4 続あやみ・みどりペアと最初の勝ち星
ネット際に落としたシャトルを、相手選手が体勢を崩しながらバックハンドで振り上げる。ストレートに飛んでいった。
「お願いしますっ」
右サイドに構えていた美鳥が、コート奥深くに伸びたそのロブを見送って前に出る。
同じように左サイドにいた私は、反応し切れなかった美鳥のフォローに回った。
弾道が高かったので助かった。余裕はないけれど、素早く右奥へ移動して、下降してきていたシャトルを叩いた。
パァン!
あまり速さが出なかった。しかもネット際でロブを上げた相手選手は、既に体勢を立て直している。立ち位置もネットから離れていて、しっかりと返球に備えていた。バックハンドでレシーブされてしまう。
――でも。
パァァン!
私はさらにシャトルを叩く。今度は速い。だから拾われてしまう。当たれば返ってしまうのも、速さがあるゆえだ。
けれど意図しなければ飛距離は伸びないし、甘く浮くもの。
もらった!
勢いを殺さないまま前進していくと、美鳥が左に捌けて私に道を作る。前方に飛び込んでいく私と交差し、美鳥は後方へと流れていった。
私はもう一度、シャトルを叩く。
「イン。ポイント11‐4」
スマッシュが決まった。
21‐13でファーストゲームを取って、セカンドゲームもいい感じだ。少しプレッシャーに弱い美鳥も、特に気負うことなくゲームが進められていると思う。
「綾、ナイスショー!」
「うん!」
そうして二人で頷き合いながら、喜びを噛みしめていた時だった。
「2対0で三波さんの勝ちです」
ふぁっ、勝ち⁉ しかも、もう勝ったの⁉
と言うか、ストレート勝ちって凄っ。
思わず私は、二度見した。隣のコートでシングルスをしていた凜々花が、涼しげな表情でスコアボードにサインをしている。
あっ、こっち見た。凜々花嬉しそう……!
凜々花は瞳を揺らして喜びのオーラを放つと、私たちに向かってピースをする。
私たちは水分補給をする対戦相手たちの目を盗んで、よくやったと言わんばかりに親指を立てたり、凄い凄いと拍手するフリをして凜々花を褒め称えた。
わぁぁ、凜々花やったね! 睦高で最初の勝ち星じゃん!
凜々花の勝利にこっちまで気持ちが昂ってくる。
隣にいる美鳥も一緒のようで、二人で見つめ合って士気を高めた。
そして凜々花の試合の後は、いよいよこの二人の出番だ。
「んじゃ、よろしくね茉鈴」
「おっけー花林」