表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/149

友情と愛情の境界線

続きです。

-side 田島亮-


 よし、アリス先輩と岬さんへの返信は終わった。残るは仁科と咲だな。まずは仁科に返信するか。


『はは、仁科よ。お前の言う通りバカ同士協力してテストに向けて頑張ろうじゃないか。まあ8ヶ月間補習を受けてきた俺の学力にお前がついて来られればの話だがな!』


 文面はこんな感じでいいだろう。仁科にテスト勉強に対するモチベを上げてもらうために少し煽ってみた。アイツは単純な性格してるから多分俺に対抗心剥き出しになって勉強に励むようになるだろう。


 よし、送信っと。


『田島のくせに自信満々じゃない。ふふ、そこまで言うなら久しぶりに点数勝負でもする? もちろん敗者は勝者の言うことをなんでも聞くって条件で』


 返信早っ! ていうか仁科さんったらやっぱり挑発に乗っちゃうのね。アナタやる気スイッチ入るの早すぎでしょ。つーか勝負するのかよ。この子俺に『協力してテスト乗り切ろう!』とか言ってなかったっけ。


『別に勝負するのはいいけど今回は俺マジで負ける気がしない』


 これは紛れもない本心だ。補習担当の先生方のお陰で今の俺の学力は天明高校の中の下くらいのレベルになった。正直部活漬けの仁科に負ける気はしない。


『え、もしかして田島ってバカじゃなくなったの?』


『そりゃ8ヶ月も補習受けてたら嫌でも学力上がるわ。まあまだ順位は下の方だけど』


『うっ、マジか...』


 ...お? さすがの仁科も戦意喪失かな?


『...よし、じゃあハンデ有りで勝負するわよ』


 お前どんだけ負けず嫌いなんだよ。


『どんなハンデを付けるんだ?』


『私の得意科目の数学の点数で勝負するっていうのはどう?』


『ああ、それなら良い勝負になるかもな』


 補習のおかげで赤点は取らなくなったものの、俺の数学の点数は未だに良いとは言えない。確かに数学オンリーの勝負なら接戦になるかもしれないな。


『よし、じゃあ決まりね!』


『...おい仁科。勝負するのは別に良いけどさ、これって元々は俺と仁科で一緒に勉強しようぜって話じゃなかったっけ? お前その事忘れてるわけじゃないよな?』


『...今からその事についても話そうと思ってたのよ』


 あー、うん。多分この子最初に自分が言ってた事忘れてたっぽい。


『そういや翔は誘ってないのか? あいつもバカ同盟の一員だろ? むしろアイツこそ勉強しないとヤバいと思うんだが』


『あー、新島? アイツはテスト期間は地元の彼女とビデオ通話しながらテスト勉強するって言ってたわよ。なんか彼女さんが新島に勉強を教えるみたい』


 え? それRBI案件じゃね?


『なるほどな。後で西川に報告しとくわ』


『え? なんでここで西川君の名前が出てくるの?』


 あ、うっかり心の声まで送信しちまった。


『文字打ち間違えただけだ。気にするな』


『え、そうなの?』


『ああ、そうだ。話を戻すけど結局勉強会の日時と場所はどうする?』


『え? 日時と場所? 私テスト期間になったら毎日放課後教室に残って田島と勉強するつもりだったんだけどそれじゃダメ?』


 ......は? それマジ? え、毎日!?


『あのー、仁科さん。何と言いますかその...さすがに毎日一緒に教室に残ってたら良からぬ噂が流れる可能性があると思うんですが...その辺大丈夫っすか...?』


『噂? 別にそんなの気にしなくて良くない? それに田島が相手なら別に噂されても嫌じゃないし。あとクラスの皆だって私と田島がよく話すことくらい知ってるじゃない。今さら2人で教室に残ってたって皆何も思わないわよ。』


 ...は? 俺と噂されても嫌じゃない? ちょっと待てよ、それってつまり...


『はい! じゃあテスト期間は毎日私と一緒に勉強するの決定ね! じゃあまた明日学校で〜!』


『あ、ああ、また明日学校でな...』


 こうして俺は仁科の勢いに押されてテスト期間に毎日一緒に勉強することになった。




----------------------




「やっぱ仁科って学年上がってから少し変わったよな...」


 仁科とのやりとりを終えた俺はベッドの上でそんなことを考えていた。


 別に仁科の人間性が変わったとは思わない。変わったと感じるのはアイツの俺に対する接し方だ。1年の時から距離感が近いヤツだとは思ってたけど学年が上がってからさらに距離感が近くなったように感じる。


 今思えば遊園地に行った時、特に観覧車に乗っている時からアイツの様子はおかしかった。


---------------------------

『え、えーっと、その...今田島が話してた大切な女の子たちの中に私は含まれてる?』

---------------------------


 観覧車に乗っていた時に仁科から言われた言葉だ。記憶力に乏しい俺は他人の過去の発言なんて一々覚えていられない。でもこの言葉は俺が仁科の変化に気づくきっかけになったからよく覚えている。


 この言葉を聞いた時俺は『もしかしたら仁科が俺のことを...』とかちょっとだけ思ったりもした。でも仁科とは今まで友達として接する時間が長かったからこの時も『ただ友達として俺のことを良く思ってくれているんじゃないか』と考えることにしていた。


 しかし今日の仁科とのやりとりを通じてその考えは間違っていたのかもしれないと思うようになった。


 だって『田島が相手なら噂されても嫌じゃない』、なんて文面見たら誰だって勘違いしちゃうだろ? いくら友達相手でもこんな内容いきなり送られて平気でいられるわけないだろ? いや、まあ『ガチで俺のイタイ勘違いでした。テヘペロ☆』ってなる可能性もゼロではないんだけどさ。





 【男女の間に友情は成立するのか】


 これはよく議論されている問題であるが、未だにハッキリとした正解が出ていない。それに今後ハッキリとした正解が出ることもおそらく無いだろう。


 俺は今まで男女の間に友情は成立すると思っていた。だから仁科と楽しく遊んだり、バカな話をして笑い合ったり、人気者のアイツの隠れた弱さを知るのは友達として当たり前のことだと思っていた。


 でももしかしたら今まで仁科は俺と違う感情を抱いていたのかもしれない。


 ああ、そうさ。こんなの俺の勝手な思い込みかもしれないさ。思春期男子の妄想に過ぎないかもしれないし、死ぬほどイタイ勘違いかもしれないさ。



 だけど、それでも、今俺はこう思わずにはいられない。






--なぁ仁科、お前は俺のことが好きなのか?

次回は主人公と咲のやりとりをお届けします!


面白いと思っていただけた方は下の欄から感想や評価をお願いします!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ