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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第八十九話 何度目かの神社

 端に寄せておいた雑草は誰かが処分してくれたらしく無くなっていた。昨日の今日でこんなに綺麗になるものなのかと感心していたのだ。

「ねえ、昨日あれだけ集めた草が全部無くなってるんだけど、こんなに早くなくなるもんなのかな?」

 髑髏沼愛華はちょっと不思議そうにそう呟いていたのだが、それが俺に対しての問い掛けなのか千雪ちゃんに対しての問い掛けなのかわからないので俺は黙っていた。勝手に話しかけて怒られたりするのも嫌だし、千雪ちゃんの発言を遮るのも嫌だと思ったからだ。

「えっと、多分持って行ってくれたんだと思うよ。昨日みたいに端に寄せとけば持って行ってくれるってお姉ちゃんも言ってたからね。これだけ綺麗になって喜んでるんじゃないかな」

「喜んでくれているんだとしたらいいんだけど、ここまで取りに来るのも大変そうだよね」

「そんな事ないんじゃないかな。人力だと大変かもしれないけどそんな事も無いと思うよ」

 髑髏沼愛華は俺の事を全く気にしていない感じなので俺が答えなくて良かったと心から思っていた。俺と二人だけだったら多少は気にもかけてくれるのだけれど、こうして今みたいに他に誰かがいると俺の事は全く気にも留めなくなることが多い髑髏沼愛華ではある。ただ、例外もいくつかあって、俺以外の第三者が知り合いではない場合やナンパをしてきた人だった場合は俺以上に無視をされるという事になっているのだ。

 人力ではないとはいえ、結構な量の草があったと思うのだけれど、それを一晩のうちに回収するというのはかなりの大仕事だったんじゃないだろうか。あの石段だと機械は使えないだろうし、神社から物を投げたり落としたりなんてことをすると罰当たりな気もするので一つ一つ順番に運んでいったんだろうな。旅館以外にほとんど人がいないような気もしているんだけれど、一体どこにそんな人がいたんだろうなという疑問は浮かんでいた。それは髑髏沼愛華も同じことを考えていたようだ。

「人力じゃないって言うけどさ、ここに車とか入ってこれないよね?」

「車は無理でしょうね。でも、ドローンとか使って持って行くことはできると思いますよ。私が見たわけじゃないですけど、一晩で無くなってるって事はそう言うことなんじゃないですかね」

 何となく釈然としないのだが、千雪ちゃんがそう言うんならそうなんだろうなという思いもあったのは事実だ。たぶん、俺は千雪ちゃんの言うことなら余程変な事でない限り信じてしまうと思う。

「まあ、この地域でドローンなんて使える人はいないと思いますけどね。スマホも喋れるカメラくらいの認識でしかないみたいですし。ところで、お兄さんはさっきから一人で何を探してるんですか?」

「何って事も無いんだけどさ、廃神社って事はここに居た神様が別の場所に行ったって事なのかなって思ってね。どんな神様がいたのかなって思って」

「ここに居た神様は太平洋戦争が始まる前に別の場所に移されたそうですよ。それ以来ここは廃神社になってるって話ですからね。でも、昨日の千雪たちみたいに定期的に掃除とかはしに来てるんですよ。建物だって風雨にさらされている割にはしっかりしてますし、誰かが補修と化してるのかもしれないですね。前に来た時よりも建物が綺麗になってるってお姉ちゃんも言ってましたから」

「神様がもういないと言っても神社がそのまま朽ちていくのは良くないもんね。でも、そんなに昔から神様がいない神社だったんだ。ちょっと信じられないな」

「ですよね。千雪もここって本当に神様がいない廃神社なのかなって思ってるんですよ。たぶん、お兄さんも千雪と同じこと考えてますよね?」

 確かに、俺もこの神社は神様がいない廃神社ではないのではないかと思っている。何故か段数が違うと思ってしまう階段や時々感じる突き刺さるような視線と正体不明の悪寒。声を聞いたり姿を見たりと言うことは無いのだけれど、何かがいるような感じはずっとしているのだ。

「俺も何かいるんじゃない中って思ってはいるよ。でも、それが神様なのか神様じゃないのかってのはわからないな。ここに来る時も思ってたんだけど、鳥居と石段がここに来るたびに変わってるような気がしてるんだ。二人は信じてくれないと思うけど、最初に来た時に見た鳥居は赤じゃなかったんだよ。それに、石段も頂上が見えない位続いていて思いっきり体をそって見上げても何も見えなかったくらいなんだよ」

「さすがにそれは気のせいじゃないかな。鳥居の色が違って見えたのは夜と昼の違いなのかもしれないって思うけど、石段の数が違うってのは数え間違いの可能性が高いと思うけど、お兄さんの言っている感じだとそう言う次元の話じゃないみたいだよね。でも、この辺ってそんなに高い山も無いし、見上げて頂上が見えない場所なんて無いと思うんだけどな」

「そうだよ。お前はきっと疲れてたんだよ。一日中動き回っていて最後に坂道を上って蛍を見に行って石段を上った時に限界が来てたんじゃないかな。確かに一日中動き回って疲れるのは仕方ないと思うけど、そんな幻想を私たちに話されてもどんな反応をすればいいのか正解がわからないよ。今日だって本当は寝ていた買ったんだと思うよ。でも、無理やり連れてくる感じになっちゃってごめんな」

 二人はいつか見た憐憫の眼差しを俺に向けてくるのだけれど、俺は嘘なんてついていないんだ。ただそう感じてしまっただけなんだ。初日は確かに疲れきっていたし晩御飯も食べなくていいとさえ思っていたのも事実である。でも、それであの段数の石段を思い浮かべたりなんてしないとも思うんだけどな。

「そんなに疲れてたんだったらお兄ちゃんも帰ってよかったのに」

「それだと千雪ちゃんが一人になっちゃうだろ。一人だと何か危険な目に遭うかもしれないからね。ほら、あの獣道から何かが襲ってくるかもしれないからね」

 俺は神社の裏手にあった獣道を指さして二人に注意を促した。山の動物は夜行性のモノもいるだろうし、そんなのと千雪ちゃんが遭遇したら無事では済まないような気がするのだ。

「え、獣道?」

「こんなのあったっけ?」

 二人の言葉に俺の頭にも疑問が浮かんでいた。確かに俺はこの獣道を知っていて指をさして二人に知らせている。だが、昨日掃除をしていた時にこの辺りは何度もみんなで通っているはずなのだ。こんなに目立っている道を見落とすことなんてあるのだろうか。

 俺達三人は得体のしれないものが近くにいるのかもしれないと思い身構えていたいたのだが、その行動にどれくらいの意味があるのか理解はしていなかった。理解など出来るはずも無かったのである。

 俺達三人は獣道の前で立ちすくんでしまっていたのだった。

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