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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第六十六話 初めての海水浴だってさ

 海水浴場に着いたのは当初の予定よりも二時間ほど遅れたのだった。遅れたというよりもあえてゆっくりと向かったという方が正しいのかもしれない。運転できるのが鬼仏院右近しかいないという事もあって無理をさせないように休憩も多めにとっていたので仕方がないのだ。鵜崎唯も免許は持っているのだけれど誰かを乗せて運転する事が怖いと言っていたし、千雪ちゃんも鵜崎唯には絶対に運転させてほしくないと鬼仏院右近にお願いしていたのでそう言うことになってしまったのだ。

 千雪ちゃんの話では、鵜崎唯は何人か乗っている状態だと外の様子よりも車内がどうなってるか気になってしまい運転に集中出来なくなってしまうことがあるという事なのだ。俺は運転免許を持っていないので運転している時に何がそんなに気になるのかわからないけれど、意外と気を使っている唯ならではの心配事があるのかもしれないなと思っていた。

「じゃあ、荷物をいったん置いてこようか。さすがにこの時間から海に入るのは危なそうだし海水浴は明日からにしようか。どうしても海に今日はいりたいって人がいるんだったら止めはしないけどさ、太陽が沈む前には切り上げてね」

 鬼仏院右近は運転して疲れていると思うのにそんな素振りは一切見せずにいた。車に乗っていただけの俺はわりと突かれているのだけれど、右近が全く疲れているそぶりを見せないのでそんな事はとても口に出すことが出来なかった。

 女性陣も長時間の移動で疲れているようで海に入りたいという人は千雪ちゃんを除いて誰もいなかったのだ。

「あれ、千雪以外は海に入らないんですか。千雪は初めての海水浴なんで楽しみにしてたんですけどみんなが入らないんなら明日まで我慢しようかな」

「そんなに楽しみにしてたなんて意外だな。千雪は大人ぶっているからそんな事ではしゃいだりなんてしないと思ってたんだけどやっぱり子供なんだな。そんなところが可愛いんだけどな」

「海に入った事ないんだから仕方ないじゃない。でも、そんなこと言ってる愛華ちゃんだって海に入るの楽しみにしてたと思うんだけどな。あんなに楽しみにしてたのに移動で疲れちゃうなんて、やっぱり若さが足りてないって事なのかな。千雪はまだまだ若いから今すぐにでも遊びに行けるんだけどな」

「私だって若い方ではあると思うけど千雪に比べたらそう思っても仕方ないかもな。でも、千雪の場合は若いというよりも幼いと言った方が表現的には合っていると思うぞ。若い女の子は海水浴くらいでそんなにテンションを上げたりしないからな、ほら、唯も桜も千雪みたいにテンション上げて騒いでないだろ」

「いや、その二人は海水浴以前に車酔いしてるだけでしょ。お姉ちゃんも桜さんもずっと地図見てたから車酔いしちゃったんだと思うよ。愛華ちゃんは楽しそうに外の景色を見てたからわからないかもしれないけど、お姉ちゃんも桜さんも大変だったんじゃないかな」

 右近が本当に元気なのかから元気なのかはわからないが、唯と唯菜ちゃんが車酔いをしていたのは事実だと思う。道を知っている唯が助手席でずっと案内をしていてその後ろに座っていた唯菜ちゃんはそのサポートをしていた。唯菜ちゃんの隣に座っていた髑髏沼愛華は千雪ちゃんの言っていた通りで、ずっと外の景色を見ては一人で感動してずっと何かを探しているようだった。時々野生動物を見付けては一番後ろの席に座っている千雪ちゃんに報告していたのだけれど、千雪ちゃんはそんな髑髏沼愛華を軽くあしらっていたのだ。その様子を俺は黙って見てたのだけれど、車に乗っている間は隣に座っている千雪ちゃんにずっと足を踏まれていたのは誰にも気付かれていないかったと思う。なんでそんな事をしてきたのかわからないけれど、車に乗っている時はずっと足を踏まれ続けていたのだ。

「じゃあ、仕方ないからお兄さんで妥協しますか。あんまりお兄さんと二人で行動とかしたくないんですけど仕方ないですよね。明日になったらみんなで遊ぶとして、今日はお兄さんで我慢する事にしますよ。愛華ちゃんは海に入らないと思いますけど、一緒に行きますか?」

「いや、今日はちょっとやめておくかな。唯ちゃんと桜が心配だし、私も少しだけ疲れているからな。右近は行かないのか?」

「俺も海に行くのは明日にしておくよ。今から海に行っても砂の上で寝てるだけになりそうだしな。それだったら部屋でちょっと横になってる方が良いと思うし」

「お兄さんと二人だけってのは本当に嫌なんですけど、お姉ちゃんも右近君も桜さんも愛華ちゃんも疲れてるなら仕方ないですよね。さすがに旅館の人に頼むのは違うと思いますし、仕方ないんでお兄さんで妥協してあげますよ」

 そう言ってから俺を見てため息をついた千雪ちゃんではあったが、そんなに俺と行くのが嫌なら明日まで我慢すればいいのになと思っていた。でも、二人っきりという事は車の中で俺の足をずっと踏んでいた理由を聞くチャンスかもしれないな。

「じゃあ、あんまり時間も無いことですし急いで準備してくださいね。私はタオルとかもうこの小さい鞄に入れてるんで今からでも大丈夫ですからね。お兄さんは時間かかっちゃいそうですか?」

「そんなに時間はかからないと思うよ。待たせることは無いと思うな」

「それなら良かったです。海に行くのがお兄さんだけ何で今日は下見程度に楽しむことになるかもな。お姉ちゃんたちとは遊ぶ前の予行演習って感じですね」

 口ではそんなことを言っている千雪ちゃんではあったけれど、今まで見た事が無いくらいニッコニコの笑顔を浮かべているのだから相当楽しみにしてたのだろうな。俺はそこまで楽しみにはしていなかったのだけれど、これだけ楽しみにしていた人を見ると少しだけ楽しみになってきてはいた。

「千雪ちゃんをよろしくお願いね。私が元気だったら一緒に行けたんだけど、政虎には迷惑かけちゃってごめんね」

「そんな事気にしなくていいよ。唯たちは少しでも休んで晩御飯までには元気になれるといいね。海は穏やかな感じだったし何も問題はないと思うからね。安心して休んでて平気だからね」

 いつも元気な鵜崎唯がこんなに具合が悪そうにしているのは初めて見たと思う。唯菜ちゃんは時々元気が無い時もあったと思うのだけれど、唯がこんな風になっているのはそれだけ気を張っていたという事なんだろうな。

 そう考えると、車の中にただ座っていただけの俺はもう少し何か出来たのではないかという思いもあったりした。でも、俺に出来ることがあったかと言われると、何も思い浮かばないのであった。

「お兄さん、早く準備してくださいよ。千雪はもう準備出来てるんですからね。お兄さんが行かないんだったら千雪は一人で行っちゃいますよ」

「ごめんごめん、すぐに準備してくるからさ。ちょっとだけ待っててね」

 俺は自分の荷物と右近の荷物を持って割り当てられている部屋に向かっていった。

 俺達の部屋は女性達とは別棟の離れにあるのだが、なかなか広くて見晴らしの良い素敵な場所であった。

 もう少しゆっくりと部屋を見ておきたかったのだけれど、千雪ちゃんを待たせると何を言われるのかわかったもんじゃないので急いで着替えを済ませてロビーへと向かうことにした。

 海パンのままで良いのかちょっと悩んだけれど、ハーフパンツタイプなのだから問題はないだろうと思って水着にパーカーという格好で向かうことにした。

 ちょっとだけ疲れてはいるけれど、多分二番目に元気なのは俺だと思うので今日は千雪ちゃんの相手をしてあげよう。疲れているみんなに負担をかけないで出来ることと言えばこれくらいしか今はないだろうしな。

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