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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第四十二話 同じ女の子と二回目のデートをするのは初めてだ

 二日連続で同じ女の子と二人っきりでご飯を食べに行ったのは初めてかもしれない。母親とだって二人だけで二日続けて外食したことなんて無かったのだけれどなぜか俺は今日も唯のいとこの千雪ちゃんと一緒にご飯を食べに来ているのだ。

「右近君って凄くモテてるってお姉ちゃんから聞いてるんだけど、千雪は右近君がどうしてそんなにモテるのかわからないんだよね。見た目は凄くかっこいいし優しいし思いやりもあって素敵だなって思うんだけど、何となく男として意識してみることが出来ないんだよね。なんか、千雪から見るとテレビとかで芸能人を見てる感覚に近いのかも。でも、お姉ちゃんの同級生とかそれくらいの年代の人は千雪では感じられない右近君の魅力ってのがわかってるのかな?」

「俺も正直に言ってなんでそこまでモテてるのかがわからないんだよね。今まで告白してきてくれた子に聞いてもイケメンだからとか付き合ってみたいって思ったとか他の人と付き合ってるなら私も付き合っておきたいとかそんな事しか言われてないんだよ」

「そうなんだ。みんな右近君の上辺だけしか見てないって事なんだね。でも、千雪にはまだ右近君の上辺すらも見えてないのかな。一緒にご飯を食べてても楽しいし友達がいれば写真とか撮って自慢出来るんだろうなって思うんだけどさ、なんか今みたいに二人っきりでいる時よりもお姉ちゃんとか愛華ちゃんとかもいた方が良い顔で笑ってるなって思うんだ。右近君は千雪と二人っきりでこうしてご飯食べてても楽しいって思ってないよね?」

「まあ、正直に言って中学生の子と一緒にこうしてご飯食べてても何していいのかわからないってのがあるかな。千雪だって俺と付き合ってみたいとか思ってるわけじゃないんでしょ?」

「うん、千雪もお姉ちゃんと一緒で右近君とは友達までだなって思ってるよ。年齢が離れてるってのもあるんだけどさ、たぶん千雪が右近君の事を好きになっても右近君は千雪の事を何とも思わないんだろうなって思うからね。だって、右近君とお姉ちゃんや愛華ちゃんの関係を見てると恋愛感情が無い方が上手く付き合える人なんだろうなってわかっちゃうもん。右近君ってさ、愛情よりも友情の方が大事って思うタイプ何じゃないかなって千雪は思うんだよね。間違ってたらごめんなさいだけど」

 千雪は唯のいとこであるだけあって人を見抜く力があるのだろう。この子が言うようにみんなは俺の上辺だけを見てチヤホヤしてきてくれている。昔からそんな風に見られている事が多かったし、近寄ってくる男子もほとんどが俺に群がってくる女子目当てだったりしたのだ。俺のおこぼれにあずかれるんじゃないかなんて思う事はあるだろうし、そんな希薄で欲にまみれた姿は思春期なら当然なのかもしれないと思っていたのだけれど、そんな中で俺の周りに一切興味を持たず俺の事をちゃんと理解してくれていたのが政虎であり唯だったりするのだ。愛華はそもそも俺に興味を持っていないというのも一緒にいて気が楽だというところでもあるのだ。

「でもね、千雪は右近君がどんな人と付き合っていってどんな相手と結婚してどんな家庭を持つのか興味はあるんだよね。お姉ちゃんから聞いた話だとさ、右近君は見た目が良いだけじゃなくて頭も良くてバイト先でも人気者だって聞いてるからね。その上人の悪口とかも言わないし文句を言ってるところも誰も見た事が無いって言ってたよ。そんな風に生きてるのって凄いなって思うんだけどさ、辛いって思ったりしないのかな?」

「辛いって思ったことは無いかな。でも、それを言ったら千雪は俺よりも凄いことをしてるって思うんだけど。中学に入学して二か月で高校までに必要な単位をレポートと論文だけで取得したんでしょ。普通に生きてたらそんな事出来ないと思うんだけど、一体どんな風に過ごして来たらそんなに頭が良くなるのかな?」

「言っても信じてもらえないと思うんだけどね、千雪は他の人より記憶力が良いんだよ。パッと見たものでもすぐ記憶することが出来るんだ。それで、千雪はいろんなものを見て覚えるのが好きで小さい時からいろんな本とか辞書とか図鑑とか歴史書とか見てきたんだよ。他にもパソコンでいろんなのを見たりもしてきたし、お姉ちゃんと一緒にいろんなところに行って遊んだりもしてきたんだよね。その経験の積み重ねがたまたま勉強に繋がってるってだけなんだと思うよ。右近君が思ってる通り千雪はまだまだ子供なのかもしれないけどね、知識量だけだったら右近君にも負けたりしないって自信を持って言えるんじゃないかな。経験値は不足してるんでこれから色々と経験していきたいなって思うんだけど、千雪がこれからお姉ちゃんと一緒に二年間楽しく過ごせたら凄くいい経験が出来ると思うんだよ。もちろん、愛華ちゃんや右近君ともいろんなことをしていきたいなって思ってるんだよね」

「その中にはさ、政虎は入ってないのかな?」

 ずっと思っていたのだけれど、千雪は政虎の事を意図的に避けているように思える。政虎は女子に好かれるようなタイプではないと思うのだが、千雪に対しても唯が政虎の事を悪く言うとは思えない。それどころか唯が政虎の事を説明するんだったら良いところばっかり教えていそうなものだ。それなのに、千雪は政虎の事になると話題にすら出したりしないのだ。いくら何でもそこまで避ける理由が俺にはわからない。

「お兄さんは無理かな。お姉ちゃんがお兄さんの事を好きだってのを抜いたとしても千雪はお兄さんの事を好きになれないと思う。右近君に対して好きになれないのとは違って、お兄さんとは何もかも合わないんじゃないかなって思ってるもん。ゲームとか漫画の趣味は合うんじゃないかなって思ってはいるけどさ、それとは別の深いところで千雪とお兄さんは合わないと思う。思うというか、千雪はきっとお兄さんと二人だけで同じ空間に居られないかも。たぶんなんだけど、お姉ちゃん以外の女の子はお兄さんと一緒にいると心霊スポットに行く直前とか絶叫マシンに乗る直前みたいな気持ちになっちゃうんじゃないかなって思うよ。ただ、お姉ちゃんみたいにお兄さんと波長が合う人は何の問題も無いと思うんだけどね。千雪は残念だけどお兄さんとは波長は合いそうもないんだ。右近君は何を言ってるんだろうって思うかもしれないけど、千雪の魂がお兄さんの魂を拒絶しちゃうんだよ」

「でもさ、そこまで言われるほど顔が悪いとは思わないんだけどな」

「見た目じゃないよ。なんて言えばいいのかな、お兄さんの魂と千雪の魂が合わないとでもいうのかな。たぶん右近君は理解することが出来ないと思うんだけど、ほとんどの女の人はお兄さんの魂に惹かれたりしないんだと思うよ。右近君もお兄さんと本質的には同じような感じだと思うんだけど、ほんのちょっと違うだけで受ける印象って全然違うんだなって思っちゃうよね」

 千雪が言っている事は俺には理解出来そうもないのだけれど、今まで付き合ってきた女の子たちに政虎を紹介しようとしても断られることが多かった。俺の親友なんで仲良くして欲しいと言っても、それだけは無理だと拒絶されることばかりであった。俺と付き合い続ける事よりも政虎と仲良くしないといけないという事の方が嫌なのかと思っていたのだけれど、千雪が言っている魂が拒絶するという言葉を信じても良いのかなと思うくらい露骨に嫌がられていたように見えたんだよな。

 大学に入るまではそこまで政虎も嫌われていなかったと思うんだけど、大人になるとそういう風に変わることもあるのかなと考えてしまった。千雪の言っている事が正しいなんて思ってはいないけれど、政虎がほとんどの女子に嫌われているのはそういう理由があるのからなのかもしれないなと少しだけ納得している俺がいたのであった。

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