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何者かになろう!  作者: どじょうすくいのどじょう
9/9

- [ ] 教会側のひとから清拭の際の付き人をという申し出を丁重に断り、水とタオルの準備だけお願いすると個室に通され間も無く大量のタオルと複数のお湯の入った桶が運ばれてきた。なぜかマイも入室する。

- [ ] 「ではまずお召し物をお預かりいたします。」

- [ ] 少し恥ずかしかったが憧れに負けてマイの介助を受け入れ、服の上を脱ぐ。下半身は無事だ。

- [ ] すると室内にひとりだけ残っていた教会の関係者が「よろしければ全てお着替えいただき、清めてからお返しさせてください。」

- [ ] といい、マイのそうしましょうという後押しに負け、おれはタオルを腰に巻いてから下も脱ぎ、服を全て預けるとマイと2人きりになる。

- [ ] 「では、始めさせていただきます。」

- [ ] おれは横たわりマイが世話をしてくれる。お湯の温度とタオルのしぼり具合がちょうどよく、気持ちいい。顔を軽く拭い、タオルをかけてから洗髪から始まる。

- [ ] 「既にお気づきかと思われますが、教会関係者に対して下手にでるような対応はお勧めいたしません」

- [ ] ああそれでと対応の違いに納得する。

- [ ] 「彼らはなんと言いましょうか、付け込めるところには常に付け込んでくるような方が多くいますので」

- [ ] たぶん壺の押し売りみたいなやつの対応といっしょなのかなと飲み込む。続きを待っていると教会内部ではこれ以上はっきりしたことは言えませんと言われた。

- [ ] ゲロ女は聖女とよばれる神殿勢力内部でも最高位の実力・権力者らしく、その容貌の美しさと信仰の強さから人気のある、広告塔の様な存在として有名であり、顔を知っていたマイは先ほどの出会いに驚いていたらしい。おれが感じた第一印象としてはただの変人といったものだったが、彼女は信仰心の強さからしばしば奇行にはしることがあるらしい。といってもそれは端からみればの話しで、何らかの意味があることであり、その奇抜さも彼女の人気に隠れる程度らしい。

- [ ] 信仰というか、神がらみで彼女に目を光らせられる心あたりがおれにはちょっぴりだけあるがゲロを吐かれるような覚えはさすがにない。そんなに不細工な顔なのだろうか。

- [ ] 体まできれいに清拭がおわり、服を着てあらかじめ案内されていた応接室のような場所に移動しようかと思ったら見計らったみたいに扉がコンコンコンとたたかれる。

- [ ] 「?どうぞ」

- [ ] おれの部屋じゃないけどと少し変な気分になりながら応えると失礼致しますとゲ…マリアが顔をのぞかせる後ろには先ほどの男2人も控えており、丁重に非礼を詫びてくる。おれはゲロひっかぶり事件については驚きが強すぎて怒りとか全くなくていいですよーと応じながらその場の皆で部屋を移動する。

- [ ] 部屋を移るとまた改めて十分に謝罪され、席についてから話しにはいる。互いの付き人は腰掛けていふふかふかのソファの後ろに立って控えている。

- [ ] 「あのような非礼極まる邂逅をしてしまった後でたいへん厚かましいことこの上ないのですが、我々はあなた様と友好的な関係を築いていきたいと考えております。」

- [ ] マリアはそういって深々と頭を下げ、切り出した。

- [ ] あなたからは過去に類をみない、強い祝福を感じますと続けた。

- [ ] 「驚かれるのも無理はございませんが先日天啓を授かり、この日を心待ちにしておりました。」控えている向こうの付き人も共に頭をさげられるが、おれは気になりすぎて我慢出来ずに会話を無視してしまう。

- [ ] 「ごめんなさい。その、先に…なぜ吐かれたんですか…?怒ってるとかじゃなくて、好奇心というか、答えが欲しくて」

- [ ] すると相手は苦そうなーー頭をさげているので顔はみえないがたぶんーー顔をして少し沈黙し、口を開く。

- [ ] 「…もっとも近い感情で言わせていただきますと、嫉妬…でございます。」

- [ ] マリアは訥々と語りだした。

- [ ] 「我々は神を信じ、ただしく信仰を行うことでその祝福や奇跡の力の一端をお借りしております。先程も申しました通りあなたの身には並大抵の信仰ではありえないほどの祝福が宿されております!」

- [ ] 強くなる語気に気圧される。

- [ ] 「なのに…!なのになぜ!あなた様の中に神が存在しないのですか!?」

- [ ] 「こんなことなら異教徒である方がまだマシです!わたくしどもは身を粉にして神に仕え、その叡智の欠片にふれさせているといのに!なぜ!」

- [ ] と言って途端に口をつぐみ、頬をハムスターのように膨らませるが、それが腹から込み上げているものを抑えているのだと分かる。

- [ ] 「…申し訳ありません。…そういう訳で、自分の信仰の至らなさを棚にあげて、浅ましくも嫉妬をしてしまっていたということでございます。」

- [ ] 原因はおれにあるんだけどおれは悪くなくてなんかゴメンって思うんだけどそうやって謝るのも相手を傷つけそうで言い淀む。ちょっと考えておれは話題を逸らす。

- [ ] 「信仰の有無とかその強さって見たらわかるものなんですか?」

- [ ] 信仰の強い人になればなるほどそういった感覚がするどくなるのだとか。聖女とまで呼ばれる彼女は相当に鋭敏な方なのだろう。そしてその域の人がおれから神を感じない…ってどういう意味だろう。おれは神の存在を否定したことがない。地球のなりたちとか生物に意識が宿る謎とか。

- [ ] 「お伺いしたいのですが、私は神の存在を否定したことはないのですが、私の中に神が存在しないというのはどう意味なのでしょうか?」

- [ ] マリアは一瞬だけ考え、なにかが腑に落ちたようなスッキリとした表情になる。

- [ ] 「そういうことでしたか…!あなた様こそ神の遣わした迷える子羊!おそれながら、このわたくしにあなた様を導かさせてくださいませ!」

- [ ] 逆に意味のわからなくなったおれにマイが耳打ちしてくる。

- [ ] 「存在を肯定することと信仰の対象とすることは別物かと」

- [ ] 自分の思考が少し会話と噛み合ってなかったことを理解する。そしてマリアがこんな発言をするに至った経緯?については彼女自身の口からでてきた。

- [ ] 「その身に神の愛を宿しながらも教えを説くものが今まで現れなかったのですね…。お辛かったでしょうに…。」

- [ ] 彼女は涙ぐみながら憐れむようにおれの顔をじっと見つめ、「これからはわたくしどもがついております。」とおれの膝の上に置いてある手のうえに自らの手をそっと重ねてきて瞬間静電気がはしる。

- [ ] 痛っと思いつつ静電気って実際は痛くないのになぜか痛いって感じちゃうよねと無駄なことを考えていると、今度はマリアの顔が驚愕に染まっている。

- [ ] するとおれの後方、マイがこぼす。

- [ ] 「抵抗させていただきました。」

- [ ] 「バカな…!教会内で聖女様の力に抵抗するだと!?」

- [ ] マリアの付き人の1人がそう言ってマリアを守るように身構えるがおれには訳がわからなさすぎて、とりあえず状況的にはなんか害されそうになったのをマイが庇ってくれたようだと辛うじて察する。

- [ ] その間に相手の付き人のもう片方がソファを飛び越えその勢いでマイに蹴り足をのばす。

- [ ] 間合いを正確に捉え紙一重でかわしたマイは勢いを殺さず返す体で繰り出された裏拳をとり腕を極めにかかるが、相手はそれにあわせて同方向に体を自ら動かし、腕力でマイを振り払うように手を離させると打撃戦がはじまる。マイは待ちの姿勢を崩さず全ての突きと蹴りを受けながら相手の各部位を破壊したため3手ほどでで相手がひるみ、すかさず顎に鋭いフック。KOする。

- [ ] 1分もない攻防だがおれはそれを見ていたわけじゃなくてもう1人の男との取っ組み合いに必死になっている。力ではややおれが劣るがそれでもおれは負ける気はない。急展開のケンカについていけず2、3発後れをとったもののおかげで脳が切り替わる。ケンカは勢いだ。ソファの上でマウントをとられてはいるがその足場の狭さから比較的抜け出しやすく、おれは転がり落ちるように回転しながら抜け出す。流石に相手はそれで体を崩してはくれなかったが、おれは背中がごっちんと床にぶつかるのとほぼ同時に何も考えず両脚を天井に向かって蹴りあげると、おれを踏み潰そうとしていた足とごっつんこし今度こそ相手の体を崩すことに成功する。すかさず背中を丸め床と背中のみで接触し滑らせながら相手の重心の足を引っ張ってこかし、マウントポジションをとり相手の鼻をぺしゃんこにするつもりで殴打を繰り返す。興奮で頭の中が白くなっているおれにマイの声がかかって思考を再開する。

- [ ] 「もう意識はないかと思われます。素晴らしいお手並みです。」

- [ ] おれはアツくなっていた自分を恥じながら手をとめ、だれにともなくごめんとあやまる。

- [ ] マイはマリアを逃してなんてなくて視線と間合いでしっかり縫い止めている。興奮冷めやらぬおれとは違って息なんてきれてないし冷静でもあるようだ。

- [ ] 「ご主人様に精神系の法術を使おうとしましたね」

- [ ] 問うというより事実を認めさせるといった口調だ。

- [ ] 視線を伏せながら悔しそうにマリアが答える。

- [ ] 「その事実は認めます…。しかし害する意図はありませんでした。武力行使も部下の先走りです…申し訳ありませんでした。」

- [ ] 少なくとも直接は害する意図のない精神系ということは眠らせるなんてことは意味が無いだろうから洗脳系ってことだろうかと察した様子のおれの様子を伺ってマリアが続ける。

- [ ] 「し、信仰のためなのです!異端…無神論者の方に円滑に教えを説くためには最大の近道なのです!初対面で取り返しのつかない無礼を働いてしまいましたし(小声)…!十分に神の教えをご理解いただいた後に術は解除するつもりでした…」

- [ ] やり方が過激だ。まあ後がない気持ちだったのだろうが。しかしそこまでしておれを引き入れたい理由とはなんだ?転移前に特別な異能などをもらったりはしてはいないハズだが何がそんなに魅力的なんだ?何か焦っているのか?それを聞こうとすると増援が到着したみたいで慌ただしく6人が入ってきて揃って両手を胸の前で構えている。

- [ ] ヤバいかもしれない。

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