ラブコメのお約束
最近毎日レポート課題やってて全然小説書く時間が無い...
あ、続きです。お楽しみください。
-side 田島亮-
現在、俺は岬家の地下図書館内の学習スペースにある長机で岬さんと一緒に勉強している。まあ勉強といっても俺が岬さんに質問してるだけなんだが。
「ごめん岬さん、ちょっと分からないところがあるんだけど教えてもらってもいい?」
「もちろんだよ。どの問題?」
すると俺の隣に座っていた岬さんが俺のノートを覗くためにこちらに身を乗り出してきた。
一気に彼女との距離が近くなる。もう少しで肩が触れてしまいそうだ。そしてそんな状況に思わずドキッとしてしまう自分が居る。
...いや、マジでこれは心臓に悪い。まさか顔を隠してない岬さんと勉強することになるとは思っていなかった。久しぶりにちゃんと顔を見たけどこの子やっぱりめちゃくちゃ美人だわ。肌綺麗だし目もくりくりしててまるで人形みたいで...
「ご、ごめん田島くん...そんなに見られるとちょっと恥ずかしいかも...」
「あ! ご、ごめん!」
あー! 何やってんだよ俺! いくら素顔が綺麗だからって凝視したら岬さんが怖がるに決まってるだろ! 動揺し過ぎだ馬鹿野郎!!
...うむ、このままの精神状態だと良くないな。よし、ここは一旦歴代江戸幕府将軍の名前でも唱えて落ち着くとしよう。
えー、初代が家康、二代目が秀忠。三代目が家光で、四代目が...え、えーっと、四代目が...家......家......
...チクショウ! 全然覚えてねえ!!
「あ、あのー田島くん...結局私はどの問題を教えればいいのかな...?」
「え!? あ、え、えーっと、このページの図形の問題なんだけど...」
いや、マジで落ち着け俺。せっかく岬さんが勉強を教えてくれるんだから今は目の前の問題に集中だ。つーかなんで俺は江戸幕府の将軍暗唱してんだよ。ワケわかんねえよ。
「あ、その問題難しいよね...えーっとね、まずは余弦定理を使って辺BCの長さを求めるの。それでBCの長さが分かったらcosAの値が分かるから、後はcosAの値から角Aの値を求めればいいよ」
「あ、なるほどそういうことだったのか......岬先生、ありがとうございました。大変分かりやすかったです。また分からない問題があったら質問してもよろしいでしょうか」
「う、うん! 遠慮なく質問していいよ! 今日の私は田島くんの先生なんだからね!」
岬さんは少し恥ずかしそうな様子を見せつつも素敵なスマイルを浮かべている。先生と呼ばれたのが思いのほか嬉しかったみたいだ。大きな目をキラキラさせて喜んでいる。
...なんか小動物みたいでかわいいな。めっちゃ癒される。
-side 岬京香-
「そういえば田島くん、大崎はどこに行ったのか知らない? 一応最初から勉強会に参加してもらう予定だったんだけど」
勉強会を始めて1時間くらい経ったのにまだ大崎の姿が見えない。あの子は一体どこで何をしてるのかしら。
私は今日初めて素顔のまま田島くんと2人きりになったのよ? ドキドキが止まるわけないじゃない。このままずっと2人きりだと私の心がどうにかなっちゃいそうだから早く戻って来てよ。
「あー、大崎さんならコーヒー入れてくるって言ってたけど...そういえばあの人まだ戻ってきてないな」
「ご、ごめんね田島くん...先生役が私だけだと不安だから一応大崎も呼んでたんだけど...」
「いや、全然謝ることなんてないって。岬さんは立派に先生役をこなせてるから心配しなくても大丈夫だよ」
「あ、ありがとう田島くん...そう言ってもらえると私とっても嬉しい...!」
「はは、喜び過ぎだよ岬さん」
ふふ、ほんと恋愛って不思議ね。ちょっと褒めてもらっただけなのにこんなに嬉しく思っちゃうんだもん。とっても緊張するけど好きな人といる時間ってやっぱり楽しいなぁ。
...でも大崎にはちょっとお仕置きが必要ね。心拍数上がりっぱなしのお嬢様を放っておくなんて許せないわ。職務怠慢よ。
あ、そうだわ。良いこと思いついた。
そういえばこの前大崎が高級そうなお菓子が入ってる箱を本棚の下に隠しているのを偶然見たわ。多分独り占めしたいほどおいしいお菓子なんでしょうね。
よし、大崎には今回のお仕置きとして私と田島くんにもそのお菓子をシェアしてもらうことにしましょう。ふふ、おいしいものってやっばり皆で分け合うべきよね。独り占めは良くないわよ。
よーし! 早速お仕置き実行よ!
-side 田島亮-
「ね、ねえ岬さん。こんなに高そうなお菓子本当にもらってもいいの...?」
現在、俺と岬さんの目の前には金色の紙で包まれたお菓子が10個ほど置かれている。
いや、待て。これ絶対高級品だろ。包装紙は真っ金金に輝いてるし。さっきお菓子が入ってた箱の中は綿みたいなやつ敷き詰められてたし。
ちなみにこのお菓子は先程学習スペースのすぐ近くにある本棚の下から岬さんが引っ張り出したものだ。なぜそんなところから高級菓子が出てくるんだろうか。この家はツッコミどころが多すぎる。
「田島くんはお客さんなんだから遠慮なんてしなくても大丈夫だよ! 好きなだけ食べてね!」
「じ、じゃあお言葉に甘えて1ついただきます」
まあせっかく岬さんがお菓子を用意してくたんだ。ここは素直に厚意を受け入れるとしよう。ぶっちゃけ箱のフタに英語の文字しか書かれてなかったからコレがどんな菓子なのか分からなくて少し不安ではある。でもまあ不味いということは無さそうだから普通に食っても大丈夫だろう。
そして食べることを決めた俺は机の上のお菓子を1つ手に取り、金の包装紙を剥がしてみた。
「あ、これチョコレートだったんだ」
包装紙を剥がすと中から丸い形をしたチョコレートが出てきた。なんか表面がめっちゃツヤツヤしてて光ってる。超美味そう。
「ではいただきます」
「うん! どうぞ、めしあがれ!」
そして早速俺はチョコレートを口に入れてみた。
「どう、田島くん? おいしい?」
「うん、おいしいよ。でもなんだろう。変な味がする。チョコの中に何か入ってるみたい」
「うーん、中にシロップが入ってるのかな? どんな味なのか気になってきた。私も食べてみよっと」
美味いのは間違いないんだが、なにか初めて感じる味がする。苦いような、甘いような...うーん、何の味なんだコレ?
そういやこういう製品って箱の裏に原材料とか使われてる食品とか書かれてたりするよな。もしかしたら箱の裏見たら何の味なのか分かるかも。箱の表は英語の文字が書かれてたけどさすがに裏の原材料の表示は日本語で書かれてるだろ。よし、とりあえず箱の裏を見てみよう。
そう考えた俺は早速長机の上にあるお菓子の空箱をひっくり返し、箱の裏の表示を確認してみた。
「あー、なるほど。そういうことだったのか。そりゃ何の味か分からないはずだわ」
箱の裏を確認すると、そこには『食品名: ウイスキーボンボン』と書かれていた。そりゃ何の味か分からねぇよな。だって俺ウィスキー飲んだことないしウィスキー入りのチョコも食ったことねえもん。へぇー、こんな味するんだな。思ってたより美味かった。
はは、でもアレだよな。ラブコメ漫画では『ウィスキーボンボンを食べたヒロインが酔っ払う』っていう展開があったりするよな。酔ったヒロインがとんでもない行動をする的な感じの。まあ実際にはあんな事絶対ありえないけどな。この程度の酒量で酔うとかフィクションの中だけだろ。
「......ヒック」
......ん? なんか今隣からしゃっくりが聞こえたような...
...ま、まさか岬さんが酔ったってことはないよな...? あんなのジャ◯プとかマガ◯ンのラブコメ漫画の世界でしかありえないよな...?
でもなんでだろうな。なんか今隣の女の子の方を見るのがすごく怖いんだ。おかしいな。今俺の隣にいるのは決して怖い女の子じゃないはずなんだけどな。
「えへへぇ...ねぇーねぇー、田島くーん...えへへぇ...こっち向いてぇー」
......うん、なんか横から普段と全然違う喋り方の岬さんの声が聞こえてきた気がするけど酔っ払ってるというわけではないだろう。
「ど、どうしたの岬さん...?」
おそるおそる隣の方を見ると、そこには顔を紅潮させている岬さんの姿があった。長机の上をよく見ると空になっている金の包装紙が5枚ほど散乱しているのが見える。なるほど、彼女は俺が見ていないうちにウィスキーボンボンを5個も食べていたのだろう。
「あー、亮くんやっとこっち見たー。えへへぇ...嬉しいなぁ...えへへぇ...」
...落ち着け俺。いくらウィスキーボンボンを5個食べたとからいってその程度の酒量で酔うはずはない。今の岬さんは顔赤いし、怖いくらいニコニコしてるし、いきなり俺を下の名前で呼んできたけどまだ酔っ払ったとは限らない。ここは落ち着いて酔っ払っているのかどうかを本人に確認すべきだ。
「あ、あのー、岬さん? もしかして酔っ払っていらっしゃいますか...?」
「えー、酔っ払ってなんかないよー。なんかポカポカしてフラフラするだけだよー。あー、なんか今亮くんが3人に分身してるように見えてきたぁー。ずるいよ亮くーん。私も分身したいよぉー...えへへぇ...なんか楽しくなってきたぁ...」
「...」
...認めよう。彼女は今完全に酔っ払っている。
次回、勉強会(with岬京香)編完結。
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