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何者かになろう!  作者: どじょうすくいのどじょう
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立ち上がって辺りを見渡しながらおれはおれの体の違和感のなさに気づく。たぶん身長も体重も手足の長さもかわっていないのだろう。きっと顔も一緒だ。服も簡単な半袖シャツに長ズボン。麻でできているのだろうが実のところは知らないし、着心地も悪くなさそうなのでどうでもいいことだ。靴は何かの皮?っぽいがこちらも高級感があるわけではないしおそらくこの世界で一般的なものなのだろう。一般異世界転移者Aって感じだ。特に考えもなく適当な方向に少し歩くと明らかに人の手がはいっている道が見えてツイてるなんて思ってたら整備された道までの傾斜にうっかり足をとられて両手を地面についてる。1番驚いたのは地面のとなりに筋骨隆々の動物ーー見上げると馬がいて割と顔面を蹴飛ばされそうな距離まできていたことだ。

「あぶねーな」

と声がしておれはびっくりして硬直していた体をおこすと馬は馬車をひいていて御者がおりていることに気づく。頭頂部の眩しい苦労の多そうな中年だ。

「お怪我はございませんか?」

少し心配そうな申し訳なさそうな顔で聞いてくるが申し訳ないのはこっちで一方的に非があるので謝罪する。

「ご迷惑おかけして申し訳ありません。不注意でした。」

頭を下げると慌てた様にイエイエ早めに気付けてよかったですーと言い、愛想笑い。なんてしていると馬車には人がのっていたみたいでその男が窓から顔をだす。

「何事だ?事件か?」

なぜか嬉しそうで少し声も弾んでいるのが怖い。道の脇によけて立ったおれと目が合うとおれは申し訳なくて頭を下げるのだがたぶん相手は意に介してなくってその証拠に早足で寄ってくる音がする。

両手で肩を強く掴まれやや強引に顔をあげさせられたおれは掴まれた肩からなにか強い感情を感じてやっぱ殴られるのかなーとか1、2発は殴られてもしょうがないよなと思い歯を食いしばり相手を見据えると満面の笑みが広がっていてさらに怖くなる。

「無事そうだな!怪我はないね?いやーよかったよかった!」

恰幅のよい体躯に厳しい顔、背もおれより頭一つぶんくらい高いが、目の奥のキラキラとした少年の様な輝きが落ち着いた色のローブをはじめとした飾らない金持ちみたいな上品な身なりも相まって凄まじい変人っぽさをかんじる。

「ご心配ありがとうございます。ご迷惑おかけしてしまい申し訳ありませんでした。」

「私はジョニー!ここであったのも何かの縁だ!少し話をしないか?君の名前をおしえてもらってもいいかな?ああいや仕事中とかなにかやり途中のことがあるなら後回しにしてもらっても構わないよ。というかそういうものがあるなら私が手伝ってもいいな!その方がはやく終わらせられるしお互いにとって都合がいいだろう?なんにせよ立ち話もなんだし馬車にのらないかい!?」

距離の詰め方と勢いと異常な親身さからますます恐怖心をつのらせているおれに気づいたのか御者がジョニーと名乗った男を諌める。

「旦那様、ゆっくりひとつひとつ説明いたしませんと、怖がらせてしまうかもしれませんよ。……名乗りが遅くなり申し訳ありません。わたくしはジョニーの使用人をしております、キースと申します。いきなりでまことに恐縮なのですが、旦那様がお話しをたいみたいでして、ご都合がよろしければ場を設けさせていただきたいのですが…いかがでしょうか?」

目線をおれに移して丁寧なあいさつとともにこちらをうかがってくる。その横ではウンウンとジョニーが眩しいくらいの瞳の輝きでもって大きくうなずいていて、なるほど苦労が多そうな仕事だなと思う。

「こちらこそ、名乗るのが遅れてしまい申し訳ありません。ジョージと申します。恥ずかしい話ですが私自身私の現状が把握できておらず、時間を持て余して途方にくれていた身でして、ご提案ありがたく感じていたところです。」

本当はじょうじなんだけどなんとなく雰囲気に合わせてジョージと名乗る。記憶喪失でもないのにこんな場所にいて右も左もわからないなんて言ったらやべーやつと思われるだろうが、ジョニー相手には無用の心配と判断し、素直に打ち明けた。

「おお…!それは大変だったな。よし、とにかくそうと決まったら馬車にのってくれ!屋敷まで移動しながら話を聞かせてくれないか?」

無意識で徘徊して見知らぬ土地まできた記憶どころか常識すらトんでしまった家なしのやべーやつだと思われませんように。

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