#14 撃沈と到着
アディス級潜水戦艦が潜航する前にネヴァダとペンシルベニアを特殊融合榴弾《特融榴弾》で航行不能にさせたおかげなのか、潜水艦を補足する時に主に水上艦が使用する能動探知が飛んでこなかった。
「敵艦が見失った模様!」
「――戦術長、魚雷戦用意」
「はい。水雷長、艦首魚雷。1番、2番発射用意!」
「準備完了!」
「・・・航海長、潜望鏡深度まで浮上しろ。 潜望鏡、用意」
「了解、深度10まで浮上した。潜望鏡、準備完了」
ノヴェラスが潜望鏡を覗くと同時に、前面ディスプレイに潜望鏡型の画面が表示された。
「・・・――ッ、敵戦艦を補足。発射、用意・・・」
「指命・・・」
「発射始め」
「発射!」
航行不能に陥っているネヴァダとペンシルベニアに航跡の無い二酸化炭素魚雷2本が無慈悲にも向かってくる中、懸命に機関を復旧させようと頑張っていた機関員たちがいる機関室の装甲帯に命中した。
○○〇
船体が軋む音が艦内を駆け巡った後、機関室は火災と浸水によって重油が広がり完全にお陀仏となった。
『艦長、もう駄目です。 機関室、再炎上中!』
無線から聞こえてくるネヴァダ機関室の泣き叫びながら神に助けを求める声が聞こえてくる中、艦橋では「艦長。右舷が傾き始めました、ここまでのようです」という話がネヴァダ艦長の副艦長から上がって来ていた。
「クソッ!エルドリア海の“鉄鯨”を狩ってこようと言いだしたアイツに逆らいたくはないが・・・、ええい‼もうこの際、どうでも良いわい! 伝令!総員、退艦‼ペンシルベニアにも指示しろ」
「はっ」
直ぐに退艦命令を出したおかげなのか、死傷者をあまり出さずに全員生存という奇跡をだした。救命艇からペンシルベニアの方を見たネヴァダ艦長は、ペンシルベニアの救命艇が無い事に気が付いた。
「ペンシルベニアの生存者は、居ないのか!?」
「確認できません・・・。恐らく・・・、艦と命を共にしたかと――」
「クソったれぇー‼」
洋上で沈んで行くネヴァダとペンシルベニアを交互に見つめていた彼らはやがてペンシルベニアの影に隠れていた救命艇を見つけた。
「・・・あ――おい、見ろ! 救命艇だ!」
「38という数字は・・・! 艦長! 無事です、ペンシルベニア乗員の生存を確認‼」
双眼鏡で救命艇の舷側に描かれている数字を見た乗員の1人がネヴァダ艦長の肩を叩いて喜んだ声を挙げていた傍にアディス級潜水戦艦の潜望鏡が灯台下暗し的な感じで海上にでていた。
「・・・。 フッ、ネヴァダとペンシルベニアの乗員は無事みたいだぞ。諸君」
「救命艇も沈めますか?」
「いや、止めておけ。 俺達の貿易同盟国《エウランド皇国》を敗戦させた報復は、復習という形で摘み取るぞ」
「了解です」
その後、艦長のノヴェラスは「進路2-1-5、両舷増速」という指示を航海長と機関長に出した。
○○〇
あれから一切出会う事なく、ナームス傭兵国沖に到着した。
「陸地を補足、ナームス傭兵国ナレール港です」
「レイ」
「はい?」
「偵察部隊隊長と任務部隊隊長を呼んできてくれるか?」
「了解」
レイクッドが呼び行くと同時にノヴェラスは「緩浮上、深度0へ。砲術長、海面に出てすぐに砲撃をしろ」と言って、アディス級潜水戦艦を浮上させた。
「緩浮上、ベント開け。 現在深度10」
「主砲用意、目標。 ナームス傭兵国ナレール港!」
「・・・諸元入力――照準良し、指命!」
レイクッドと共に発令所にやって来たネルスとトポスの気配を感じたノヴェラスは、「浮上完了!」という航海長の声に被さるように砲撃を指示した。
「主砲、全砲門。 撃ち方、始めぇ」
「――撃ち方、始め!」
42・8口径65センチ3連装主砲塔3基から9発の主砲弾が、ナレール港に向けて飛び始めたときナレール港に停泊していた漁船や敵駆逐艦などに降り始めた。
着弾した砲弾は桟橋や造船岸などを、次々と機能停止や破壊し始めた。




