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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第五十話 新しい彼女

 今週三回目の告白を受けた俺は新しく出来た彼女と一緒に大学構内を歩いていたのだけれど、そんな時に限って政虎が誰かと言い合いになっている場面に遭遇してしまうのだ。

「あの先輩って右近先輩のお友達ですよね?」

「そうだよ。俺の親友さ」

 新しく出来た彼女は俺が言った親友という言葉に驚いていたようだけれど、これは紛れもない事実である。少なくとも、俺は政虎の事を大切な友達だとは思っているのだ。

「親友ですか。そうですよね、右近先輩を見かける時はあの先輩と一緒にいること多いですもんね。あの感じだったら右近先輩が助けに行った方が良いんじゃないですか?」

「たぶん、政虎は俺の助けなんていらないんじゃないかな。あいつなら自分の力で何とかするだろうし」

「五人に囲まれてますけど大丈夫なんですかね。親友なら助けに行った方が良いような気もしますけど」

「君は優しいね。でも大丈夫だと思うよ。さすがにこんな場面で殴り合いとかにはならないと思うし、今は黙って見守ってても平気だと思うな。そうだ、もう少し近くに行って何を言い争ってるのか聞いてみようか?」

 新しく出来た彼女は俺の提案を聞いて少し戸惑っていたのだ。時間にして数秒の沈黙の後、俺と新しく出来た彼女は政虎の背中側にあるベンチに座ってどういったことをしているのか見守ることにした。

 この時点で政虎も言い争いをしている連中も俺達には気が付いていないようだった。政虎は普通に周りに興味が無いだけだと思うのだけれど、政虎を囲んでいる連中が周りの事を気にしていないというのは意外なことだった。そんなに集中するくらい政虎に関心があるのかと思うと、政虎がいったい何をしたのか気になってしまってきた。


「なんでお前の友達は俺達が好きな女とどんどん付き合ってるんだよ。この大学の男たちの気持ちとか考えられないのか」

「それを俺に言ってどうするんだよ。右近に言えって」

「アホか。あいつに言っても俺達が嫌われるような事になるだけだろ。あいつがこの大学の女子たちにどう思われてるのか考えてから物を言えよな」

「そんな事言われても俺にはどうする事も出来ないだろ。大体、お前たちが好きなだけの女が右近と付き合おうが関係ないだろ」

「関係無いって事は無いだろ。俺達が好きな女がみんなあいつの元カノになっちまうんだぞ。それも、たった一日しか付き合わない関係で捨てられてるんだからな。そんなの見てられないだろ」

「たった一日の関係だっていいだろ。お互いに納得してるんだからが嫌がどうこう言う話じゃないと思うけどな」

 まあ、政虎が他の男子に絡まれているとしたら俺絡みかあいつ自身が余計な事を言って相手を怒らせたとかになるんだとは思っていた。今回みたいに男しかいない時は大体俺のせいなのだけれど、それは少し申し訳ない気持ちになってしまう。

「あの先輩って右近先輩の事で揉めてるみたいですね。でも、あんなに起こるような事じゃないですよね。私達って一日でもいいから右近先輩に付き合ってもらいたいって思ってるだけですし、右近先輩だって優しいから私みたいな話したことのなかった後輩ともこうして付き合ってくれてるんですもんね」

「俺は優しくないんだけどな。優しかったら一日で別れたりなんてしないと思うし」

「それがまたいいんですよ。右近先輩みたいなイケメンと付き合えることなんて私達みたいな普通の女子にはありえない経験ですからね。みんなに平等に優しく接してくれる右近先輩は本当に神ですよ。いや、神様よりも神だと思います」

 俺が今みたいに名前も知らない女子とも付き合うようになったのは政虎の言った一言が理由だったりする。

『俺は誰とも付き合えるとは思えないんだ。だから、お前は俺の分もいろんな女と付き合って楽しくやってくれ』

 その言葉を聞いて以来俺は数多くの女子と付き合ってきた。長くても一日だけの関係ではあったけれど、政虎の言ったいろんな女と付き合ってくれというのは達成していると思う。それが政虎の思っていた事なのかはわからないけれど、そんな俺を見ても政虎は俺の事を否定なんてすることは無かったのだ。

「お前らの言い分を聞いてるとだな、お前らが勝手に好きになった女が右近に告白して付き合ってるだけって話だろ。それが嫌だったらお前らが先に告白して付き合えばいいだけの話だろ。そんな簡単なこともしないで右近のせいにしてるっておかしくないか。お前らが右近より魅力が無いってだけの話だろ」

 俺は別に誰かに好かれようと思って行動なんてしていない。自分から女子を好きになったことも無かったし、好きになってもらおうと努力をしたことだってないのだ。向こうから勝手に好きになってくる女子に対して断ったり突き放したりしていない、たったそれだけの事しかしていないんだけどな。

「あの先輩って結構過激な事言ってますよね。でも、右近先輩の事を好きにならない女子なんて普通はいないと思うんですよ。右近先輩って優しいし、気配りも出来るし、何よりイケメンですからね。私達の学年でも右近先輩の話題ばっかりですし、高校の後輩達でも右近先輩の事を気にしてる子も結構いるんですよ。私もこの大学に入学したのって右近先輩がいるからってのもありますからね」

「それはちょっとプレッシャー感じちゃうな。俺ってそこまでの男じゃないと思うけどな。それと、俺の事を好きにならない女子なら何人かいるんだよ」

「右近先輩の事を好きにならない女子って、一緒にいることが多い美人な先輩と胸の大きい先輩ですよね。あの二人ってなんで右近先輩の事を好きにならないんだろうな。近くにいるから魅力に気付いてないって事のないと思いますけど、私も右近先輩の近くに居たらそうなっちゃうんですかね?」

「どうだろうね。愛華と唯は俺なんかの事よりもずっとずっと好きな相手がいるって事なんじゃないかな。俺みたいに薄っぺらい男よりも好きな相手がいるだけだと思うよ」

「ええ、右近先輩は薄っぺらなんかじゃないと思いますけど」

「じゃあ、俺のどんなところを好きになったか聞いてみても良いかな」

 俺はちょっと意地悪な質問をしてみた。俺に告白してくる女子は俺と付き合っていた問う事実が欲しいだけの場合が多いというのは知っている。俺はその事を悪いことだとは思わないし、その気持ちもわかったりするのだ。でも、政虎に俺の文句を言っているあいつらはそう思ってはいないんだろうな。普通はそう思わないんだろうなという事も俺は理解しているのだ。

 新しい彼女は俺が思ってたよりも俺の良さをたくさん言ってくれていたのだけれど、そのどれもが表面的な事ばかりであった。学年も違って接する機会も多くないので当然と言えば当然ではあるのだけれど、俺の事を好きになってくれた理由が多くあったことを少し嬉しく思っていた。

 まだまだ俺の良さを言ってくれていたタイミングではあったが、俺と新しい彼女は政虎が殴られた場面を見てしまって同時に固まってしまった。何があったのかは聞いていなかったのだけれど、政虎が殴られた場面を見てしまったという事で俺と新しい彼女の時間は止まってしまったのだった。

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