1 捨てる神あれば拾う神あり?
「綾海っ。もうあんたとは、コンビ解消よ!」
そう言って親友は、私を置いてバドミントンコートを去って行った。
はあ⁉ あんたでしょうが、恋に現を抜かしているのは!
ちょっと何が、部内恋愛禁止だからねー、なのよ!
馬鹿らしくて、悔しくて、情けない涙が出た。
中学最後の春。三年間ずっと一緒にダブルスを組んでいた親友に、私は突然フラれた。
理由はシンプル、且つゴミ。親友が密かに恋をしていた同じ部の男子が、私に告白をしてきたからだ。
そりゃあ私は……そういうのに疎くて、どっちの気持ちにも気付けなかったけれど……。
でもだからって、これまで切磋琢磨してきた、あの時間は何だったの⁉
私たちって……仲良しコンビじゃなかったの……?
もうっ、恋の馬鹿やろーーーー!!
「――ふぁ⁉」
悪夢から目覚めて我に返る。叫び声を聞いたと思われるクラスメイトたちの視線が集まり、私は顔を赤面させた。
「登校初日から居眠り、そして馬鹿やろう発言とは、なかなかのメンタルをお持ちなんですね一ノ瀬綾海さん」
「あ、あなたは二葉さん⁉」
「ええそうです」と、目を眇めながら眼鏡をくい上げする彼女は、同じクラスの二葉美鳥さん。
おでこを見せるように前髪を留めたロングストレートと眼鏡。そしてEカップが特徴のようだ。
彼女は、この睦月高等学校を首席入学した子らしい。式で生徒代表を務めていたから、それで知っている。
ん~成績トップって言っても、どうなんだろ? 睦高は偏差値が低いからなぁ。
「ねぇ。あなたは中学の時、バドミントン部だったのでしょう? どうしてこの学校に来たのですか?」
「え? ああまぁ、い、色々あって……。それよりも、なんでそれを?」
「私もバドミントン部だったからです。はぁ、私の悪い癖ですね。少し高みを目指し過ぎたようで、うっかりバド部がない高校に進学いたしました……」
つまり志望校に落ちたのね。
二葉さんは眼鏡をくい上げして凛と表情を正すと、とんでもないことを言い出した。
「さあ、一ノ瀬綾海さん。今から私たちで、新たにバドミントン部を立ち上げますよ?」
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