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第一話
ひょんなことから助けた人間が、人間だった猫がいた。
「あのなぁ。お前にはお前の帰る場所があるだろう」
「私は猫さんといたい」
いくらか背丈が伸びて嵌め込まれた意志の強い青色の瞳に覗き込まれじろいだのを隠すように視線を逸らした。
「お前は今楽になりたいだけだ」
ガキが猫になったならばそれは人間がひとり消えたことになるかもしれない。
「帰れ。お前は俺をお尋ね者にする気か」
猫と人間では生き筋が変わってくる。
健康的に艶めく髪や肌から見ても彼女には帰る場所があるはずだ。
人間が猫になる話なんて聞いた覚えがない。
もっとはやく突き放せばよかったと後悔していた。