#35 WE ARE BATTLE SUB-MARINE
「肩書って・・・、よくそんな単語知っているンだな」
「父上から教えられたけれど――って、それよりも! なんで、私を知っているの⁉私を知るのは、限られた重鎮や侍女しか居ないのに!」
おいおい、この国の皇女が誰か知らない国民が憐れやン!
心の中で静かにツッコミを入れた後、「俺達は特殊作戦傭兵部隊《S,O,M,F,》だからさ、それに・・・。相手が望むなら俺達は味方になる存在だから」と困惑しているナハ・ムサシノ・ヤマトにほほ笑んだ。
〔上限突破〕のモードを切り替えて筋力突破にした後、軽々と瓦礫を3つほど退かすと桃色の髪色をした女性が横たわっていた。
「――あ、おねえちゃん!」
「ぅん・・・。 ナハ・・・? 嗚呼、良かった・・・」
頭から流血させながらも近寄って行ったナハ皇女を抱き寄せて喜びあっていたが、傍にいる俺を見た女性はナハを守ろうと身構えた。
「ッ、待って!」
「な、ナハ・・・?」
「この人が、お姉ちゃんを助けてくれたンだよ! 恩人だよ!」
「――じゃ、じゃあ・・・、俺はこれで」
爵位なんか要らない、お礼も要らない。要るのは感謝だけだ、たった5文字の言葉だけで構わない。それが俺達――特殊作戦傭兵部隊《S,O,M,F,》の訓示だ。
だから、足早に2人の元を去ろうとしたがナハがしがみ付いて来た。そして上目遣いで「なんで、逃げるの? 一緒に居てよ」と聞いて来た。
上目遣いは反則だ・・・。
○○〇
ナハの上目遣いの後、再び気を失い気絶したイズ・ムサシノ・ヤマト第一皇女を心配したので艦内救護所への護送という役目になって居るオスプレイが来るまで傍に居続ける事になった。その際にスキルを解除して、元に戻っておいた。
「ただいま・・・って言いたかったけれど、今はそういう時じゃないような雰囲気が漂っているな。 レイ、何があった?」
発令所に入るとすぐに、真剣な空気が身体に当たって来た。
「お帰りなさい、艦長。 レヴェルが数分前に謎の推進音を補足したらしいのですが・・・」
そう言いながら録音しておいた音声を、発令所内に響くように再生した。
「・・・確かに、推進音だな。レヴェル、位置は?」
「4時方向、距離は3万5千キロメートル先です」
「そうか・・・。レイ、メシアを呼んできてくれ」
「了解」
5分後、メシア・ナームスを連れて発令所に戻って来たレイクッド・ディルスを見たノヴェラスは早速、例の音声をメシアに聞かせた。
「これは・・・、おそらく“ころらど”と呼ばれる戦艦の推進音に似ていますね。 アキラ・ムラサメが生きていて、何処かの国に逃げるつもりで使う予定だった艦ですね」
「コロラド・・・、という事は――クソッ! 最悪だ。この艦の主砲は36口径30・8センチ連装両用砲塔なのに対して向こうは40・6センチ連装砲塔だから力不足だ」
「待って下さい、艦長。向こうにはない武器で戦えます!」
ノーヴァが自信満々に意見具申してきたが、ノヴェラスは「なんだ? 衝突をしろという事か? 狂っている・・・」と否定した。
「はぁ・・・。 そうでは無いです、魚雷があるじゃないですか」
「あ・・・」
ノヴェラス以外、メシアもジト目で俺を見ている。穴が有ったら入りたい・・・。
「――3番と4番に、水素魚雷の緊急装填は済ましていますよ」
「そ、そうか。 分かった」
気を取り直して、すぐに各員に指示を飛ばし始めた。
「総員、対水上――対艦戦闘用意!」
「アイ・マム! 魚雷戦用意」
「艦内に通達、対艦戦闘。配置に付け」
「対艦戦闘、用意‼」
発令所内にベルが鳴り響くと同時に、常時点灯している白色灯が対艦戦闘を知らせる群青色の室内灯へ一斉に変わった。
「2番に音響魚雷を装填後、3番発射!」
「――2番装填完了! 3番、発射!」
ノヴェラスが言い終わる前にノーヴァが被せて言ったので、引き続きノヴェラスは指示を出し始めた。
「2番、発射始め」
「――2番発射!」
「4番、有線誘導に切り替えろ。 その後、7番と8番に魔導式魚雷を装填次第、7番と8番を順次発射!」
「――7番、8番。発射完了!」
鬼畜を超える量の指示に必死に食らいついた挙句、発射完了と叫んだノーヴァは凄いと思う。
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