#09 カミカゼ・ストライク
『永遠の0』に感化されている人はワタシです。
レーダーチャートを見ていたデゥーフが、アリゾナの沈下中も逐一と敵の状況を知らせてくれていた。
「――敵艦隊、敗走していくよ!」
“敗走”という言葉で、発令所内の空気が一瞬だけ和んだ。
しかし、ノヴェラスはルドゥリアに砲撃指示を出した。
「弾種、切り替え!」
「――は、はい!イ、誘導式徹甲弾、切り替えた!」
「誘導先は、BB-36とBB-37、BB-38だ!」
「射撃照準、整った!」
「痛いのを教えてやれ‼」
「全主砲、撃ち方始め‼」
誘導式徹甲弾は、信管起爆と同時に誘導装置が作動して誘導先に指定された物や人に必ず当たる主砲弾だ。音速以下の亜音速で飛翔し、外した物は無いというぐらいの百発百中の精度を持つ。
誘導指示が入力された徹甲弾は、目標にレーダー照準して捕え続け着弾するまで飛翔を続ける。そして、最初に着弾したのはネヴァダ級戦艦2番艦のBB-37オクラホマだった。防核装甲帯を貫通した直後、2番砲塔直下にある弾薬庫で信管が作動し火花が散ると保管されていた砲弾に引火してあっという間に艦内を火の海にした。
「――BB-37、オクラホマに2発命中。火災発生3カ所を視認!続いて、不発命中弾4発‼」
そのまま射程外という欺瞞を取ると、惑わされたBB-36ネヴァダとBB-38ペンシルベニアは敗走を続けて逃げて行った。炎上しているオクラホマの方を見ると、艦首から順に沈んで行っている状態だった。
「ネヴァダ級オクラホマの撃沈を確認!」
ちなみに、BB-○○というこの“BB”という意味はアメリカ海軍が艦種を分ける時に使う手法でBATTLESHIPという頭文字のBをただ重ねただけだ。その理論で言うと、駆逐艦《DESTROYER》はDDという表記になる。
そう、多分だが・・・皆さんが思う通り、『海自の護衛艦は?』と考えるだろう。護衛艦もアメリカからしてみれば駆逐艦の部類に入るのだが、例であげるとDDGはミサイル駆逐艦となり表記を略せずに表すとGUIDED MISSILE DESTROYERになる。
おわかり・・・?
○○〇
話が逸れたが・・・、まぁ。いいとしよう・・・。
沈んで行くオクラホマの周りに生存者であろう乗員たちを見殺しにする戦艦群もどうかと思うが・・・、これが戦争の残酷な現状だ。それに、ここに戦艦が居るという事は、エウランド皇国沖はナームス傭兵国領域になって居るという事だ。僅か2年で・・・?
主砲を畳みオクラホマの乗員たちをネルスやフレッチャーの元乗員たちと一緒に救助していると、インカムからデゥーフの声が聞こえて来た。
『――艦尾から、敵機飛来!・・・ッ、金属反応有り‼』
「対空砲火始め!多分、攻撃機だ‼」
艦中央部にある昇降式のボフォース40ミリ4連装機関砲12基48門と25ミリ連装機関銃12基24挺が一斉に上がり、弾幕を張り始めた。
『当たらない!当たらない‼』
「クソッ・・・、カミカゼの真似事をしやがって!」
そのうちに主砲塔上部に備え付けている近接防御火器《CIWS》3基が一斉に反応して火を噴き始めたが、遅かった・・・。敵機は被弾すると同時に艦直上に舞い上がりほぼ直角の状態で洋上用司令塔に激突した。
俺は見た、その機体翼に描かれている国旗を。太陽のような日の丸・・・、零戦だ。太陽を背に、勇気ある突撃だった。このパイロットは、良い腕の持ち主だ。
俺は激突する少し前に操縦士と目が合った、そいつは悪魔のような笑みで微笑んでいた。微笑みながら、突撃したのだ。
ただ、一つ言えるのは。そいつと目があった時、読唇術で「くたばれ、“鉄鯨”」と言っていた。
零戦:零式艦上戦闘機の略




