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骨身を惜しまず、挑め新世界!!  作者: 幸・彦
第五章・暮らしのアイディア改革
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快適な暮らし・6

昔の地球の食品には、こんな表記が数多く見られたっけ。


「遺伝子組換え●●●は使用していません」


うん、懐かしい。

しかし今、目の前にズラッと並んでいる食材の数々を、あらためて見直すと…

遺伝子組換えでないものを探す方が難しいです。

ほとんどの食材に、あたし自身の遺伝子情報が超テキトーに組み込んであります。

肉はもちろん、植物だろうと菌類だろうと昆虫だろうと、もうお構いなし。

でたらめナノテク、ここに極まれりです。


さあ、レッツクッキング。


=====================================


まずは手近な石を積み上げ、火を起こすためのスペースを作ります。このあたり、

さすがにジアノあれこれを使ったりはしません。あんまり横着しちゃダメです。

あたし自身はそっち方面は詳しくないので、タカネとリータにお任せします。


採取してきた野菜などを水洗いします。水道も川もないので、サイズを合わせた

水の球を現出させ、その中に突っ込んで洗うスタイルです。あんまり強くやると

球の形が崩れてしまうので、中でそっと揉み洗いします。済んだら水は消します。

残った汚れだけが、下に落ちて終わり。贅沢なようでいて、究極の節水なのです。


ちなみに、遺伝子組換え系は全く汚れていないので、洗ったりはしません。


さて、ここで根本的な問題がひとつ。

調理器具がありません。ついでに食器も足りません。

さあどうしよう。


「何がいるかな。」

「大小の鍋とフライパン、それに包丁とまな板。あとは盛り付けの器とかかな?

 あ、それにコップとお箸もあると嬉しい。」

「分かった。」


次の瞬間には、リクエストしたもの全てがテーブルの上に整然と並んでました。

コップはアイボリー、お箸はグレーだけど、それ以外の調理器具はどれもこれも

鮮やかなブルーのガラスっぽい代物だった。その高級感は、もはや美術品に近い。

聞くまでもなく、竜の刃(ジアノセイバー)と同じ素材だろう。つまり、ジアノドラゴンのツノだ。


「…これ、火にかけちゃっていいの?」

「大丈夫。熱の伝導性は鉄並みに高いし、耐久性も充分だし。」


どんなツノだそれ。


「こっちの2つは?」

「コップは牙。お箸は骨でできてるよ。」

「そうですか。」

「おぉーキレイ!これでお料理していいの?」


テンション高めに割り込んできたリータが、鍋を手に取ってしげしげと眺める。


「うん。…じゃあ、始めよっか。」

「了解!」


まあ、別に今詳しく話す必要はないよね。骨だの牙だのと…


=====================================


正直、あたしはお料理はあんまりできません。地球でもやってなかったし。

タカネも知識としては知ってるらしいんだけど、料理ってのは経験が命だからね。


というわけで、調理に関してはほぼリータに丸投げ。独身女性の底力に期待です。

タカネは包丁担当。さすが元AIだけあって、細切りとかは精密機械の如しです。


あたし?あたしはもちろん、味見と実食担当。あ、お皿とかも並べたりします。

あと、食べ終わった後の片付けも手伝います。…とりあえず、それで堪忍してね。


ケルクァ鳥のムネ肉は、香草たっぷりで焼きます。油も動物の体組織から抽出し、

贅沢に使ってます。いやあ、焼ける音も立ち昇る香りも懐かしい。泣けてくる。


野菜系は、もう細かい事を考えずに具だくさんスープにしてしまいます。ただし、

出汁に凝る。本物のケルクァ鳥の肉は全部焼いたので、遺伝子組換えの肉を出して

スープのダシガラに使います。ひたすら煮込みます。塩を出せるようになったので

味も細かく調えます。ええもちろん、あたしじゃなくてリータが。文句ある?


コトコトコトコト。青空の下でスープを作る。やらなくなってたなあ、地球では。

おじいちゃんの家で、バーベキューとかはしたんだけどね。…いかん泣けてくる。


調子に乗っていっぱい出した野菜類がまだあるので、茹でたり炒めたりします。

一度出したものは制御を外れるともう消せないし、かと言って捨てるというのは

どうにももったいない。水は無制限なんだから、ガンガン調理しちゃいます。


結果。


終わってみれば、恐るべき量のごちそうが並んでいました。

いや、何人分だよこれ。


とりあえず、いただきます!!


=====================================


―人間らしく毎日を楽しみな。


つくづく、ありがたいアドバイスでした。ゼビスさんはこの世界のお父さんです。


仲のいい人たちとお料理を作って、一緒に食べる。

なんて事もない行為だ。だけど、こんなに楽しかったんだ。今さら思い出したよ。

わいわいとバカをやりながら集めた食材を、わいわいと騒ぎながら作ったお料理。


食べなくても大丈夫な仕様は素晴らしく便利だけど、どうしようもなく寂しい。

人が生きるためには、食べなくてはいけない。その()()の克服でもあったけど。

それは、ただ単に必要な栄養を摂取する…という意味だけじゃなかったんだ。


理屈で分かったつもりになっていた自分の浅さを、食事が思い知らせてくれる。

そうです。あたしは大人ぶってるだけのハナタレです。何とでも言って下さい。

おいしいものを食べてる人間は、多少の事では怒らないんです。ええそうです。


ものも言わず、ひたすら食べました。

身も心も、この上なく満腹になりました。


しかし。


やっぱり残ったよ。

まあ、当然なんだけどね。


=====================================


「ごちそうさま。」


食べ残しの多さにちょっと後ろめたさを感じつつ、あたしは手を合わせた。

他の2人も箸を止める。まあ潮時だよね。って言うか、箸使うの上手いねリータ。

食べるのに夢中で、突っ込むの忘れてたよ。


「お茶淹れるね。」

「いや、ちょっと一服してよ。」


甲斐甲斐しいのは正直嬉しいけど、あんまりこき使ってる感じにはしたくない。

ゆっくりしよう。

その言葉にすんなり座り直したリータは、ほぼ空になった大皿を手に取った。


「これ、ジアノドラゴンのツノから作ったのよね。」

「まあ、そんな感じ。」

「どんな価値があるのか、ちょっと想像できないわね。これなら…」

「大儲け?」

「そうそう…って違う!そっちに振るのやめてっ!!」

「ゴメンゴメン。で、どういう意味?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って意味よ。」


うん?

工芸品としてって事か、それともジアノドラゴンの一部としてって事かな?


「つまり、証の聖鱗みたいな価値がつくって事?」

「あんなどころじゃないわよ。」

「え?」


あたしとタカネは、ちょっと顔を見合わせた。

いまだにあり余っている資金をあの鱗2枚で手に入れた者としては、その発言は

ちょっと興味をそそられる。


「ツノの方が価値が高いとか、そういう話になるの?だったら…」

「まあ確かにそれもあるかも知れないわね。だけど聖鱗と違うのは、この大皿が

 加工品だっていう点よ。」

「加工品?」

「鱗は剥がせば手に入るでしょ?ジアノドラゴンは個体数の少ない生き物だけど、

 見つけられさえすれば、聖鱗を手に入れるチャンスは誰にでもある。けどね。」


そこまで言ったリータは、お皿をあたしたちに向けた。


「ツノをこんな風に加工する技術というのは、この世界には存在してないのよ。

 こんな硬いものを、こんな正確な回転体に削り出すなんて、何をしたって無理。

 同じ事は包丁にも鍋にも言える。もちろん、あなたの振るう竜の刃(ジアノセイバー)にもね。」

「……なるほど……。」


さも当たり前のように部分形成というのを使ってるけど、これ自体がちょっとした

オーパーツみたいなものって事なのか。言われてみれば、作り方もデタラメだし。


「つまり歴史上に存在してないモノだから、価値のつけ方も誰も知らないと。」

「そう。基準がない。極端な話、完全な言い値になるでしょうね。誰であろうと、

 価値があるという事実は認めるでしょうから。下手をすると、戦争の火種にも

 なり得るかも知れない。そういう代物よ。」

「ふぅーん…」


野菜炒めとかを雑に盛り付けてる器で言われても、激しくピンと来ない話だね。

まあ、気安く人に見せたり、売ったりしない方がいいって感じなのだろう。


正直、あんまり深刻に考える話でもない気がしている。

どうしてかって?

そりゃもちろん、お腹いっぱいだから。

こういう時に、難しい事は言いっこナシなのです。

それより目の前の問題は、器の上に大量に存在している食べ残しの方なんだよ。

これをどうにか…



不意に、タカネが何かに反応した。


真面目な顔で説明していたリータのすぐ目の前に、音もなく1枚の鱗が現出する。


カァン!


甲高い音を立ててその鱗に弾かれたのは、短い矢だった。

何が起こったのか分からなかったらしいリータも、落ちた矢に目を見開く。


「誰か来た。人数は6人。」


その言葉が終わると同時に、四方の茂みがガサガサと音を立てる。



まあ、お友達じゃないでしょうね。

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