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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第六十九話 一つの椅子に二人で横になると

 大きいと思っていた椅子もさすがに二人で座ると狭いもので、どんな体勢で座ろうと思っても肌と肌は触れてしまうのであった。この椅子に二人で座っていると仲の良いカップルに見えてしまうのかもしれないなと思っていたのだけれど、そもそも俺と千雪ちゃんでは年齢も違い過ぎるし恋人同士には見えないだろう。親子と言えるほど年齢も近くないのでパッと見で俺と千雪ちゃんの関係性はわからないと思うのだが、一番しっくりくるのは年の離れた中の良い兄妹といったところだろうな。

 ただ、俺達が海に来てからも移動中もこの地域の人に誰とも会わなかったのでそんな風に見てくる人もいないという話だ。旅館の人も施設の使い方を教えてもらってから会っていないような気がするのだけれど、この町はそんな風にあまり人と関わらない文化でもあるのだろうか。もしも、それが本当にこの町の文化だったとしたら寂れていっているというのは仕方のない話なのかもしれない。世の中は俺みたいになるべく人に関わってほしくないと思う人ばかりではないだろうし、大半の人は地元の人に名物や名所名跡なんかを教えてもらいたいなんて思うんじゃないかな。

「やっぱりこの椅子じゃ二人はちょっと狭いかもしれないですね。座り方が悪いだけなのかもしれないですし、ちょっとお兄さんが先に座って足を広げてもらっても良いですか?」

 俺は千雪ちゃんに言われた通りに足を開いて座ったのだが、何を思ったのか千雪ちゃんは俺が開いている足の間に出来たスペースに腰を下ろすとそのまま俺に体を預けるようにもたれかかってきた。

「思っていたよりも座り心地が良くないですね。もう少し柔らかいのかとも思ってたんですけど、お姉ちゃんみたいに包み込むような感じとは程遠いですね」

「そりゃそうでしょ。俺と唯が同じなわけないし。って、なんでそんなところに座ってるのさ」

「なんでって、一杯歩いて疲れたから一休みしてるだけですよ。お兄さんだって座ってるじゃないですか」

「それはさ、千雪ちゃんがここに座れって言ってきたからでしょ。俺も少し疲れてはいるけどさ、海に入らなくても良いの?」

「もうちょっとだけゆっくりさせてくださいよ。あんまりせっかちだとますますモテなくなっちゃいますよ」

「ますますってのは余計じゃないかな。モテてないのは自覚してるけどさ」

「右近君みたいな人と一緒にいたら誰でもモテないとは思いますからね。お兄さんの事を好きになるのなんて本当にお姉ちゃんくらいしかいないと思うんですよ。なので、お兄さんはもっとお姉ちゃんの事を大切にしてくれたらいいと思うんですけどね」

 そんなことを言いながら千雪ちゃんは着ていた服を脱いで水着姿になると、その服を俺に投げつけてから海に向かって走って行ってしまった。

 噂には聞いていた黄色い水着を着たまま何の準備運動もせずに海に入ろうとしていたようなのだが、足に触れた海水が思っていたよりも冷たかったらしくそのまま波から逃げるように三歩ほど後ろに下がっていた。

 俺は千雪ちゃんに投げつけられた服を畳んで椅子の上に置いたのだが、その横に俺が着ていたシャツも並べて置いておいた。風もそんなに吹いていないし誰かが来る様子も無いのでそのままにしておいても平気かと思ったのだけれど、何か動物でもやってきて持っていったら大変だと考えて鞄の中にそっとしまうことにした。

「お兄さん、海って思ってたよりも冷たいですよ。こんなに冷たいなんて聞いてないですけど」

「今日はそこまで気温も高くないからね。それに、海が温かく感じるんだったらその辺の砂は灼熱になってるんじゃないかな。最初はゆっくり入って慣れさせる感じでいいと思うよ」

「そういうもんなんですね。またひとつ新しい発見がありました。って、お兄さんが履いてるのって水着だったんですか?」

「そうだよ。どう見てもハーフパンツにしか見えないでしょ。これだったら街中で着てても気付かれないんじゃないかなって思うんだよね」

「さすがにそれは気付くんじゃないですかね。そう言えば、ここって更衣室とか無いんですかね。物置小屋だって電気が無かったから中で着替えなんて出来ないと思いますし、どこで着替えたらいいんでしょうね?」

「さあ、それはわからないね」

 もう少し暖かくなれば海の家でも出来て更衣室やシャワーなんかも用意されるのかもしれない。ただ、この町の感じだとそう言った人達を受け入れようという気持ちが無いように思えるので難しい話になるかもしれないな。

「あとで旅館の人に聞いてみるからさ。更衣室とかないんだったらさすがに大変だと思うし、着替え用のテントとかないか探してもらわないとね」

「愛華ちゃんは大丈夫かもしれないですけど、お姉ちゃんはさすがに着替えないと色々と大変かもしれないですもんね」

「愛華ちゃんは大丈夫って、ちょっとその言い方は良くないような気がするな。千雪ちゃんと同じような感じでも大人と子供で違うんだからさ」

「大人と子供ですか。でも、千雪みたいに成長途中の女子ってお兄さん的にはどう思いますか?」

「どう思って言われてもね。健やかに成長して欲しいなくらいにしか思わないけどね」

「それって本心なんですかね。お兄さんは自分でも気づいてなかったかもしれないですけど、さっき千雪が一緒に座ってお兄さんに寄りかかった時って、心臓の音が凄く聞こえてきてましたよ。背中越しにでもわかるくらいに早く強く。鼓動してるのわかりましたからね。もしかして、お兄さんって千雪みたいな子供に反応しちゃってるんですか?」

「何の反応もしてなかったと思うんだけどな。ずっと動きっぱなしだったから心臓も落ち着いていなかっただけなのかもしれない」

「そうは言いますけど、お兄さんってもしかして、千雪みたいな子供相手に興奮しちゃう人なんですか。ちょっと距離間考えないといけないかもですね」

 そう言いながら平らな胸部を両手で隠す千雪ちゃんが俺の事をからかうような顔で見てきていた。

 俺は視線を首から下に向けて誤解されないようにしていたのだが、急に千雪ちゃんが距離をあけてしまったので水着の全体像がハッキリと認識出来てしまった。

 だからと言って別に興奮しているという事も無いのだけれど、千雪ちゃんの視線がやたらと上下している事が気になってしまったのだった。

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