#28 島風型駆逐艦1番艦島風
「行ったか・・・?」
「――ッ!前方より駆逐艦、接近中!」
聴音手のレヴェル・ノーラの鋭い声と共に、ノヴェラスは水雷長のノーヴァ・ミルスに指示を入れた。
「ノーヴァ!」
「はい! 艦首魚雷戦、準備良し!」
「1番と2番に水素魚雷、緊急装填」
「・・・、準備完了!」
「緊急発射の後、回避行動に入れ!」
「はい!」
「艦首、1番と2番。発射始め!」
「発射!」
「――取舵一杯・・・、急げ!」
発射された水素魚雷2本が駆逐艦の艦首から刺さり、浸水を引き起こさせた。
さらに直撃した事で艦首が破壊された駆逐艦は航行不能となり、脅威から標的になった。
「敵艦、艦首破損により航行不能になった模様!」
「運が付いているぞ、このまま海底に沈めてやれ! 水素魚雷、用意!」
「3番装填、指命!」
呼応するかのようにノーヴァが声を上げたので素早く「発射始め!」と指示を出して、水素魚雷を発射させた。
嘲笑うかのように真っすぐ駆逐艦に向かって行く水素魚雷が、駆逐艦の乗員に発見される事無く駆逐艦の船体に突き刺さりもうどうやっても修理できない機関大破という大戦果を挙げた。
「・・・魚雷命中音を探知」
「航行していません!」
「潜望鏡深度か?今は」
「ええ」
「なら、潜望鏡を上げてくれ」
「はい!」
潜望鏡が上がり海上に出るとすぐに、覗き込んだノヴェラスは「敵駆逐艦の煙突から火が出ている、おそらく・・・機関大破だな」と呟いた。
○○〇
その頃、駆逐艦では賢明な修理が行われていた。そこにアディス級潜水戦艦が発射した水素魚雷が命中し、死傷者が特に機関室周りにあふれた。
「もう駄目だぁ!」
「俺達は、“エルドリア海の怪物”に屠られるンだぁ!」
「――えぇい! 落ち着けえぃ‼たかが“生物”に、恐れる海の男では頼りないぞ!」
黒髭を生やし狼狽えている乗員たちに活を入れた男こそ、島風型駆逐艦1番艦島風の艦長だ。
「しかし、艦長――」
「しかしでは無い‼ 俺達はこの船と共に沈むために生きているのではない!生きて帰るために乗って居るのだぞ? 艦首が破壊されただけで狼狽えるとは、何事か!」
艦長と副艦長が口論をしていると、羊皮紙を持った乗員が「失礼します」と言って艦橋に入って来た。
「――報告します、先ほど水中電探に金属反応を検知しました。 場所はここから約850メートル西です」
「今すぐに、対潜戦闘用意と伝えろ」
「はっ」
笑窪を作り、「さぁ、ミナズキ様が召喚された駆逐艦による潜水艦と呼ばれる“生物”の狩りと行こうじゃあないか!」と冷徹に笑い始めた。




