我らは男子高校生
もうすぐ12月も終わりますね。自分にとっては色々忙しい月でした。
え、クリスマス? さて、なんのことだか分かりませんね。
それでは続きです。お楽しみください。
-side 田島亮-
テスト期間3日目の昼休み。今日も今日とて俺のクラスには西川と脇谷が来ていた。
西「なぁなぁ、お前らって何歳の時までサンタの存在信じてた?」
亮「なんだよ突然」
脇「うーん...俺は小3まで信じてたかな。まあ小3の時に夜中にプレゼントを置きに来た親父の足音に気づいただけなんだが」
亮「...俺は信じたことないな」
そもそもウチにはサンタという文化が無いしな。去年のクリスマスは母さんから直接小遣いもらっただけだし。
西「ふむふむ、なるほど」
亮「西川はいつまで信じてたんだ?」
西「俺は小1だな。小1の時にサンタ捕獲大作戦を実行したんだが、捕まったのは親父だった」
亮「ちょっと待て。サンタ捕獲大作戦って何だよ」
西「いや、当時幼かった俺はさ、『サンタを捕まえれば毎日プレゼント貰えるんじゃね?』とか思ったわけよ。だから小1の時にサンタを捕まえるために自分の部屋に罠を仕掛けたんだ」
亮「小1の発想とは思えねぇな」
脇「とんだクソガキが居たもんだ」
西「それでまあ、朝起きたら罠に掛かった親父が俺の部屋に居たってわけ」
亮「親父さんが不憫過ぎる...」
そんな風に西川の親父さんに同情していると突然俺の携帯が鳴動した。
亮「やっべ、マナーモードにするの忘れてた」
西「おい田島、今来たのは誰からのメッセージだ? 女子からのメッセージだったら殺す」
脇「おい田島、今来たのは誰からのメッセージだ? 友恵ちゃんからのメッセージだったら殺す」
亮「いや、軽々しく殺すとか言ってんじゃねえよ。ぶっ殺すぞ」
西、脇「「お前も言ってるじゃねえか」」
西川と脇谷を軽くあしらって携帯の画面を覗いてみる。すると通知画面に表示されていたのは新島翔からのメッセージだった。
亮「ほれ見てみろ。女子からのメッセージでもないし妹からのメッセージでもないぞ」
脇「なんだよ新島かよ。つまんねぇな」
西「えーっと、『合宿の昼休憩なう。豪華なメンツで写真撮影』か。おい田島、なんか新島から写真が送られてきてるみたいだぞ。開いてみろよ」
亮「おう」
西川に促されて画像を開いてみる。すると俺の携帯画面にはユニフォーム姿の男子高校生5人組が映った写真が表示された。
西「どんな写真だったんだ?」
亮「ああ、なんか合宿参加メンバーの集合写真っぽい」
西「それ見てもいいか?」
亮「ああ、別にいいけど」
特に見られて困るものでもなかったので俺は西川たちに写真を見せることにした。
西「うわ、知ってはいたけどマジで強化合宿の参加選手ってヤバイ奴ばっかだな」
亮「この写真に映ってる人達ってそんなにスゴいのか?」
脇「全員ヤバイぞ。新島も十分ヤバイ奴だけどその写真のメンツは全員新島より速い」
亮「うわ、マジか...それはヤベェな」
西「でも女子の選手が映ってないのは残念だったわー。ユズハ様の写真見たかったわー」
亮「......ユズハ様?」
脇「西川が言ってるのは北海道の桜沢高校3年の東雲柚子葉のことだな。超美人ランナーとして高校陸上界では有名なんだよ。実力も今の女子の中だったら文句なしでNo.1だ。ファンクラブもあるらしいぞ」
西「そして熱烈なファンは彼女のことを『ユズハ様』と呼んでいるのだ」
亮「西川...お前ファンなのか......でもあれ? お前って仁科のことを崇拝してるんじゃなかったっけ?」
西「それはそれ、これはこれ、だ。俺は多神教なんだよ。仁科が唯一神というわけではないのだ。仁科も神。ユズハ様も神。そう! 俺の中に神は2人存在するのだ!」
お前は今すぐガチの多神教信者に謝れ。
-side 新島翔-
「さあ、野郎ども! 今夜こそ決めようじゃないか! 今回合宿に参加している女子の中で1番かわいいのは誰なのかを!!」
「イェーーーイ!!」
こちら、指定強化選手が宿泊している民宿の大浴場。いつものように公明館高校3年の滝沢先輩が音頭をとり、今日も俺たちの会議が始まろうとしている。
まあ会議といっても『合宿に参加した女子選手の中で1番かわいいのは誰なのか』ということを話し合うだけだ。最初は『指定強化選手の10人が互いに親睦を深めるために』という理由で滝沢先輩が始めたことだったが、これが想像以上に盛り上がり、結局入浴時間は決まってこの会議をするようになったのだ。
陸上の才能に恵まれているとはいえ、所詮俺たちは男子高校生。やはり女子の話題で盛り上がるのは必然なのである。
「この3日間俺たちは毎日この会議を続けてきた! だがいつまでたってもNo.1女子が決まらない! というわけで今日は多数決でNo.1女子を決めようじゃないか!!」
そう、今滝沢先輩が言ったように俺たちは3日間No.1女子を決められずにいるのだ。俺的には満場一致で桜沢高校の東雲先輩だと思ってたのだが...
「おい滝沢! ユズハ様がNo.1でいいだろ!」
「それは違うぞ滝沢! こんなヤツが言うことに耳を貸すな! 仁科唯がNo.1だ! 巨乳こそ正義だ!!」
「うるせえ! このおっぱい星人が!」
「なんだとコラ! お前もどうせ東雲のケツ見てるだけだろうが!!」
...という風に東雲派と仁科派に分裂しているため、なかなかNo.1が決まらないのである。
「コラコラお前たち、喧嘩はやめろ。さっき多数決をとると言ったじゃないか。早速投票に移るとしよう」
それにしても仁科って意外と人気あるんだな。まあ確かにアイツはかわいいとは思うんだけどさ、いつも近くに居るからこういう話題にアイツの名前が挙がるとなんか変な感覚になるんだよな。
「それでは投票に移る。東雲柚子葉がNo.1だと思う者は右手を、仁科唯がNo.1だと思う者は左手を挙げて欲しい」
投票か。東雲先輩一択だな。別に仁科に投票したくないというわけではないが、もし仁科と同じ高校に通ってる俺がアイツに投票したら周りから『そういう目』で見られるかもしれないからな。それは色々面倒だ。
「では俺の合図に合わせて手を挙げてくれ。いくぞー! せーーのっ!!」
滝沢先輩の合図に合わせて右手を挙げる。まあ俺がどっちに投票しても結果は変わらんだろ。
ーーだと思っていたのだが。
「えー、仁科唯4票! 東雲柚子葉6票! よってNo.1は東雲柚子葉に決定!!」
「うおぉぉぉぉ!!!」
湧き立つ東雲派閥。
「おい新島! お前なんで仁科に投票しなかったんだよ! 同じ高校だろうが!」
「そうだぞ新島! お前が仁科に投票してれば同率でNo.1だったのに!」
そしてなぜか俺を一斉攻撃し始める仁科派閥。
......いや、別に俺悪くなくね?
「ま、まあ落ち着いてくださいよ先輩方。別にいいじゃないですか。ただの茶番なんですし仁科がNo.1じゃなくても」
「うるせえ! 自分の推しがNo.1じゃないとなんか悔しいんだよ!!」
「そうだそうだ! 東雲がNo.1なんて順当過ぎてつまらないだろ!!」
え、何がアンタらをそこまで言わせてんの?
「まあまあ、落ち着け仁科派閥の諸君。確かにこの会議では東雲がNo.1だと決まった。だが君たちの中では仁科がNo.1なのだろう? だったらそれでいいじゃないか。投票の結果なんて些細なことに過ぎないさ」
「滝沢...」
「滝沢先輩...」
ナイスです滝沢先輩。仁科派閥の注意を俺から逸らしてくれてありがとうございます。ぶっちゃけ先輩が何を言いたいのか全然分からないし、なんで仁科派閥の連中が感動してる風になってるかも分かりませんけど。
...まあでもやっぱアレだな。
男子高校生ってバカばっかだな。
次回は合宿の女子側のお話です。 ※サービスシーンもあるよ




