べてくれても良いからね」

「本当にそれでいいのかな。愛ちゃんもお腹空いちゃうんじゃない?」

「そんなにお腹は空いてないよ。というか、ここにきていつも以上に食べてたからあれくらいの量が適量だと思う。でも、ここのご飯は美味しいからたくさん食べたくなる気持ちもわかるんだよな」

「そうなんだ。で、ちょっと気になってたから聞くんだけど、廃神社の祠のところで何買ったりした?」

「何かってなんだよ。どういう事なんだ?」

「私の勘違いかもしれないし、そうだったらいいと思うってだけの話なんだけど。愛ちゃんと政虎君ってあの祠のところでエッチな事とかしてないよね?」

「え、そんな事するわけないでしょ。恋人でもない男とそんな事をするわけないよ」

「そうだよね。近くに千雪ちゃんもいたわけだし、そんな事をするわけないってわかってるんだ。でもね」

 私は桜が次に何を言い出すのか全く予想もつかなかった。予想をしたところでそれが当たるとは思えない。いったい何を言い出すのかわからなくて、私は横になったまま身構えていたのだ。

「ここに戻って来てからずっと気になってたんだけど、愛ちゃんってなんで政虎君の事ばっかり見てるのかな。愛ちゃんがずっと同じ方ばかり見てるなとは思ってたんだけど、どうしていつも愛ちゃんの視線の先には政虎君がいるのかな?」

 私を見つめている桜さんに何も言い返すことは出来なかった。自分でもなぜか政虎を見ているという事は気付いていたんだし、自分で気付いてしまうって事は誰かにも気付かれているという事なんだろう。

「もしかしてなんだけど、愛ちゃんって政虎君の事が好きだったりするのかな?」

「違う。そんなわけないだろ。私が好きなのはあいつじゃなくて唯ちゃんなんだ。あんな奴の事なんて好きになるわけないだろ」

 私は思わず唯ちゃんが好きだという事を口走ってしまった。こんなことを言うつもりではなかったのに、あいつの事を好きだという誤解を解くにはこうするしかないと思ったのだ。でも、本当にこんなことを言って良かったのだろうか。私にはわからない。

「やっぱりね。そうじゃないかなって思ってたんだ。愛ちゃんが好きなのは唯ちゃんなんだろうなってずっと思ってたからね。安心してね。私は唯ちゃんの事を応援してるから。愛ちゃんにお似合いなのは右近じゃなくて唯ちゃんだって……私は思ってるからね」

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