#30 密命執行
それからカトリーナからノヴェラスにインカムが入ったので、尋問をネルスに任せて近くの茂みでインカムをしていた。
『――え⁉ マジですか⁈』
ここまでわかった事を、聞いたカトリーナは声を上げて驚いていた。
「ああ。 本人は知らないと言い張るばかりだ」
『もしかしたら――』
「ん?」
『記憶改竄されているのでは?』
「ああ、なるほど・・・村雨旭が姉に施したのか。 フッ。もしかして、俺達に素性を調べられるのが怖くなったからか?(笑)」
『ええ、それしか思い浮かばないですが・・・』
「――いや、何となくだが納得したよ。 有難う」
『いえ、良かったです。 それで、本題ですが・・・』
「おお、聞かせてくれ」
『はい! まず、ミナズキというのは村雨旭のハンドルネームでは無いかと推測します』
「別の名前・・・、あだ名みたいなものか・・・」
『ええ。 調べた限りでは、ミナズキというヤマト皇国内の家名は無かったです。 それに、村雨旭には確かに姉が存在しますが、今調べている限りでは・・・1年前に失踪していますね。それも、ヤマト皇国内で』
カトリーナが発した失踪という言葉は、ノヴェラスがそれまで考えていた考えに風穴を開けた。
「し、失踪・・・だと?」
『は、はい。 理由としては、村雨旭を護る為に魔物との間に身を投げ出し崖から転落・・・ですね。あれ・・・?』
「失踪で、記憶改竄?そして、村雨旭を護るだと?」
『この理由、何か変ですね』
「ああ、変だな。 どうして、転落して失踪扱いになって居る?死亡扱いではなく」
『それって・・・、あっ!』
「カトリーナ、調べてくれ。必要ならネルスに回線を繋げろ」
『了解!』
インカムを切り茂みから出ると、まだ言い終わって居なかった。
○○〇
「――知らない!」
「それでも、貴女の弟には変わりないンです!」
「・・・あー、ちょっと良いか?」
ネルスが静かに頷いて席を開けたのでそこに座り、「今、俺の仲間が貴女の記憶を探っている。可能性としては、禁忌に触れたために何者かから記憶改竄されたと見ているが・・・。何か、記憶の片隅に残っている光景は無いかな? 例えば、魔術師が何人いてその真ん中に立って居たとか」とゆっくり聞いた。
すると、「・・・記憶・・・?」と何か覚えて居そうな雰囲気になった。
「私は、ニホンから・・・? でも、関係も知らない男の子が隣に・・・。あれ・・・?なんで、忘れたの・・・、私は誰であの子は誰なの・・・?」
来た!僅かでも確かな証拠が!
ネルスに小声で「密命だ、ヤマト皇国を偵察しろ。何かわかり次第、即急にカトリーナに連絡を入れろ」と指示を出した。
「御意」
メシアとノヴェラスだけになったので、増援として『現在、非番の部隊は速やかに指定する場所に増援として来てくれ。 指定場所は、オニノサカだ』と令するとトポス隊がやって来た。
「任務部隊隊長のトポス・エフォーリア、ただいま到着です」
「あれ~? なんでここにカオリ・ムラサメが居るンですぅ?」
「わ、私を、知っている・・・の?」
「え・・・、忘れたの⁉」
驚愕しているトポスに現状を説明すると、涙を流してカオリの肩を優しく叩いた。
「――可哀そうに、記憶改竄させられたなんて・・・」
「ネルス隊には偵察を令している。 トポス、君達は俺とメシアの護衛になってもらう。良いか?いざこざを起こすなよ?」
「はい!」
大丈夫かなぁ、こいつら・・・アディス級潜水艦所属の強襲部隊の中でも任務部隊がヤンキーで例えたら特攻隊長だしなぁ。
つまり、短気という事だ。気に入らなければ、即座に銃をチラつかせて力で制圧しがちだ。
「はぁ~・・・」
トポスが小隊員達に訓示を語っている間、俺はため息が止まらなかった。
○○〇
オニノサカから北に街道を添うように移動していると、関所らしき門が見えて来た。カオリ・ムラサメは護衛対象として付いて来てもらっているが・・・。はっきり言おう、オニノサカから誰かに付けられている気配がする。
「トポス、気づいているか?」
「是。 3名の人が背後から来ている模様」
「気配を殺して接近し、速やかに対処しろ。やむを得ない場合は排除をしろ」
「了」
小声で近くに寄って来たトポスに問いかけると、気づいていたようだ。そのまま指示を出して、メシアにも同様に聞くと「排除《お掃除》の時間ですか?」と聞き返して来たから「いや、トポスに令しておいた。俺達はこのまま進駐を続ける」と返事を返した。
オニノサカ関所から3日後、ヤマト皇国の首都であるヤマトに着いた。




