一般的思春期男子の葛藤
申し訳ありません...最近大学の方が地味に忙しくて更新頻度が低くなっています...
それでは続きをお楽しみください
-side 田島亮-
「なん...だと...」
仁科とのやりとりを終え、今度はベッドで寝転がりながら咲に勉強会の日時と場所を相談する旨のメッセージを送った。しかし咲からの返信内容があまりにも俺の予想の斜め上を行っていたのだ。ちょっと衝撃的だったため思わずベッドから身体を起こしてしまう。
ちなみに咲からの返信がコレだ。
『来週月曜に亮の部屋でやりましょうよ』
簡潔な文。しかし大胆な内容。え? なんで俺の部屋なの? お前男の部屋で2人きりになるってこと分かってるか?
...まあ体育祭以来コイツが俺のことどう思ってるかなんとなく分かってきたからこの文面の意図も分からなくはないんだが。
まあ今色々考えても仕方ない。とりあえず返信するか。
『男の部屋で男女が2人きりになるわけだけど咲はそれでもいいわけ?』
『ふふ、なによそれ。昔はしょっちゅう亮の部屋に行ってたんだし今さらそんなこと気にならないわよ』
いや俺その時の記憶無いんだが。
『え、何? 私が亮の部屋に行くことに何か問題ある? 幼馴染だし別に良くない?』
あのー、咲さん? 最近アナタとりあえず枕詞に幼馴染って付ければOKだと思ってない?
『いや、まあ確かに俺とお前は幼馴染かもしれないが...』
『ねえ亮、もしかして私が来るのは嫌?』
『いや、決してそういうわけではないぞ!』
そういうわけじゃないんだ咲。多分以前までの俺なら『かわいい幼馴染が部屋に来るぜヒャッハー!』とか考えて部屋に招いてたよ。
でも体育祭の時にお前の俺に対する気持ちがなんとなく分かってからお前とどう接すればいいか分からなくなっちまったんだよ。前みたいに普通に話そうとしても余計なこと考えて上手く話せないんだよ。
そんな状態の俺がお前と部屋で2人きりになったらなんだか気まずくなりそうで怖いんだよ。多分咲の気分を害してしまうことになるだろうし。
もちろんこれが俺の勝手な都合だってことは分かってる。でも咲に嫌な思いはさせたくないんだよ。だから俺はお前を部屋に呼ぶことはできないんだ。本当にごめんな。
うん、じゃあ申し訳ないけど俺の部屋は無理っていう旨を伝えるか...
そう思って咲に返信しようと思った時だった。
『へー、亮は渋沢先輩たちは部屋に入れたのに私のことは部屋に入れてくれないんだー。ふーん、そうなんだー。へぇー』
咲からまたもや予想の斜め上を行く返信が来た。
...は!? なんでお前あの人たちがウチに来たこと知ってるんだ!?
『な、なぜお前がその事を知っている...』
『いや、普通に渋沢先輩が亮の家の玄関前で大声出してるの聞こえてきてたし。私の家隣だからあんな声出されたらそりゃ気づくわよ』
あはは、やっぱり近所迷惑になってたんですね...いや、ホントすいません。
『そーれーで、結局亮は私を部屋に入れてくれないの? 渋沢先輩は部屋に入れたのに?』
『いや、あれは不可抗力だったんだ...それにあの時は他に新聞部員も居たし...』
『いやー、悲しいなぁー。私渋沢先輩より亮との付き合い長いのになぁー。昔何回も部屋に入ったことあるのになぁー。それでも入れてくれないのかぁー、ふぅーん。』
お前普段そんなキャラじゃないだろ! 思いっきりキャラ壊れてるぞ!
しかしここまで言われると断るに断れないな...ちくしょう...俺が断ろうとしたのはお前と気まずい雰囲気にならないようにするためだったのに...全然気遣いが報われない...
『分かった分かった! 来週の月曜に俺の家な!』
『やったぁ! じゃあ来週の月曜は祝日だし朝から亮の部屋行くわね!』
『え、朝から!? 昼飯はどうするんだ!?』
『お弁当作る!』
『お前料理苦手じゃなかったっけ!?』
『大丈夫大丈夫! 多分なんとかなるわよ!』
いや、お前バレンタインの時クッキーの完成が遅れて夜ウチに来てたじゃないか...本当に大丈夫なのか...?
『じゃあ来週の月曜になったらまた連絡するから!』
『お、おう』
『じゃあバイバイ!』
『おう、またな』
こうして結局俺は咲の強烈な勢いに圧倒されて来週の祝日に部屋で一緒に勉強することになった。
ーー--------------------
「咲って学年上がってからホント変わったよな...」
咲とのやりとりを終えた俺は部屋の窓から夕日を見ながらそんな事を考えていた。
仁科も学年が上がってから少し変わったとは思うが咲はそれと比べ物にならないくらい変わったように思う。
一緒に登校し始めたり、体育祭の帰り道で聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなツンデレセリフを吐いたり、突然俺の部屋に来たいとか言い出したり...去年までの咲とはまるで別人だ。
今思えば去年病院で初めて会った時の咲も今と同じような挙動をしていた。つーかあの時は『この子もしかして俺のことを...』って一瞬思ったりした。だって咲のやつ記憶を失ったばかりの俺に自分が彼女だったって吹き込もうとしてたんだぜ? まあトーク履歴見せたら俺を罵倒しながら顔真っ赤にして病室出てってそれ以来4ヶ月くらい会話しなかったんだけど。
しかし咲が俺のことをどう思っているのかについて深く考えるのには時間がかかった。なぜなら咲が俺に嘘を吹き込んだのは俺が記憶を失って間もない頃だったからである。
正直あの時は自分の人間関係の把握とか自分がどんな人間だったのかを考えるのに必死で咲の気持ちを考える余裕なんて無かった。それに退院した後も咲と会話する機会が極端に少なかったしな。
まあそういうわけで去年は余計なこと考えずにただの幼馴染として咲と接することができていたわけですよ。
でもな...最近の咲の態度を見るとな...やっぱ思うところがあったりするわけで...
『亮と幼馴染としてまた仲良くなるために一緒に登校したい』
『幼馴染の亮が応援してくれたから100m走で頑張れた』
『幼馴染だし亮の部屋に行ってもいいよね?』
これは全て咲の言葉だ。まるで口癖なのかと疑いたくなるほど『幼馴染』という言葉が入っている。
そして『幼馴染』という言葉を省くとこうなる。
『亮と仲良くなるために一緒に登校したい』
『亮が応援してくれたから100m走で頑張れた』
『亮の部屋に行ってもいいよね?』
うん、これってどう考えても思春期の男が聞いたらドキッとしちゃう台詞だよね。なんか手が届かないところが痒くなるような感覚になっちゃう。
と、まあ最近俺は咲の気持ちについてバカなりに考えていたわけだ。うん、何回も考えたね。でもさ、何回考えても同じ結論にたどり着いちゃうんだよ。それも結構イタイ結論なわけ。あーあ、仁科の件といい、咲の件といい俺はいつからこんなに痛々しくなってしまったんだろうな! 最近自意識過剰になってきてるみたいでほんっと嫌になるわ!!
--俺が何回も考えて導き出した結論、それは『記憶を失う前から今までの間、ずっと咲は俺のことを好きだったのではないか』ということだった。
次回、数話ぶりに妹登場(予定)
面白いと思っていただけた方は下の欄から感想や評価をお願いします!




