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スリーサイズ暗唱事件

今回は久々にRBIのメンバーが登場するので念のために登場人物の紹介をしておきます。


吉原・・・2年4組所属。RBIのリーダー格。


脇谷・・・2年1組所属。去年のクリスマスに友恵に一目惚れした。


西川・・・2年1組所属。仁科唯を崇拝している。



それと青木茜という名前のモブ女子が一瞬だけ登場します。



それでは続きをお楽しみください。



-side 新島翔-


「おい亮、これはどういうことだ」


 四月某日の昼休み、『話があるから屋上に来い』と亮に言われたので屋上を訪れたのだが、なぜか入口の扉を開けた瞬間にRBIの脇谷と西川に両腕を掴まれて拘束された。一体何事だ。


「田島裁判長! 早速裁判を始めましょう!」


「検察側は準備万端です! 早く始めましょう!」


 脇谷と西川は俺を壁際に連行しながら、その場にいる亮に裁判を始めるように促している。


 ...ちょっと待て、マジでこの状況に頭が追いつかないんだが。


「おい脇谷! この前は亮が被告になってたじゃねえか! なんでコイツが裁判長になってるんだよ! どう考えてもおかしいじゃねえか!」


「...は? 俺らにはマトモな友達がお前と田島しかいねえんだよ。お前が被告になるなら田島が裁判長になるしかないだろ。そんなことも分からないのか」


「お、おう...なんかすまん...」


 うわぁ...そんな悲しい事実聞きたくなかったぞ...

 

「ハッハッハッハッハ! 往生際が悪いぞ! 翔!」


「うっ、亮...」


 やばい、亮のやつこの前自分が痛い目見たから復讐する気マンマンだ。こいつノリノリじゃねえか。


 でも絶対にこの裁判を開始させるわけにはいかねえんだよ。こんな有罪率100%の理不尽裁判に掛けられてたまるか。なんで裁判にかけられてるのかはよく分からんけど。


 よし、とりあえずなんとかして被告を俺から亮にチェンジさせよう。親友を身代わりにするのは辛いが、背に腹は変えられん。


「なあ西川。亮は最近市村さんと登校し始めたということを知ってるか?」


「あ、翔! お前それ以上喋るな! おい西川! 耳を塞げ!」


「ふっ、心配なくていいですよ、田島裁判長。あなたが市村さんと登校し始めたことくらい知っています。RBIの調査力をナメないでほしい」


「...は? じゃあなんで亮を裁判に掛けないんだよ」


「いや、なんか田島の女関係について調査してたら色んな疑惑が出てきてな。コイツを何回裁判に掛けてもキリがなさそうだから面倒になった」


「おい! そこはもう少し頑張れよ!」


「いや、同じヤツを何回も裁くのって飽きるじゃん? アレだ、田島は殿堂入りだ」


 殿堂入りする被告とは一体...


「もういいだろ、翔? 早速裁判を始めるぞ」


「ちょっと待て! まだ脇谷の意見を聞いていない!」


「本当にお前は往生際が悪いな...」


 ...おい、亮。お前も前回はこんな感じだったんだぞ。


「なあ脇谷。お前は亮が市村さんと登校していることについてどう思う?」


「亮お兄様がどこで何をしていようと俺には関係ないことだ。別になんとも思わない」


 ...は? 亮お兄様?


「おい、お前なんで突然亮の呼び方変えてるんだよ」


「何を言ってるんだ新島。このお方は友恵ちゃんのお兄様だぞ。敬意を払うべき人物だ」


 そういやこの前コイツ亮の妹に一目惚れしたって言ってたな...コイツ亮の妹が最近ウチに入学してきたから相当舞い上がってるんだろうな...


「なあ亮、お前お兄様とか言われてるけどさ、その辺どう思ってんの」


「心底気持ち悪い。本当にやめてほしい」


「お兄様ぁ! そんなこと言わないでくださいよぉ!」


「お前マジでその呼び方辞めろ!」


 ...なぁ、俺もう帰っていいか?


「翔よ、他に何か言いたいことはないか」


「そういや吉原の姿が見当たらないようだが、アイツはどこにいるんだ?」


「あー、吉原? なんかどうしても外せない用事があるらしい。今日は来ないぞ」


「アイツに用事か。珍しいな」


「おい翔。お前話を引き延ばして裁判を始めさせないようにするつもりだろ。残念ながら全てお見通しだ」


「チッ、バレたか...」


 チクショウ、もう裁判を受けるしかないのか...


「よっしゃあ! 脇谷! 西川! 裁判の時間だぞ!」


「「イェーーーイ!!」」


 ...おい、お前らそれ絶対裁判やる時のテンションじゃないからな。それカラオケ行った時のテンションだろ。


「それでは裁判を始めるとしよう」


 そして結局なぜ罪に問われているのかも分からないまま俺の裁判が始まってしまった。



-side 田島亮-


 はっはっは、ついに裁判開始だ。被告人の時は面倒でしかなかったが、裁く側に回ると意外と楽しいなコレ。


「では被告人に問おう。貴様はなぜ自分が裁判にかけられているのか理解しているか?」


「いや、全くもって理解出来てません」


「ふむ、なるほど。では質問を変えよう...新島翔よ、貴様実は彼女がいるな?」


「...はぁ!? なんでお前がそのこと知ってるんだよ!?」


「情報提供者はNさんです」


「おい、それ絶対仁科だろ! 俺アイツにしか彼女のこと話してないからな! 間違いねえ!」


 いや、なんか遊園地行った時の帰りに翔と別れて仁科と二人で帰ってる時にさ、仁科が翔の秘密について教えてくれたんだよね。


ー------------------------


〜遊園地の帰り道にて〜


「なあ仁科」


「な、なによ」


「観覧車では俺の女関係の話ばかりだったけどさ、お前翔の女関係について何か知らない?」


「え? もしかして田島って新島に彼女がいるってこと知らないの?」


「はぁ!? なんだよそれ!? 初耳なんだけど!?」


「あ、知らなかったのね...てっきり田島は知ってるものだと思ってたわ...」


「クックック、良い情報を聞けたぜ。サンキュー仁科」



------------------------


 

 というわけで俺は翔に彼女がいるということを知ったのである。


「この裏切り者が!」


「お前普段は女と全然喋らないくせに裏ではやることやってたんだな!」


 俺が翔の罪状を説明すると、翔の腕を掴んでいる脇谷と西川が翔に罵声を浴びせ始めた。


 コイツらの嫉妬深さはホント安定してるな。ある意味すごいと思うわ。


「おい脇谷、西川。二人とも落ち着け。まずは被告人から彼女のことについて詳しく説明してもらおうじゃないか」


「それもそうだな」


「そういうわけだ新島。さっさと貴様の彼女について話せ。裁判長の指示は絶対だ」


「わ、わかったよ...」


 どんな話が聞けるんだろうな。なんかワクワクしてきた。


「俺と彼女は中学時代同級生だった。ちなみに天明高校の生徒ではない。俺が越境入学したってことはお前ら知ってるよな? でも俺の彼女は地元の高校に進学しててな。だから今は遠距離恋愛なんだよ。付き合い始めて大体二年くらい経つ」


「...」


「...」


「...」


 翔の話の内容が予想の斜め上過ぎて俺たち三人は全員何も言わずに固まってしまった。


 ...いや、遠距離恋愛ってなんだよ。それって普通大人がやるものなんじゃないの? お前まだ16歳だろ。なに大人の階段登ってるんだよ。


「新島...お前まだ高校生なのに遠距離はすげえわ...」


 どうやら脇谷は翔を罵倒するのを忘れてしまうくらい驚いているようだ。


「まさか『スリーサイズ暗唱事件』以来仁科以外の女子と全く話せなくなったお前に本当に彼女がいたなんてな...未だに信じらんねえわ...」


 ...は? 今西川なんつった? スリーサイズ暗唱事件?


「おい西川。今お前なんて言った」


「あ? 急にどうしたんだよ田島」


「いいからさっきお前が言ってた『スリーサイズ暗唱事件』とやらについて詳しく聞かせろ」


「あー、そういえば『スリーサイズ暗唱事件』があったのって去年の4月だもんな。だったらお前が覚えてないのも無理はない。いいだろう。説明してやろう」


「おい西川! 俺の黒歴史を掘り返すのは辞めてくれ! 頼む! この通りだ!」


 西川の言葉を聞いた瞬間、翔がいきなり西川の方を向いて土下座した。どうやら翔は相当焦っているようだ。


 ほう、俺が記憶を失う前に翔は黒歴史を残していたのか。なるほど、なるほど...


 ...なにそれ、絶対面白いやつじゃん。


「おい西川。そこで土下座してる奴のことなんか放っておいていいから『スリーサイズ暗唱事件』についての話を早く聞かせてくれないか」


「いいだろう。事細かに話してやろう」


「お前ら鬼か!!」


 なんか翔の嘆きが聞こえてきた気がしたけど気のせいだろう。さて、どんな話なのかな。ワクワク。


「まあこれは当時新島の隣の席に座っていた田島から聞いた話なんだがな。『スリーサイズ暗唱事件』は今から一年前に起きた出来事だ。四月のある日、古典の授業中のことだ。当時教室の一番後ろの席に座っていた新島は先生から見えにくい位置であるのをいいことに爆睡していたそうだ」


「うわぁー! そこから先を言うのはやめてくれぇー!」


 翔のやつまだ自分の黒歴史が晒されるのを諦めてないのか。そんなに大きい声出されると西川の話に集中できないじゃないか。


「おい脇谷、翔がうるさいから口を塞いでくれ」


「御意」


 脇谷は俺の指示を聞くとすぐに翔の口を手で塞いだ。


「ムゴー! ムゴムゴー!」(特別意訳:この外道がー!)


 よし、まだ翔が何か言っているがこれであまり気にならなくなったな。話の続きを聞くとしよう。


「よし西川、話を続けてくれ」


「おう。まあそんなわけで新島は授業中に爆睡していたわけだが、その時に寝言を言っていたみたいでな。『スリーサイズ暗唱事件』はその寝言がきっかけで起きたらしい」



------------------------



〜 一年前、四月某日の授業中(担当教師:柏木奈々) 〜


柏木先生「えー、つまりここの『ぬ』は否定の意味で使われているわけではなく、完了の意味で使われているわけで......っておい、新島が寝てるじゃないか。すまない田島、起こしてやってくれ」


亮「分かりました。おーい、翔ー。起きろー、朝だぞー......ん? コイツなんか寝言言ってね?」


翔「んー、青木茜、バスト79 ウエスト60 ヒップ83...」


青木茜「きゃあぁぁぁぁぁ!!」


亮「は!? コイツ何言ってるんだ!?」


翔「んー、ムニャムニャ、市村咲、バスト71 ウエスト58 ヒップ76...ふふ、ペッタンコ」


咲「いやあぁぁぁぁ!!!」


亮「やばい! さっさと起こさないと! おい! 起きろ翔! 起きろって! チクショウ! コイツ全然起きねぇ!」


翔「んー、仁科唯、バスト...」


唯「あー、ホッとしたわ。その先を言ってたらコイツを殺すところだったわ」


翔「んー、ムニャムニャ、柏木奈々、バスト85 ウエスト58 ヒップ82...ふふ、隠れ巨乳」


柏木先生「なっっ! おい新島! お前いい加減にしろぉぉぉ!!」


亮「先生! チョークを投げる構えをとるのはやめて下さい! さすがにそれはヤバイです!」


柏木先生「そんなの知ったことかぁ! 起きろ新島ぁ! これでも喰らえぇ!」


翔「痛ぁぁぁ!!」



------------------------


「...ということがあったそうだ」


「アハハハハ! なんだよそれ! つーかなんで翔はスリーサイズ全部分かってるんだよ! 意味分かんねえ! アハハハハ!」


「まあそれ以来『スリーサイズ暗唱事件』の噂が学年中に広まり、新島は仁科以外の女子とはほとんど話せなくなってしまったというわけだ」


 なんだよその話。面白すぎるだろ。翔のやつ思ったより盛大にやらかしてるじゃねえか。


 でもなんで仁科だけは翔を避けなかったんだろうな。今は三人でよくつるんでいるが、当時はまだ入学して間もなかったから大して仲良くなってなかったはずだ。ドン引きして距離をとってもおかしくないはずなんだが。


 その辺の事情が気になった俺は翔に色々聞いてみることにした。


「おい脇谷、そろそろ翔の口から手を離してもいいぞ」


「了解」


「ぷはーっ! あー、苦しかった!」


「なあ翔。お前なんで仁科とは『スリーサイズ暗唱事件』の後も普通に話せたんだ?」


「あー、それ聞いちゃう? まあその点は俺も気になっててな。前に仁科本人に直接尋ねたことがある」


「お前マジかよ...メンタル強過ぎだろ...」


「ちなみに仁科は『アンタが私のスリーサイズさえ言われなければ別に構わないわ』って言ってたな」


「はは、仁科らしいサバサバした対応だな...つーかお前なんで女子のスリーサイズなんて知ってたんだよ」


「え? スリーサイズなんて女の子を一目見れば分かるものじゃね? お前何言ってるんだ?」


「普通は分からねえもんなんだよ!」


 おい、翔...お前死ぬほど無駄な才能持ってるんだな...


「つーか、なんで寝言でスリーサイズ言うんだよ。訳わかんねえよ」


「いや、俺はちょうどその時期に女子のスリーサイズを頭に叩き込んでてな。多分そのせいだ」


「お前彼女持ちのくせに何してんだよ...」


「別に女子を見ただけで浮気にはならないだろ。俺だって健全な男子高校生だ。彼女に会えない寂しさを紛らわしてたんだよ」


「そ、そうか...そういやお前寝言で仁科のスリーサイズだけは言ってなかったよな? その原因は分かってるのか?」


「あー、それは多分仁科の胸が大きすぎるからだな。アイツのバストの数字だけは俺が見てもいくつか分からなかった。アレは規格外だ」


「フゴァッッ!!」


「おい西川! 急にどうしたんだ!? 大丈夫か!?」


 翔の話を聞いた瞬間、なぜか西川が鼻血を出してその場に倒れこんでしまった。しかも少し痙攣している。


「だ、大丈夫だ田島...仁科の胸の話を聞いて少し興奮してしまっただけだ...」


「そ、そうか...」


 そういやコイツ俺が裁判にかけられた時に仁科のことを崇拝してるって言ってたな...コイツどんだけ信仰捧げてるんだよ...


「なあ亮、もう裁判終わりでいいか? そろそろ教室に戻らないとヤバイ気がするんだが」


「コレもはや裁判だったかすら怪しいけどな...まあ昼休みはもうすぐ終わるし、お前の言う通りそろそろ教室に戻らないとな。おい、脇谷、西川、もう裁判終わりでいいか?」


「亮お兄様が終わるとおっしゃるならそれでも構いません」


「まあ新島は遠距離恋愛を頑張ってるみたいだしな。さすがに今回は罰を与える気にはならん。終わりでいいぞ」


「いや、黒歴史晒された時点で罰を受けたようなものだと思うんだが...」


「よし、じゃあ教室に戻るか。あと脇谷、お前次に俺のことをお兄様って呼んだら一生友恵に近づけないようにするからな」


「田島様それだけはマジでやめてくださいお願いします」


「分かればいいんだよ。じゃあさっさと教室戻るぞ」



 こうして第二回RBI裁判は閉廷した。




 ...やばい、結局『スリーサイズ暗唱事件』が強烈過ぎてそれ以外何も覚えてねえわ。



次回、体育祭編開始

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