アリスの本心、そして新学期の始まり
※補足です。
「「」」←これは2人が同時に同じことを言っているという意味です。
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例
亮と翔はいきなり立ち上がってこう言った。
「「俺たちおバカ2人組!!」」
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それではお楽しみください!
-side 渋沢アリス-
「じゃあ俺を新聞部室に呼び出した本当の理由ってなんですか?」
ダーリンは顎に右手を当てて首をかしげながら私にそう問いかけてきた。
「それはね、ダーリンにリンちゃんと瀬奈ちゃんの友達になって欲しかったからなの。2人ともあまり友達がいなくて寂しそうにしてたのよ」
「なるほど...でもあの2人の友達になるのは俺以外の誰かでもいいですよね? それに俺って男じゃないですか。女の子の友達がいた方がいいんじゃないんですか?」
「確かにそう思うかもね。でも実はあの子たちって少し人間不信なところがあるのよ。だから友達候補が誰でもいいってわけじゃないのよね」
「人間不信? とてもそんな風には見えませんでしたが」
「ほら、あの子たちって結構変わってるでしょ?それが理由で入学した時からずっと周りの人達に避けられてたみたいなのよ。そのせいであの子たちはごく一部の親しい人達のことしか信じられなくなってしまったみたいなのよね」
「なるほど...でもどうやったらそれが俺を呼び出した理由に繋がるんですか?」
「それは簡単よ。ダーリンなら少し変わったあの子たちとも友達になれると思ったから」
「え? なんでですか?」
「それは内緒!」
「えぇ...めっちゃ気になるんですけど...」
「ほらダーリン!外も暗くなってきたし早く帰ろうよ!」
「確かにそろそろ帰らないといけませんね...でもなんかモヤモヤするな...結局なんで俺は呼び出されたんだ...」
ダーリンは眉間に皺を寄せて唸っている。ふふ、なんかいじらしくてかわいい。
「ん? アリス先輩? なんでニヤついてるんですか?」
おっといけない。ついつい考えていることが顔に出てしまったみたい。ダーリンから怪しまれてしまった。
「ふふ、なんでもない! さあ帰ろう!」
「は、はぁ...わかりました...」
そして私たちはようやく帰路につくことになった。
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私は家に帰ってから放課後にあったことを思い出して色々考えていた。
実は最後まで話さなかった『ダーリンならあの2人とも友達になれると思う理由』っていうのは結構単純だ。
じゃあその理由とは何か。それは『田島亮』という男の子は見た目や第1印象だけで相手のことを判断しないということ。
私と初めて会った時もそうだった。彼は初対面の私のことを『ハーフのかわいい女の子』としてではなく、『失礼な取材をした新聞部の先輩』として捉えていた。
だから私のことを真剣に怒ってくれたし、今後私が同じ失敗をしないように諭してくれたんだと思う。
それは私の人生で初めてのことだった。今までは『ハーフのかわいい女の子』としてチヤホヤされてばかりだったからね。それに寄ってくる男の子も皆私に媚びてくるだけで対等に接することなんて微塵も考えてくれなかったわ。
それは嫌なことではないんだけど少し寂しかったの。だって皆私の見た目ばかり見て中身を知ろうとしてくれないのだもの。
だからダーリンと出会うまでは男の子のことを好きになったこともなかったし、これから好きになることもないんだろうなって思ってた。
でもダーリンだけは他の男の子とは違った。ダーリンは私の容姿以外の部分もちゃんと見てくれた。
今までは多少ワガママなことをしても『かわいいから』という理由で見逃されていたのにダーリンはそれを許さなかったんだ。
『誰かに怒られる』というのは普通は怖いものなのかもしれない。でも私が叱られている時に抱いた感情は恐怖じゃなかった。
私はダーリンが怒ってくれて嬉しいと思ったの。『ハーフのかわいい女の子』ではなく『渋沢アリス』という1人の人間として私のことを見てくれたのがとても嬉しかった。
だからそんな彼ならきっとリンちゃんや瀬奈ちゃんのことも『変人だから』という理由で避けたりせずに『1人の女の子』として向き合ってくれるんじゃないかなと思ったの。
というわけで私は今日ダーリンを新聞部室に召集することにしたのよ。
でも私はこのことをダーリンに伝えることは絶対にできない。だって、だって...
--『あの子たちと友達になってほしい理由』と『私がダーリンを好きになった理由』って全く同じなんだもん。
私は人を見た目や第1印象だけで判断せず、その人のことをちゃんと知るまで関わろうとする優しい心を持っている彼のことをどうしようもなく好きになったの。
ようするに私が好きになった優しい彼ならあの子たちとも友達になってくれると思ったのよ。
でもいくら私でもこんなことダーリンには言えないわよ! 好きな相手に好きになった理由を伝えるなんて恥ずかし過ぎてできるわけないじゃない!
というわけで私は結局ダーリンに本当のことを最後まで話すことができなかった。
「はあ...どうやったらダーリンに振り向いてもらえるのかな...」
半年間私なりに積極的にアプローチしてきたつもりなのに彼は全然私になびいてくれない。でも拒絶もされてるわけでもないからノーチャンスってわけでもないのかな...
私はもう3年生になる。ダーリンと過ごせるのもあと1年だ。なんとか卒業までに関係を進展させたいんだけどな...
「はあ...私これからどうすればいいんだろう...」
結局その日の夜はダーリン攻略法を考えるのに夢中であまり眠れなかった。
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-side 田島亮-
本日は4月7日。あっという間に春休みが過ぎ、始業式の日を迎えた。ついに俺は高校2年生になったのである。
今俺は2年生になって初めて通学路を歩いている。
青い空、白い雲、春の暖かい陽気、満開に咲いている桜の木、そして俺の横で睨み合っている咲とアリス先輩。新年度の幕開けとしては最高の日だ。
...最後のが無ければな。
「ちょっと渋沢先輩! 先に行ってくださいよ! 私は亮と2人で学校に行きたいんです!」
「新参者がいきなり何言ってるのよ! 私は去年からダーリンと2人で登校してるの! だから市村さんが先に行ってよ!」
なんでこんなことになってるんだ...
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遡ること10分前、俺はいつも通り渋沢先輩が待っているのだろうと思い、玄関の扉を開けて家を出た。
しかし目の前に広がっていた光景は俺が予想していたものとは程遠かった。
「あなた市村さんでしょ! ダーリンの幼馴染の! なんでこんなところにいるのよ!」
「渋沢先輩こそなんで亮の家の前にいるんですか? ていうかなんで私のこと知ってるんですか?」
「Oh...」
扉を開けると俺の家の前で言い合っている咲とアリス先輩の姿が見えた。いや、マジで意味がわからない。
「あ! ダーリン! 一緒に学校行こ!」
「亮! 今日は私と学校に行くわよ!」
「...2人ともお断りします」
RBIから命を狙われている俺に彼女たちと登校するという選択肢は無い。というわけで半年間鍛え抜いてきた超高速早歩きで2人を置いて学校に向かい始めた。
「あ! ちょっと! ダーリン待ってよー!」
「亮! 待ちなさい!」
しかしいくら超高速とはいえ、所詮はただの早歩き。俺は後ろから走って追いかけてきた2人を振り切るなんて無理だったわけだ。
そして今の状況に至るというわけである。
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「あのー、お2人ともすいません。3人で仲良く登校というわけには...」
「「それは絶対ありえない!!」」
「ですよね...」
アリス先輩が居るのはまあ分からんでもないけどさ、なんで咲のやつ急に俺と登校したいなんて言い始めたんだよ。一体どんな風の吹き回しだよ...
「あのー、咲さん」
「何?」
「なんで急にウチの前に来てたんですかね」
「そんなの亮と学校に行くために決まってるじゃない」
「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくてだな...」
「ふん! どうせダーリンのことが好きだからでしょ! 聞くまでもないことだわ!」
「ち、ちょっと渋沢先輩待ってください! そ、それは違いますよ! 私は亮と幼馴染として昔みたいに仲良くなるために一緒に登校してるだけです! 先輩みたいな邪な考えはありません!」
「ふん! どーせそんなの建前よ! 慌てて弁明してるあたり怪しさマックスだわ!」
「あの、ちょっと、お二人とも...」
「「ダーリン(亮)は黙ってて!!」」
「わーお、息ピッタリ...」
ふう...
よし、帰るか。(現実逃避)
次回、新クラス発表




