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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第四十六話 ご飯を食べ終わったんだから家まで帰ればいいのに

 あっという間に蕎麦を食べ終えた俺達はそのままスマートに会計を済ませて店を出た。鵜崎千雪の言葉ではないけれど、俺は完璧とは言えないまでもノルマを達成したことに対する満足感を味わっていた。あまり人に頼まれごとをされない俺は久しぶりにこの気持ちになっていたのだが、そんな俺に対して鵜崎千雪は意外な事を俺に対して言ってきた。それは全く予想もしないような事であった。

「じゃあ、食べ終わりましたし行きましょうか。お兄さんってこの後まっすぐ家に帰るんですよね?」

「いや、君を送ってから帰ろうかと思うけど」

「へえ、意外と優しいんですね。でも、千雪の事は送ってくれなくても大丈夫ですよ」

「大丈夫って言われてもな。まだ遅い時間ではないけどさすがに夜に一人で帰すのはどうかと思うんだけど」

「気にしなくて大丈夫ですって。お兄さんの家でお姉ちゃんと待ち合わせしてるんで帰りの心配はないですから」

「え、俺の家で待ち合わせってどういうこと?」

「どういう事って、そう言うことですよ。お姉ちゃんから聞いてませんでした?」

「何も聞いてないけど」

 どういうわけなのか俺は鵜崎千雪を連れて家に帰らないといけないことになったようだ。さっさとご飯を食べて家に送り届けるつもりだったのだけれど、なぜか俺の家で待ち合わせをしているという事だった。

「お姉ちゃんは映画を見終わったら真っすぐお兄さんの家に来るそうなんでそれまで待ってましょうね。お兄さんの部屋にある漫画とかちょっと読みたいのあるんでちょうど良かったです。あと、ずっと言おうか迷ってたんですけど、千雪の事は君って呼ばないで欲しいです。君って呼ばれるの好きじゃないんですよね」

「わかった。君って呼ばないように気を付けるわ」

 俺は昔から人の事を名前で呼ぶことに抵抗を感じていた。鵜崎唯と髑髏沼愛華に名前で呼ぶことを強制されてからは少しだけその感覚も無くなってきたのだけれど、それは二人に限った話なので鵜崎千雪の事を名前で呼ぶという事には少しだけ抵抗感もあるのだ。だが、鵜崎千雪はどう見ても子供であるしそんな事を気にする必要も無いのかもしれない。

「あの、お兄さんって千雪と部屋で二人きりになったからって変な事しようとか考えてないですよね?」

「変な事ってどんなことかわからないけど、何も考えてないよ」

「それはそれで失礼な話だと思いますけど。まあいいです。お兄さんがそういうことをする人じゃないってのはお姉ちゃんから聞いてるんでそこだけは信頼してますからね。でも、お兄さんが二人っきりは嫌だって思うんだったら愛華ちゃんを呼んでみましょうか?」

「俺と千雪ちゃんしかいない状況で愛を呼んでも来ないと思うよ。愛は唯がいないと俺の部屋には来ないと思うし」

「そんなのわからないじゃないですか。千雪がいればお姉ちゃんがいなくてもお兄さんの部屋に来るかもしれないですし」

 鵜崎千雪は自分のスマホを取り出して髑髏沼愛華に電話をかけているようだ。俺には髑髏沼愛華の声は聞こえてこないのだけれど、鵜崎千雪の様子や言葉から推察するに髑髏沼愛華は鵜崎千雪の言葉を全く聞き入れていないようである。

 俺は聞こえていないはずの髑髏沼愛華の会話を脳内で補完するように鵜崎千雪の声を聴いていたのだが、おそらく髑髏沼愛華は俺に対するような感じではなくもう少し優しい感じで鵜崎千雪の頼みを断わっているのだろう。髑髏沼愛華は基本的に頼まれごとに対してイエスとは答えないのだ。鵜崎唯のいとこである鵜崎千雪の頼み事であれば違うのかもしれないとほんの少しだけ思ったこともあったけれど、基本的に鵜崎唯以外の頼みごとに対して聞き入れることなんて滅多にないのである。

「お風呂に入った後だから家から出たくないって言われちゃいました。愛華ちゃんなら来てもらえると思ったんですけど、お兄さんと二人っきりになっちゃいそうですよね。あ、そうだ。右近君を呼んだら来てくれるんじゃないですか」

「右近は今バイト中だよ。さすがにバイトを抜け出してまで来ることは無いでしょ」

「そうですよね。右近君がバイトでこれないからお兄さんと二人でご飯を食べに行くって事になったんでした。千雪もお兄さんも予定なんて何も無いから右近君のバイトが無い日にしとけばよかったですよね。ちょっと失敗したかもしれないですね」

 俺に予定が無いというのは事実ではあるのだけれど、こうもはっきりと言われてしまうと自分が何の予定も入らないつまらない人間のように感じてしまう。そのこと自体は何も間違ってはいないし鬼仏院右近以外に友達もいないのだから当たり前と言えば当たり前なのだ。

 今日だって鵜崎千雪とご飯を食べに行っていなければ家で黙ってゲームをしていただけで終わっていたかもしれない。

「そう言えば、唯ってそんなに映画が好きだったんだな。今までそんな話を聞いたことが無かったから意外だったよ」

「別にお姉ちゃんは映画とか好きってわけじゃないと思いますよ。今見ている映画だってサブスクで適当に見てるんだと思いますし」

「え、そうなの。それだったら唯も一緒に来ればよかったのに」

「それじゃダメなんですよ。千雪はお姉ちゃんがいない時にお兄さんがどんな感じなのか見たかったんですからね。お姉ちゃんに無理を言って今日にしてもらったってところもあったんですけどね。本当は右近君がいても良かったとは思ってますけどね」

 鵜崎唯がそんな頼みごとを聞くというのは意外だった。でも、鵜崎唯は俺が他の女子と話をしていても嫉妬とかしていないし俺が唯菜ちゃんの事を好きだという事も受け止めてくれている。そういう意味では鵜崎唯という人間は心が広いのかもしれないと思うのだけれど、最初に見た鵜崎唯の部屋の印象が強すぎて何か違う意味があるのではないかと思えてしまう。

 隣を歩いている鵜崎千雪は鵜崎唯を二回りくらい小さくした感じではあるのだけれど、この子も鵜崎唯のように心が広いのだろうかと思っていた。ただ、本当に鵜崎唯に顔がそっくりで本当の姉妹なんじゃないかと感じているのだ。胸の大きさはかなり違っているけれど、中学生と大学生なら仕方ないのかもしれないな。

「今日ってなんかジメジメしてますよね。ちょっと歩いただけでも汗をかいちゃいますよ。早くお家に帰ってシャワーでも浴びたい気分ですけど、そこまで我慢出来そうもないですしお兄さんの家でシャワー借りても良いですか?」

「いや、普通にダメだけど。トイレは使ってもいいけどお風呂はちょっと嫌かも」

「わかってますよ。冗談ですし」

 街灯に照らされた鵜崎千雪は今日見た中で一番の笑顔を俺に向けていた。

 その笑顔に理由は俺にはわからなかったのだった。

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