4 インパクト
四谷さんと伍井さんの視線が、私にプレッシャーを与えてくる。
うう。こんな風に改まって名前を呼ぶなんて、恥ずかしいんですけれど。
でもこのまま二人のおもちゃにされっぱなしも困るし、背に腹は代えられないか……、もぉぉ~!
「か、かりん……? ま、まりん……?」
私は花林と茉鈴の顔を交互に見て言った。無駄に勇気を出して言ってやりましたよっ。
それなのに二人は「ぷっ」と息を吹き出して、それからお腹を抱えてケラケラと笑い始めた。
「もう! からかわないでよ!」
うう。顔が熱い。
というか、もっとこう……高校生らしく爽やかにさぁ、友情を育んだ後とかにあったと思うんだ。名前を呼び合うような、自然なタイミングが。
「はい、では続けますよ。次は三波凜々花さんの番ですね……三波凜々花さん? 指銜えていないで始めますよ?」
「……わかりましたわ」
私たちの茶番を羨ましそうに見ていた三波さんだったけれど、シャトルが上がった途端、目の色を変えた。
「やあですのっ!」
凄まじいインパクト音の後、三波さんの長い腕から放たれたスマッシュは、物凄い速度でネットを通過した。そしてその打球は、コートの脇で見ていた私たちの前髪を巻き上げて、シャトルケースを貫く。
「ええっ⁉ 貫いちゃったの⁉」
私が呆然とする中、反射させた眼鏡をくい上げする二葉さんと、「見てウケるよ~」と、好奇心いっぱいに瞳を輝かせながら駆け戻ってくる花林と茉鈴の姿が。
その二人から受け取ったケースに開く穴を見て、私はまた慄いてしまう。
「本当に射貫かれてる……」
「当然ですの!」
そう言って、お嬢さまは得意気に鼻を高くするのでした。