案内人の水崎
一つのお話で原稿用紙二枚程度しか書く能力がないのですが、時間をかけて長いお話を書いてみようと思います。
数十年かけて、死ぬまでに完結すればいい。
そう思っています。
初めまして、この本の案内人をいたします水崎と申します。
この本に登場することはほとんどないのですが、書き手に「話の区切りがわかりやすくなるから居て欲しい」と言われたので、これからお読みになるお話の合間に案内人として登場することになりました。
この本は行方不明になった男性三人のお話です。三人まとめて書くのではなく、それぞれ一人ずつに話を分けて書いています。
それぞれの職業は、学生、フリーター、会社員で全員成人しています。
私の職業は案内人です。
小さい字のまとまった細い文章の案内をしています。
性別は男です。
書き手が「女の子ともう二年近くまともにしゃべってないから話しかけ方がわからない」と言っていました。
それもそのはず、書き手はマンションで人とすれ違っても挨拶もせず早足で通り過ぎてしまうほどの無愛想で、趣味は作文と写真撮影。同世代の人間と気の合わないものばかりです。
試しに音楽の話をさせてみても、生まれる前の音楽ばかりで、気の合いそうな話題を出してみても、よくわからない答えが返ってきます。
少し他人のことをしゃべりすぎたでしょうか。これほどの変わり者には初めて会いました。この仕事も嫌嫌引き受けたのです。
さて、これから紹介するのは、秋真っ只中、恋人に別れを告げられた男子学生のお話です。
ここに若い男がいる。
彼らはどこにいたのだろう。