002 接射しないと衝撃波
翌日、ギルド長から呼び出されギルドへ。
「ギルド長がお待ちです。こちらへ」
受付の子の後ろについていく。
「この部屋です、どうぞ」
部屋の中へ。
「お待たせしました」
「来たか、ベリス」
「昨日はご苦労さん。俺の留守中にやばいのが来たようだな。お前のおかげで助かったよ」
「ハハ、いや」
この人はギルド長のブッチさん。このギルドで一番偉い人だ。しかも強い。
「……」
部屋の中にはギルド長の他にもう1人居た。
金髪にツインテール、耳が長いな。彼女はエルフかな?
「この方は?」
「エルフ族のヘラさんだ」
「ヘラです。よろしく」
「ベリスです」
「えーっと、順を追って説明する」
コホンと1つ咳払いをし、ギルド長は話を始めた。
「昨日この街を襲ってきたドラゴンは「エクストリームドラゴン」と言って、エルフ族が長年封印し続けてきた激強ドラゴンだったらしい」
「確かに強かったですね」
「それでヘラさんはそのドラゴンの件でこちらまで出向いたんだけど、そのドラゴンは退治された後だった、というわけだ」
「逃げるように指示しようと思ってきたんだ。エルフ最強の私でも勝てないからね」
「だから未だに信じられないわ。あのドラゴンを人間が片付けてしまうなんて。1体で世界を滅ぼす力を持っているほど強力なドラゴンなんだけど」
「はっはっは、ウチはツワモノ揃いなんですよ。昨日は出払っていて人があまり居なかったけど」
「それでこの後は調査に切り替えるという話でな。昨日アイツをどうやって倒したか、現場で彼女に説明してやってくれ」
「わかりました」
「それから彼女がこの街にいる間はボディーガードをしてやってくれ」
「よろしくね」
「はい」
「ああ、普通の話し方にして」
「了解」
「じゃあ早速現場へ」
ギルドから出て昨日ドラゴンと戦った場所へ。
「ここね」
「説明する」
昨日のここで起きたことを話した。
「うーん」
「嘘は言ってないよね?」
「もちろん」
「そうね、嘘ついてもしょうがないし。しかしそんな戦い方で」
「俺の戦い方はちょっと特殊なんだ」
「ふむ。まあ、私も似たようなものだしね」
「?」
「わかったわ。となると」
腕を組んで目をつむりながら何やら考え事をしている様子のヘラ。
「うん、そうね」
「一度ギルドに戻りましょ」
先程の部屋へ。ギルド長が来たところでヘラが話を始めた。
「実はもう2体、似たようなやつがエルフの集落の近くにいるの。その討伐に力を貸してもらいたい」
「そうかぁ。強さは?」
「同じくらいかな。あ、一匹はドラゴンよりちょっと強いかも」
「どする? ベリス」
「行きますよ」
「ありがたい!」
「まあ、ベリス1人で大丈夫そうかな。俺はちと忙しいし」
「構いませんよ」
「それじゃ頼むよ、ベリス」
とんとん拍子に話が進み、俺がエルフの集落へいくことに。
「出発は明日にしよう」
「了解」
翌日。
「行こうか」
「ああ」
二人でエルフの集落へ。
「歩きで夕方くらいにはつくかな」
「ここから近いよな」
「集落から一番近い人の街だからね」
数時間歩いたところで森が燃やされていたり地面がえぐれていたりと、壮絶な場所を見つける。
「こいつはひどい。これもアイツの仕業か」
「あ、いやこれは」
「?」
「まあ、いいかな。これから一緒に戦うわけだし隠すのも変だし」
「この地面をえぐったのは私なんだ」
「ほほぉ」
「私が持っているこの弓は特殊でね。放った矢が目標にたどり着くまで強大な衝撃波を放ちながら進むのよ」
「変わった弓だな」
「だから基本接射で使うことに。おかげで俊敏さは鍛えられたわ」
「はは、俺は肉体を鍛えたよ」
「そのようね」
なるほど、彼女も俺と同じような悩みを持っていたんだな。
それからさらに半日ほど歩いた。
「お、見えてきた」
エルフの集落に到着。
「おや」
家が木にくっついている。
「変わった家だな」
「エルフの集落は初めて?」
「ああ。そういや来たことがないな」
「いいところよ。暇な時においで」
「そうだな」
「それじゃこのまま長のところへ行きましょ」
「わかった」
ヘラの後をついていく。ほどなくして一際大きな木が眼前に。
「ほー、でっかい木だな」
「ここが長の家よ」
「へー、空洞になっているところに住んでいるのか」
大木の中へ。
中には老齢のエルフが1人居た。彼はヘラの姿を見るとすぐさまこちらへ近づいてきた。
「ただいま帰りました」
「早い帰還だな。エクストリームドラゴンはどうなった?」
「討伐されてました」
「ええっ!?」
「彼が退治してくれた方です」
「はじめまして、ベリスです」
「ど、どうも。長のサンスです」