友達
陰鬱な気分で過ごしていると隣から声がかかった。
「萌恵ちゃん、なんか顔色悪いけど大丈夫?
ほらこの後おいしいものでも食べに行こう」
不安げにこちらを心配顔でこちらに話しかけてくるのは私の友達の禰寝 花だ。
花は簡単に説明するとすればかわいらしくまさしく花のような少女だ。
クラス全体でも好かれ、多くの友人がいる。
そして何よりも嘘をつかない。
「うん、大丈夫。
ちょっと気分悪くて、気にしないでもいいよ…」
「気にするよ!!
あんまり無理しないで、一緒に保健室いこう?
私保健委員だから任せてよ!」
「うん。ありがとう。」
とても心が洗われる様だ。
自分を心配してくれる顔、その声、全てうそではないと安心できる。
「え~マジ?大丈夫? アタシも一緒についていこうか?」
「いや、いいよ松岡さん。
ありがとう。」
こちらを心配しているように見せかけて、全く心配していない。
思っていることまではわからないが、付き添いで授業を休めたらという魂胆が見え透いている。
そもそも松尾さんとはあまり付き合いがないのだ。
顔がゆがむのを必死に抑える。松尾さんに何を思われてもかまわないが、花に嫌われたくはない。
「それじゃあ、行こう?肩貸すよ?
松岡ちゃんもありがとう。私が連れて行くから安心して!」
「え~。花が連れて行くから不安なんだけど…。
ほんとに大丈夫?よく迷子になってるじゃん。」
「大丈夫だよ!!私だってさすがに学校で迷子にならないよ!
保健委員の私に任せて!」
胸をドンと叩いて宣言する花、大きな胸が揺れ周りの男子の視線が集まる。
それに刺さる女子の冷ややかな視線。やっぱり花はクラスの中心人物であると再確認した。
「ごめん花。それじゃ、案内お願い。跡形も貸してくれると嬉しいな。」
「あぁ!!ごめん萌恵ちゃん、待たせちゃった。一緒に行こう。」
花に肩を貸してもらいながら、クラスの扉をくぐる。
今すぐこの真っ赤な嘘で染まる教室から出たいその一心だ。