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何でも出来る親友がいつも隣にいるから俺は恋愛が出来ない  作者: 釧路太郎


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第十一話 食べた人を惚れさせるソースとは

 何事も無かったかのようにゲームを始めていた俺と鬼仏院右近ではあったが、台所の方から時々感じている視線を意識しないわけにはいかなかった。時々聞こえてくる包丁がまな板を叩く音とほんのりと漂ってくる甘い匂いが俺の空腹感をより加速させているのだけれど、俺と鬼仏院右近の会話を聞いて鵜崎唯が気分を害していないか心配にもなっていたのだ。

「ごめん、ちょっと探し物をしてたら遅くなっちゃった。あれ、唯ちゃんはもう料理始めちゃってたんだ。手伝えなくてごめんね」

「ううん、大丈夫だよ。それよりも頼んでいたものは見つかったかな?」

「それなんだけどさ、冷蔵庫の中にあると思ってたんだけど使い切っちゃってたみたいで無くなってたんだよね。それでスーパーまで買いに行ってて遅れちゃったよ」

「そこまでしてくれなくても大丈夫だったのに。かえって手間とらせちゃってごめんね」

「気にしなくて大丈夫だよ。唯ちゃんの料理がよりおいしくなるために必要だって言うんだったら私はどんな苦労だって苦でもないよ。あ、そっちの二人は手伝いもしないでゲームなんてやっちゃって、そんなんだからお前は嫌われるんだよ」

 チャイムも鳴らさずに勝手に入ってきた髑髏沼愛華は鵜崎唯と一通りの挨拶を済ませると手伝いもせずにゲームをしている俺に噛みついてきた。ここまではいつもと変わらぬ日常の一コマなのだが、髑髏沼愛華の一言が俺と鬼仏院右近の背筋を凍らせることになってしまったのだった。

「そう言えば、唯ちゃんは今何を作ってるの?」

「これね、最初は煮魚だけでもいいかなって思ったんだけど、やっぱり男の子は魚だけじゃなく肉も食べたいって思って一口ハンバーグも作ろうかなって思ったんだ。小さめに作ってるからすぐできると思うし、お弁当のおかずにもいいと思うから右近君がバイト終わった後にも食べられるかなって思ってね。それと、政虎と右近君には黙っていて欲しいんだけど、特製のソースもあるんだけど、これを食べたら私に惚れちゃう美味しいソースだよ」

「何それ、そんなソースなくても私は唯ちゃんに惚れてるのに。そんなのあの二人にはもったいないよ」

「ふふふ、本当に惚れちゃうわけじゃないんだよ。愛華ちゃんは本当に素直で可愛いよね。このソースは惚れちゃうくらい美味しいって事なんだって。昨日調べた裏料理サイトに載ってたんだ」

「へえ、裏料理サイトってそんなのまで載ってるんだ。普通のレシピと違うの?」

「私はハンバーグのソースって意識して作ったことが無かったんでわからないけど、こんなのも入れるとか思わなかったよ」

「確かに、それは普通入れようとは思わないよね。あ、私はハンバーグ食べる時ってポン酢って決めてるんだよね。でも、そのソースも美味しそうだな。今日はそのソースで食べてみようかな」

 俺と鬼仏院右近に黙っていてくれという鵜崎唯の言葉が完全に俺達に聞こえていたのだが、それって俺達がさっき話していたことも鵜崎唯に聞こえていたという事なんだろうな。気のせいだとは思うのだけれど、髑髏沼愛華がきてからの方が包丁の音も小さくなっているような気がしていた。

 それにしても、相手を惚れさせるソースってのはどんなものなんだろう。そんなものを食べても平気なのだろうか。そもそも、裏料理サイトに載ってるレシピっていったいどんな素材を必要とするのだろう。俺の頭の中に浮かぶ答えは良くないものばかりであった。

「裏サイトのレシピか。アレって作るのが手間なわりにはそんなに美味しくないんだよな。ちょっとアレンジしたら変わるかもしれないけどさ、俺はそう言うの得意じゃないんだよな」

「え、右近は鵜崎が作ってるソースを知ってるのか?」

「たまたまな。俺もカフェで働いてるから多少は料理にも興味あるんだよ。簡単に美味しいものを作れるサイトとかないかなって思ってさ、色々見てた時期があるんだよね。その時にたまたま見つけたのが裏料理サイトなんだよ。どんなもんかなって試してみたけどさ、あんまり美味くなかっただろ?」

「あんまり美味くなかっただろって、どういう意味?」

「覚えてないよな。一年くらい前の話だし。あの時は買ってきたメンチカツにかけたんだけどな」

「あ、思い出したかも。あの甘いソースだろ。メンチカツと全然合わなくてビックリしたのを覚えてるよ。でも、なんで惚れさせるソースなんて俺に食べさせたんだよ」

「何でだろうな。たまたま近くにいて試してみたかっただけじゃないか。俺に惚れてる女に食べさせても効果なんて無いだろうしな。その点政虎は俺に惚れてないから試すにはぴったりだと思ったんじゃないかな」

「その発想は怖いだろ。試すなら俺じゃなくて鵜崎とか髑髏沼の方が良さそうだけど」

「あの二人は俺に惚れることは無いだろ。俺に惚れるような女だったらこうしてお前の家で一緒に遊んだりなんてしないって」

 女に死ぬほど持てる鬼仏院右近は彼女以外の女性と遊ぶことは基本的には無い。彼女がいる期間もいない期間も鵜崎唯と髑髏沼愛華と一緒に遊ぶことがあるのだ。鬼仏院右近に告白してくる女の子もそれはわかっていて付き合っているのだろうけど、そんな関係で付き合って何が楽しいのか俺にはわからない。誰かが言っていた、鬼仏院右近の彼女だったというステータスを得たいだけなのかもしれないが、それで満足するというのは少し悲しいような気もしていた。

 でも、鬼仏院右近の元カノというステータスは他の女子に対して簡単にマウントを取ることが出来るのかもしれない。最近では付き合った日数でマウントを取り始めているようなのだが、鬼仏院右近の元カノがうちの大学だけで何人いるのか恐ろしくて聞くことも出来ないのだ。

 鵜崎唯は鬼仏院右近に友情を感じることはあっても愛情を感じることは無い。それは俺に対して物凄い愛情を持っていて鬼仏院右近に対してそう言った感情が芽生える事が無いという話なのだそうだが、髑髏沼愛華が鬼仏院右近に惚れる事が無いというのはどういう理由なのだろうか。見た目だけなら美男美女でお似合いだと思うし誰が見ても憧れるような二人に見えるけれど、お互いに全くそう言う目で見ている印象は受けないのだ。

 鬼仏院右近は髑髏沼愛華の事を男友達のように扱っているし、髑髏沼愛華から見て鬼仏院右近は女友達として扱っているようにも見えるのだ。さすがに一線を越えるようなことは無いのだけれど、お互いに全く異性として見ていないという関係性が他の人から見てもわかるというのはある意味素敵な事なのかもしれないな。

「あとは味を染み込ませるだけだからゲーム始めようか。今日はビリにならないように頑張るからね」

 料理を終えた鵜崎唯はごく自然に俺と鬼仏院右近の間に座ったのだが、それを鬼のような形相で見ている髑髏沼愛華の圧におされる形で鬼仏院右近はベッドの上に移動していったのだ。

「私も絶対にこいつらには負けないから。どんな手を使ってもこの男達には勝つよ」

 俺はなるべく髑髏沼愛華に視線を合わせないようにしていたのだけれど、鵜崎唯を見ると自然と視界に入ってくる髑髏沼愛華の目が俺を睨みつけてくるのに気付かない振りをするだけであった。

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