エンカウント&エンカウント
皆様のおかげで現実世界恋愛部門で日間28位を獲得しました。これからもこの作品を応援していただけると幸いです。
-side 田島亮-
【たじま は きゅうりょう を ゲットした!】
時給850円×6時間で計5100円。高校生にとっては中々デカい金額である。しかも駄菓子屋でリンさんと適当に話してただけでこの大金だからな。店主の爺さん、マジ神。
というわけで今朝珍しく早起きした俺はリビングのソファで横になり、1人でボーッとテレビを見ながら給与の使い道について考えていた。ちなみにさっき見ていた番組の最後にあった正座占いは12位だった。ちょっとテンション下がった。
「さて、この金をどう使うかね...」
基本的に俺の頭に貯金するという発想は無い。貯金なんて大人になってからやれば良いと思うし。なんか学生の時から我慢して金貯めるのってもったいない気がするんだよな。
さて、何に使おうかな。マンガ、アニメのブルーレイBOX、ラノベ、ゲームなどなど...欲しい物は沢山ある。だが高い物を買うと給料が一瞬で無くなるというのも事実。それはそれであまり良い気分にはならない。
「偶には1人で出掛けてみるか...」
俺はインドア派ではあるが、外に出るのが面倒だと思うだけで別に外出が嫌いというわけではない。そりゃあ偶には外に出ようという気分にもなる。
映画を見に行くも良し。古本屋に行くも良し。中古ゲームショップでクソゲーを漁るのも良し。まあ5000円持って適当に外に出れば出来ることはそれなりにあるだろう。
「...よし、じゃあ出掛ける準備するか」
----------------------
現在時刻は8時30分。身支度を整えた俺はとりあえず天明高校前駅に向かうことにした。
「うーん、やっぱ外って暑いんだろうな...」
まあ今はそんなことを言ってても仕方ないか。とりあえず外に出ることにしよう。
そんなことを考えつつ俺は玄関のドアを開けた。
...そしてそれと同時に隣の家からも『ガチャリ』とドアが開く音がした。
「あ、おはよう亮。もしかして休日に1人でお出かけ? 珍しいこともあるのね」
【おさななじみ が あらわれた!】
なんかピンクのワンピース姿の幼馴染が居た。
...え、ちょっと待って。そんなことある? 隣り合ってる2軒の家のドアが同時に開いて『あら、偶然!』ってなるのってまあまあ低い確率な気がするんですけど。
「えーっと...咲もこれから外出か?」
「うん、そんなところかな。まあ遊びに行くわけじゃないんだけどね。今から予備校の夏期講習なの」
「うお、マジか。意識高いな」
「まあ夏期講習はお母さんに薦められたから受けるだけなんだけどね。でも亮もそろそろ進路について考えた方が良いんじゃないの? もう高2の夏なんだし」
「進路...か。そういや全然そんなこと考えてなかったな」
「亮は今まで結構大変だったから考える余裕が無かったかもね。まあこれからゆっくり考えていけばいいんじゃない?」
「そうだな。まあバカ過ぎて進路がどうにもならなかったらその時は友恵に養ってもらうことにするわ」
「せめて齧るなら親のスネにしときなさいよ...」
「そういやお前予備校の時間は大丈夫なのか? 俺は特に用事ないから別にこのまま喋っててもいいんだけど」
「あ、いけない! そろそろ行かなくちゃ!」
「そうか。じゃあ勉強頑張ってこいよ。まあ俺そんなこと言える立場じゃないんだけど」
「......ね、ねぇ亮」
「ん? どした?」
「え、えっと...き、今日の私の服似合ってる...かな?」
咲はそう言うと唇に人差し指を当てながら遠慮がちに俺の目を見つめてきた。
......え、いきなり何なの、その仕草。今まであんまりそういうの無かったじゃん。不意打ちでそういうことするのやめろよ。かわいいじゃねぇかこの野郎。
「あ、ああ。バッチリ似合ってるぞ」
「! そ、そっか! そうなんだ! えへへ...じ、じゃあ私行ってくるね!! 勉強頑張ってくる!!」
「あ、おい咲! 走ったら危ないぞ...って全然聞いてねぇ...」
咲は俺の忠告を聞かずにそのまま走り去ってしまった。
「ふぅ...なんつーか...夏休みに入ってから偶然の出会いが続いてるよな...」
バイトに行けばリンさんに出会い、玄関を開ければ咲に出会う。どうなってんだよ世間。狭過ぎるだろ。まあ夏休み中に誰かに会うってのは嬉しいことではあるんだが。
----------------------
真夏の日差しを浴びながら天明高校前駅に向かう。今年の夏は例年に比べて暑くなると今朝ニュースキャスターのお姉さんが言ってたが、そもそも俺はその例年の夏の暑さとやらを知らないのでその辺の事情についてはよく分からない。でもメッチャ暑い。
そして歩くこと数分。俺はようやく天明高校前駅にたどり着いた。
...それと駅の入り口になんか見たことあるような3人組が居た。
「なぁ西川、お前ドラゴンタイプの強いポ◯モン持ってねぇか? チャンピオン強すぎて勝てないから1回貸してほしいんだけど」
「おいおい脇谷、それは甘えってもんじゃねぇのか? まずは手持ちのレベル上げだろ。レベル100の伝説ポ◯モンで俺tueeeしまくってる脳死プレイの吉原を見習えよ」
「別に脳死プレイでもいいじゃねぇか...俺個体値とかよく分かんねぇんだよ...」
やせいのRBIがあらわれた。




