日常的な空間と非日常的な状況
最近更新頻度が少ないですがエタらせるつもりはないのです...単純に大学がクソ忙しいだけなのです...
あ、続きです。お楽しみください。
-side 市村咲-
今日は6月19日。亮と一緒に亮の部屋で勉強をする約束をしていた日だ。
そのはずだったんだけど...
「咲ちゃん、今日は1日安静にしてなきゃダメだよ。お熱結構あるみたいだし」
「こ、これくらいなんてことないわよ、お母さん.....ハックシュン!!」
「ほら、クシャミもひどいじゃない。鼻水も出てるし。やっぱり今日は1日ゆっくりしないとね」
よりにもよって今日という日に風邪を引いてしまった。亮の家に行きたいという気持ちは強いけど今日は体がだるくてベッドから動けそうにない。
はぁ...ほんっと最悪...今日は祝日で学校が無いから1日中亮と居られると思ってたのに...
「わ、分かったわよ...今日は1日ゆっくりしておくわ...私のことはもういいから早くお仕事に行って...そろそろ行かないと遅れちゃうでしょ...」
「ごめんね咲ちゃん...今日は1日咲ちゃんのそばで看病してあげたかったんだけど...」
私のお母さんは近所のスーパーでパートタイマーとして働いている。私の看病をするためにさっき仕事先のスーパーに電話をして今日のシフトを変えてもらえないか交渉していたみたいだけどダメだったみたい。きっと祝日だから人手が少ないんでしょうね。
「私は1人でも大丈夫。ちゃんと安静にしとくから」
「うーん...それでもやっぱり1人で家に置いておくのは心配でね...」
お母さんは心配性だなぁ。私もう16歳なんだしそこまで心配しなくても良いと思うんだけど。
「だからね、やっぱりどうしても咲ちゃんを1人にしておくのは心配だったからね、さっきお隣の田島さん宅に電話しておいたの」
「......え? 今なんて?」
「病人の咲ちゃんを1人で家に残すのは心配だから田島家に咲ちゃんの看病をお願いしました」
「......友恵ちゃんが来るの?」
「いや、友恵ちゃんはお昼から弓道の試合があるから来られないみたいよ」
「......じゃあおばさんが来るの?」
「いや、奥さんは友恵ちゃんの試合を見に行くから来れないみたいよ」
「じゃあ亮が来るの!?」
「そうだよ。亮くん暇なんだって」
「いや、まあそれは知ってたけど...」
「多分そろそろ来ると思うよ」
「え、早くない!? まだ8時なのよ!?」
ど、どうしよう...今からいきなり私の部屋で亮と2人きりだなんて...風邪が治るどころかむしろ熱が上がる気がするんだけど...
-side 田島亮-
「咲が体調を崩したから看病しに行け?」
「そうよ。どうせアンタ暇でしょ。さっさと行ってきなさい」
現在時刻は7時30分。突然母親に叩き起こされ、いきなり『咲の看病をしに行け』と命じられた。
「...まあ別にいいけど」
「あら、突然起こされたのに機嫌が悪くならないなんて珍しいわね。アンタいっつも寝起きが悪いのに」
「...まあな」
いきなり叩き起こされたことに関してはまあ腹が立たないこともない。でも今は咲の体調が心配だ。わざわざ市村家に俺を呼び出すくらいだからな。もしかしたら相当体調が悪いのかもしれない。
「じゃあ俺行く準備するわ」
「了解。しっかり看病してあげなよ」
「あ、そうだ。風邪薬とかスポーツドリンクとか買っときたいから後で少しお金渡してほしいんだけど」
「......アンタって意外と気を遣えるのね」
「おいおい、『意外』は余計だろマイマザー」
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「そういや市村家の中に入るのって初めてだな...」
近所のドラッグストアで買い込んだ薬やらドリンクやらを手に持った俺はつい先ほど市村家の前に到着した。ウチの隣にあるので見慣れた家ではあるのだが、いざ中に入ろうと思うと少し緊張してしまう。
でもいつまでも家の前で立ち尽くすわけにもいかないよな。荷物も多いしまずは家に入れてもらうか。
「...よし、じゃあ行くか」
そして俺は少し緊張混じりに市村家のインターホンを鳴らした。
-side 市村咲-
お母さんから突然亮が来るという知らせを聞いて驚いていると、落ち着く暇もなくウチのインターホンが鳴る音がした。
「あ、亮くん来たみたいね」
「え、ちょっと待って...まだ心の準備が...」
「じゃあ後のことは亮くんに任せて私はそろそろ仕事に行ってくるわね!」
「え、ああ、うん...行ってらっしゃい...」
お母さんは私にそう告げると急いで部屋を出ていってしまった。
「もう、お母さんったら...亮を呼ぶなら田島家に電話する前に私に一言くれても良かったじゃない...」
確かに最近は時々亮と学校に行ったりしてるから2人で居る時間もそれなりに増えたわ。それに今日は元々私が亮の部屋に行く予定だったし。だから別に2人きりになるということに対して動揺しているわけじゃないのよ。
自分の部屋っていう日常的な空間に亮と2人きりっていうのがヤバイのよ。私がいつも居る場所に亮が居るっていうのを考えるだけでもうドキドキしちゃって仕方ないのよ。
...いや、ホントどうしよう。冗談抜きで熱が上がっちゃいそうなんだけど。
-side 田島亮-
玄関で咲のお母さんと挨拶を交わした俺は先ほど市村家の2階にある咲の部屋の前にたどり着いた。
よし、早速部屋に入れてもらうとするか。早く薬飲ませてやりたいし。
「おはよう咲。薬とか病人でも食えそうな物とか買ってきたぞ。部屋に入れてもらってもいいか?」
ドアをノックしながら声を掛けてみる。すると返事はすぐに部屋の中から聞こえてきた。
「...入ってもいいわよ」
声にあまり元気がない。やはり話に聞いていた通り咲の体調はあまり良くないみたいだな。
「じゃあ入るぞ」
「...どうぞ」
よし、咲の許可は得た。とりあえずドアを開けて部屋に入ってみよう。
「失礼しまーす.....って、え? 咲? お前なんでそんな格好してるんだ...?」
部屋に入ると、そこにはなぜかピンク色の掛け布団を頭の上まで被った咲の姿があった。顔色を伺おうにも掛け布団が咲の全身を覆ってしまっているため、全く今の咲の様子が分からない。
...え? この子何やってんの?
「あのー、咲さん...顔が見えないから布団をどけてくれないかな...」
「...べ、別に私の顔が見えなくても看病はできるでしょ」
「いや、その状態だと薬とか飲みづらいと思うからさ...」
「別に布団の中でも薬は飲めるわよ。あ、それと買ってきてくれた食べ物とかも全部布団の中に入れてくれない? 布団の中で食べるから」
お前は布団の中で冬眠でもするつもりなのか?
「なぁ咲...それはいくらなんでも無理があるんじゃないか...つーかどうして布団の中から出てきてくれないんだよ...」
「...ハックシュン! ハックシュン! ハックシュン!!」
「え、咲!? 急にどうした!? 大丈夫か!?」
「だ、大丈夫よ亮...ちょっと布団の中に熱が篭ってて体温が上がっただけだから...」
「いや、それ絶対熱上がってるだろ!! 変な意地張ってないでそろそろ布団の中から出てこいって!!」
「......だが断る」
「何がお前をそこまでさせてんの!?」
えぇ...看病しろって言われてただけだから薬飲んでもらったり、冷えピタ貼ってあげたりするだけで良いと思ってたんだけど...なんで看病する前に病人の咲と一戦交えることになってんだよ...想定外過ぎるだろ...
次回、咲を看病編
ちなみに感想とかもらえたら泣いて喜びます。




