001 筋肉受け接射
「依頼を終わらせてきた」
「お疲れさまです、ベリス様」
俺の名はベリス、冒険者だ。主にギルドから仕事をもらい、日々生きる賃金を稼いでいる。
「『ロックリザード討伐 10体』ですね」
今回は魔物退治。魔物とは人に襲いかかってくる化物たちの総称。
「ロックリザードの角だ」
「ドサッ」
「証拠物件ですね。1、2……10。はい確かに」
「これは報酬です」
「ありがとう」
報酬を受け取り、空いていてるテーブルにつく。
「おう、ベリス。今日も好調だな」
俺に声をかけてきたのは、この街1番のベテラン、ドンさん。
「おかげさまで。そっちはどうです?」
「ライのやつが怪我しちまってな、大騒ぎだった。幸い大怪我ではなかったからよかったが」
ドンさんは回復術士でよく若い冒険者の面倒を見ている。
「大変でしたね」
「ところで、お前はまだ「魔銃使い」を続けていくのか?」
魔銃使い。魔力を用いて、魔弾と呼ばれる魔力で出来た小型の飛翔体を高速で発射する道具を使う者。
「この武器でいく予定です」
子供の頃、魔銃を見た時に一目惚れ。以降、将来魔銃で戦う冒険者になろうと、修練を積み重ねてきた。
「……そうか。まあ、できれば他のクラスにしたほうがいいとは思うが、人それぞれ好みがある。無理にクラスを変えても長続きしなかったりするしな」
「はい」
「クラスを変えたくなったらいつでも相談にのるからな」
「はい」
ドンさんがしつこくクラス変えをオススメしてくるのには訳がある。
「魔銃弱いからな」
この武器、本来は生身の人間用。その生身の人間に撃っても足止め程度の効果でダメージが殆どない。
「接射すれば結構強いですよ」
「そうなんだけどさぁ」
接射ならそこそこのダメージを与えられる。そのため俺の戦法の基本は接射。それでも弱いけど。
「わかった。これ以上は言わん」
「今日は帰ります」
「おつかれ」
ギルドから出る。外はすでに暗くなってきていた。
「飲んで帰って寝るか」
何杯かお酒を引っ掛けて宿屋へ。そしてぐっすりと眠った。
「カーン、カーン」
「キャー!」
「ワーー!」
「んー、うるさいな」
外の騒がしいせいで目が覚めた。
「一体何が?」
眠気眼をこすりつつ、部屋の窓から外を見た。
『ギャオーーーン』
「ドラゴンか!」
街の入口付近でドラゴンが暴れているのが見えた。俺は急いで着替え、街の入口へ。
「ドンさん!」
入口付近にドンさんが。多数の冒険者を引き連れている。
「おお、来たか、ベリス」
「何故こんなところにドラゴンが」
「わからん。おっと」
「ズドン」
ドラゴンが破壊した家屋の破片がこちらへ。ドンさんはそれをかわした。
「話をしている暇は無さそうだ」
「ですね」
「今の戦力だとアイツとまともにやりあえるやつはお前だけだ。頼んだぞ」
「ベリスさん、お願いします」
「わかった」
俺はドラゴンの元へと駆け出した。
「ドンさん」
「ん?」
「ベリスさんが強いってのは聞いてますけど、なんで上半身裸なんですか? しかもかなりマッチョですよね。遠距離職なのに」
『ブバーーーー』
ドラゴンが炎のブレスを放ってきた。俺は体を盾にして銃を守る。
この武器、繊細だから受けには使えないんだよね。
「炎がやんだか。銃は……、無事だな」
『グワーーン!』
「ブーン」
今度は巨大な尻尾を俺に向かって叩きつけてきた。
「ガキーン」
これも肉体で受ける。もちろん銃も無事。
「体を、筋肉を鍛えてきてよかった。正解だったかな」
接射をするためには当然、近づかなくてはならない。そしてもちろん相手もただ見ているわけではない。その攻撃を受けるかかわすか。もし大量の弓矢が降り注いだらかわしきれない、ならば。子供の頃に、「どんな攻撃を受けても大丈夫な体を作ればいける」という結論に至った。
今ではドラゴンの炎はもちろん、剣撃、矢、魔法を受けてもノーダメな体になった。
「すげえ! ドラゴンの攻撃を受けてもびくともしない。炎でズボンが燃えて全裸になってるけど……」
「防具で受けるより体で受けたほうが都合がいいって話だ。下手に弱い防具ではすぐ潰れて買いなおす羽目になるからな」
「はぁー、ほんと。魔銃使い以外ならもっと強くなれるのに」
『ギュオアァーー!』
「さあいくぞ、ドラゴン!」
ドラゴンの体を駆け上り、頭に銃を突きつけ魔弾を発射。
「ブシュン」
「パン」
『?』
あまり効いていない。だが。
「ブシュン」
20分後。
「ブシュン」
『グギャーー』
「バターーン」
これを数百発放つことで、ドラゴンを倒すことができる。塵も積もればってやつだな。
「やった! ドラゴンを倒した!」
「うおー!」
ドラゴンを倒し、皆のところへ。
「パサァ」
純白のタオルが俺を出迎えてくれた。