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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第二十四話 唯菜を送り届けた後は政虎の家に行くのだ

 カフェでバイトを始めてしばらく経つんだけど、こうして唯菜と一緒に帰るのも日常の一部になっている事に今更気付いてしまった。俺としては家にまっすぐ帰ってもやることが無いので問題はないのだけど、唯菜を送った後に政虎に報告に行くことが出来るという事は大きなメリットに感じていた。今日は唯と愛華が作ったご飯が食べられるという事もあるのだけれど、一日の終わりが政虎と一緒だという事に得も言われぬ喜びを感じているのだ。

「あ、お疲れ。唯菜ちゃんは今日も無事に帰れたみたいだな」

「お疲れ。今日も無事に送り届けてきました。で、こんな時間に政虎は何してたんだい。俺が来ると思って外で待ってたのかな?」

「そんな事するわけないだろ。ちょっと前にテレビを見終わって二人を家まで送ってきたところだよ。さすがにこんな時間に歩いて帰らすわけにもいかないしさ、右近を待ってたら二人が帰るのも遅くなっちゃうからな」

「そっか、二人とも帰っちゃったのか。直接食べた感想とか言いたかったのにな」

「お前は本当にそう言うところはマメだよな。そのマメさがモテる秘訣なのかな?」

「そんなんでモテたりはしないだろ。それにさ、政虎だって結構マメだと思うけど、あんまりモテないよな」

「お前さ、絶対わかってて言ってるよな。同じマメでもお前のはいいマメさで俺のはしつこいとか気持ち悪いとか細かいとか思われてるやつなんだよ。全く同じことをしても俺とお前じゃ受ける印象が違うって事だからな。お前以外のやつが言ってたらただのイヤミにしか聞こえないからな」

「俺はそんなつもりで言ったわけじゃないんだけどな」

 こんな風に俺と政虎は会うたびに軽口を叩き合っているのだけれど一度も本気で言い合いになったことは無い。一見するとどちらも悪口を言っているように聞こえるかもしれないのだけれど、俺と政虎にしかわからない気付かいというものがあるので大丈夫なんだろう。それか、俺も政虎も他人の言っている事に興味を持っていないだけなのかもしれない。だが、俺は政虎の発言の一つ一つは気にしていたりはするのだがね。

「そう言えばさ、この前持っていったタッパーはちゃんと持ってきただろうな?」

「あ、普通に忘れたわ。そもそもここからまっすぐバイト先のカフェに行ったからな。帰りも唯菜を送ってそのまま来ちゃったし、取りに帰る時間なんて無かったわ」

「マジかよ。じゃあさ、そのまま家で食ってけよ。白飯とカップ麺だったらどっちが良い?」

「その選択肢って二択じゃないよな。ハンバーグだけだったらどっちでもいいと思うけどさ、煮魚もあるだったら白米以外選ぶわけないだろ」

「だよな。そう思って一応保温してあるから。食べないならそのまま冷凍しちゃおうと思ってたから助かるよ」

 なんだかんだ言って政虎は優しいやつなんだ。他の人は気付いていないけれど、こうして気遣いも出来るやつなんだよな。唯以外は誰も気付いていない事なんだけど、わざわざこんなことを他人に教えてやる必要もないし、俺と唯だけの秘密という事にしているのであった。


「なあ、この煮魚ってお前の好みの味なんだろ?」

「そうだけど、お前の口には合わないのか?」

「いや、そう言うわけじゃないんだけどさ、やけにサッパリしてるなって思ってな。もう少し塩っ気があってもいいような気がするんだけど、お前ってこれくらいの塩加減が好きなのか?」

「そんなにサッパリしてた気はしないけどな。そう言われたら塩っ気も少ない気がしたけどさ、魚の味自体はしてたから気にならなかったな。でも、お前って薄味の方が好きじゃなかったっけ?」

「そうではあるんだけどさ、煮魚って言うくらいなんだからもう少ししっかりと味がついてるもんだと思ってたんだよ。冷蔵庫で寝かせてる間にも味が染み込んでそうなもんなのにさ、今の時点でこんな感じだったら出来立てはどうだったんだろうって思ってな」

「普通に美味かったけどな。ハンバーグの方はどうよ?」

「こっちは味が濃そうだから魚を食べ終わってからにするわ」

 俺はどちらかと言えば濃い味付けよりも薄めの味付けの方が好みだったりするのだ。でも、この煮魚は想像しているよりもずっとシンプルな味付けなんだよな。塩味はほのかに感じる程度で魚の味以外にわずかに香るショウガが魚の生臭さをかき消してはいるのだけれど、旨味というのはそこまで強くはないように思えるのだ。それでも、政虎はこの味が一番好みだというのである。

 どういうわけなのか、唯が作る料理はどれも美味しいには美味しいのだが俺に言わせると何かもう一つパンチが欲しいと思うものが多い。それなのに、政虎の感想はどれを食べても今までで一番美味しい料理で一番自分が食べたい味付けだという。たまご焼きもカレーもロールキャベツも豚丼も三平汁もエスカロップもお好み焼きも何もかも政虎が絶賛する料理を作ってしまうのだ。それには何か秘密があると思うのだけれど、その秘密は誰も知ることは無いのだ。

「で、そっちのハンバーグはどうだ?」

「どうだって言われてもさ、普通に美味いよ。でも、何かソースとかなかったっけ?」

「あ、悪い。激うまソースがあるのを忘れてたよ。このソースがマジ美味いから期待してていいからな」

 政虎は唯が作った料理を食べて唯本人にも感想は伝えているのだけれど、こうして本人がいない時の方が手放しでほめている事が多い。さすがの政虎も料理を作った本人にここまで本気で褒めることが恥ずかしいという思いもあるのかもしれないな。でも、俺はこっそりこれを録音していてあとで唯に聞かせてあげているのだ。この事を政虎は知らないと思うのだけれど、この事が知られてしまったらこんなに素直な政虎の姿を見ることが出来なくなってしまうんだろうなという気はしていた。

「そうだ、すっかり忘れてたけどさ、カフェで貰ってきた賄いのサンドイッチいるか?」

「お前が貰ったやつなんだからお前が食べろよ」

「いや、俺は朝はご飯派だから食べないんだよ。政虎はそんなこだわりないだろうしさ、今日も貰ってくれよ。断られたら捨てることになっちゃうし」

「その言い方はズルいな。でも、明日の朝に食べようと思ってた米もお前に食べられちゃったからな。そのサンドイッチは俺の朝ご飯に頂くよ」

「毎回悪いな。恩に着るよ」

 今回のサンドイッチも作ってくれたのは唯菜なんだよな。たぶん唯菜は俺が食べると思って作っているんだろうけど、食べるのは唯菜が嫌っている政虎なんだよな。政虎はこのサンドイッチを作ったのが唯菜だという事はうすうす気づいていそうだけど、唯菜は政虎が食べることなんて全く気付いていないんだろうな。このサンドイッチを作った唯菜も普段は誰が食べるかなんて気にしてないとは思うけど、俺が食べるものだと思って作ってるんだろうな。その事を考えると少し胸が苦しくなるけれど、そんな事よりも政虎が喜んでくれる方が俺にとっては嬉しかったりするんだよな。たぶん、唯菜が作ったサンドイッチを食べたら政虎も嬉しいって思ってくれるはずだよな。

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