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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第十八話 桜唯菜が受けた被害

 今みたいに右近君が私を家まで送ってくれるのは何回目になるのかな。最初はバイトのあがり時間もバラバラで一緒に帰ることも無かったのだけど、いつからか私と右近君のバイトの時間が一緒になって気付いた時にはシフト自体も同じになってたんだよね。

 最初はあんまり遅い時間まで働きたくなかったのだけど、右近君がラストまで働くようになってからは私も最後まで残るようになったんだ。でも、私に出来る仕事はあまりないので右近君より先にあがる事があってもなんだかんだ理由を付けて帰らないで残っているようにしていたら、帰り道も一緒で優しい右近君が家まで送ってくれるようになりました。

 時間が合えばバイトに行くときも一緒に歩いて行ったりもしているんだけど、学校が終わってからバイトに行くまでの時間を一緒に過ごすことが出来ていないのはちょっと残念なんだよね。

「今日も送ってくれてありがとうね。人通りも少ないからこの時間帯って一人で歩くのはちょっと怖いんだよね」

「だろうね。何かが出るってわけでもないとは思うけどさ、女の子が一人で歩くのって不安かもしれないよな」

「そうなんだよ。今日も常連のおじさんに飲みに行こうって誘われちゃったんだよね。私はお酒飲まないって言ったらさ、飲みじゃなくてご飯でもいいよって言われちゃった。そう言うことじゃないんだけどね」

「唯菜は人気あるから客からの誘いも多そうだよな。結構話しかけられてるの見かけるし、楽しそうに話してるからなのかもな」

「まあ、お客さんだから強く断ることも出来ないんだよね。右近君みたいにズバッと言えたらいいんだけどさ、私はちゃんと断れないから勘違いされちゃってるのかも」

「でもさ、唯菜は政虎の誘いは断ってるじゃん」

「政虎君には悪いけど、私は政虎君と二人っきりで遊んだりは出来ないかな。常連さんに付きまとわれていた時に助けてもらったことは感謝してるんだけど、あの時の政虎君を見たら二人っきりになるのが怖いなって思っちゃったんだよ。私にだけ優しくしてくれる政虎君と他の人に対して優しくない政虎君を見てるとさ、同じ人には見えないし私にもいつかあんな風に辛辣なことを言ってくるんじゃないかって思うと、なんだかとても怖く感じてしまうんだよね」


 私が今のカフェでバイトを始めた時の話なのだが、何も分からない私は持ち前の愛想の良さで失敗をしてもあまり怒られたりはしていなかった。そこまで大きな失敗をしていたわけではないと思うのだけれど、人付き合いにもまだ慣れていなかった私は優しくしてくれるお客さんに対して言わなくてもいいような事をペラペラと喋ってしまっていたのだ。その事を聞いたお客さんが勘違いをして私にストーカー行為を働くようになったのだが、友達にその事を話しても相手の男性が有名な企業に勤めるイケメンだったという事もあって私の話を真剣に聞いてくれる人は誰もいなかった。

 バイト帰りにアパートの前に見かけない一台の車がとまっていた。車には誰も乗っていなかったので油断していたのだが、もう少しで家に入るという時に私はいきなり手首を掴まれて車に連れ込まれそうになってしまったのだ。当然私は抵抗をしようと試みたのだけれど、強い力で手を掴まれたのと同時に口を抑えられて叫ぶことも出来ずこのままでは攫われてしまうと思った瞬間、誰かが私の事を助けてくれたのだ。

「ねえ、無理矢理車に乗せようとしてるみたいだけどさ、そう言う関係ってわけでもないよね?」

 私のピンチを救ってくれたのは右近君だった。たまたまコンビニに行った帰りに政虎君の家に向かう途中だったようで、私が拉致されそうになっている瞬間を見かけて助けてくれたのだ。

「なんだお前は、僕たちの邪魔をするな。ただの痴話喧嘩だから部外者は口を挟むな」

「この人は部外者って言ってるけどさ、政虎はどう思う?」

「どう思うって言われてもな、俺はこいつを見た事ないしこいつの方が部外者なんじゃないか」

「は、お前は僕の何を知っているというんだ。僕は唯菜と付き合っているんだ。今日だって昨日だって先週だって一緒に過ごしていたんだぞ」

 ちょっと待って、一緒に過ごしたって言われても私は北川さんとはバイト先でしかあってないのに。もしかして、お店にいた事を一緒に過ごしていると言っているのかしら。それってどういう事なんだろうと思って必死に声を出そうとしても、私の口は強い力で抑えられていてハッキリと言葉にすることが出来なかった。

「わかったらさっさと消えろ。僕と唯菜の邪魔をするな」

「邪魔をするなって言われてもな。どう見てもこの状況はヤバいでしょ。例え二人が付き合ってたとしても、今みたいに無理矢理車に連れ込もうとするのは良くないと思うんだよね。やってることって完全に犯罪だと思うけど」

「犯罪だと、笑わせるな。僕と唯菜は愛し合っているんだ。これから一緒に愛を確かめに行こうとしていただけで、唯菜も恥ずかしがっているだけだ。僕はそんな唯菜に一歩踏み出してもらいたくてちょっと強引になっただけだ。わかったらさっさと消えろ」

「消えろって言われてるけどさ、政虎はこのまま帰っても大丈夫だと思う?」

「このまま帰るのはマズいよな。もしかしたら、一週間くらい後に新聞に載っちゃうかもしれないからな。美人女子大生ストーカー殺人事件なんて見出しは見たくないだろ」

「見たくないな。でも、さすがに桜さんが殺されるってことは無いんじゃないか?」

「どうだろな。ストーカーの思考なんてわからないからな。ありえない話じゃないと思うよ」

 カフェに来ても時々会話をするくらいで紳士的な北川さんはよく見る常連さんだと思っていたのだけれど、私はそれを怖いとは思ったりしていなかった。むしろ、あまりしつこく話しかけても来ない紳士的ないいお客さんだとさえ思っていた。

 それなのに、私の事を連れ去ろうとするなんて人は見かけによらないんだと思ってしまったのだった。右近君が近くにいて助けてもらえるという安心感があったからなのか、私はこんな状況でも変に落ち着いていたのだった。

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